第7話 国境の街

領都を出て二十日目、途中で少しのイザコザは有ったが、ついにメルセーデス公国と隣接するベルリンフィンの街へとやって来た。


この街は、特殊な造りになっていて国境線を跨いだ城塞都市となっている。


両国で其々に関所を設けて国境線を維持するよりも、合理的に両国の入場門の所で入国審査を済ませてしまおうと、国のトップ同士が話し合った結果らしい。


まぁ~所謂、中立国みたいな感じの街だ。


なので、街に入る時が入国審査の手続きとなるわけだ。


入国審査をする監理官は、王国側をメルセーデス公国の管理官が、メルセーデス公国側を王国の管理官が行い入国審査を簡素化している。

それに伴い、街から出る時の審査は一切省かれて、自由に出国出来ようになっている。


駅馬車に乗車して入国する人達は、馬車に乗り込んできた入国管理官の入国審査を経て入国する事となる。


その入国審査を経て、俺の乗車していた駅馬車が街の中央にある中央停留場に停車した。


この中央停留場はハブの役割を担っていて、ここから城塞都市の様々な場所へと駅馬車で移動が出来る仕様になっている。


停車した駅馬車から、俺が荷物を担いで降車すると......


「それで、ジョンはこれからどうするんだ」

と、護衛の冒険者達のリーダーであるドナルドさんが、俺に声を掛けて来た。


俺はこの街に暫くいる予定なので......

「暫くはこの街で過ごそうと思っているので、取敢えずは宿を確保しに行きます」

と、返事を返しておいた。


「そうか。 俺達は、これからギルドに報告に向かうから、またな」

「はい」


護衛の冒険者達と停留場で別れた俺は宿を探すために大通りを東に向かって歩き始めた。


「お兄さん、お兄さん」


そこへ不意に、馬車の中で知り合った女性に声を掛けられたので、声のする方へと振り向く。


「どうしました?」

「お兄さん、宿を探しに行くんだろう」


「はい。 今夜の寝床を確保しようかと」

「それなら家においでよ。 この街で、小さな宿屋をやっているからさ」


「えっ、そうなんですか!」

「知り合ったのも何かの縁だし。 盗賊からも守って貰ったからね、そのお礼も兼ねてさ。 宿はこの直ぐ近くだからついてきておくれ」


折角のお誘いだし、縁を感じたのでついて行く事にした。


歩くこと10分......。


小さい宿屋ね、どう見ても大店では無いけど、その7割程の大きさはある綺麗な外観の立派な宿屋だった。


「ここですか?」

「そう、ここが私の家よ」


「どう見ても小さな宿屋には見えないのですが......」

「この街では、小さい方よ」


南街区にある景観を重視している宿屋はこの何倍もの大きさらしい。


「さぁ、入って。 宿代は割引してあげるから」

「じゃぁ、そのお言葉に甘えさせて貰います」


この日から7日間の予定で、俺は部屋を借りることにした。

そして、宿代の方は通常料金の3割引きで宿泊出来ることになった。

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