第59話 令嬢の回顧録

春先に戻って来た体調も、春本番となりしっかりと自分の足で歩けるまでに

回復しました。


ここからが私ララの第二の人生のスタートです。



でも、思っていた予定よりも随分と早く回復しました。


不思議に思い、兄様に質問しました。

「兄様、私ララの体調が戻るのが思っていたよりも早い気がするのですが」


と、......


すると、兄様は言いました。

「ジェイソン(ジョンの長兄)が解毒ポーションに数種類の回復ポーション

を用意してくれたんだよ」


と、......


それを聞いた私ララは、ビックリ!した表情で兄様を見つめていたと思います。


「兄様、今迄の期間を考えれば、かなりな本数となると思いますが、あちらの

方は大丈夫なのですか?」


「そのことは私も心配になり、ジェイソンに直接聞いてみたのだよ。

そうしたら、ジェイソンは何と答えたと思う......」


「さぁ、私ララには見当もつきません」


「ジョンがな、旅立つ前に錬金術の練習と言って、実家の分の各種ポーション

を多量に作って、置き土産として渡していったそうだ」


「ジョンは、そんな事まで出来るんですか?」


「そうらしいぞ。 で、その実家の分の中から私に融通してくれた様だ。

騎士団や衛兵達の分には手を付けていないから、安心して使ってくれと言われ

たんだよ」


「そうでしたか......」


「ララもすっかり回復して自分の足で歩けるようになったんだ、今日は天気も

良いし、家族みんなでテラスに出て、お茶会でもしようじゃないか」


「はい、兄様」


こうして私ララの体調が、ここひと月余りで急激に回復した理由が判明しました。



いま思うと......。


王宮内の夫人達によるお茶会は、腹の探り合い等ではなく、完全に相手をこの世

から抹殺する為の殺し合いのお茶会だったようです。


私ララの場合は、何処の派閥にも属していなかったので、お茶会を主宰する夫人

達がそれぞれ、お茶会を開くごとに私ララのお茶の中に毒を微小づつ混ぜていた

のでしょう。



でも、そういう事を考えれば......。


第2王子様も、その事について知っていたと言う事でしょうね。


あの笑顔は、偽りの仮面だったのですね。


王宮の闇は深いです。 


もう私には何の関係も有りませんから、如何でも良い事ですが。



そうです、つい先日になりますが......。


王様から正式に、第2王子様と私ララとの婚姻の破棄が発表されました。


嬉しい限りです。


これで私ララも、晴れて自由の身になる事が出来ました。

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