第58話 何とかなった

先陣を切る、シルバーランクの冒険者パーティのメンバーは、火魔法を扱える

女性を守るように陣形を組んで、火魔法を打ち込める距離まで鰐擬きの方へ

移動していった。


第二陣として、俺が単独で後方の1匹を相手にする。

第三陣として、もう一つのシルバーランクの冒険者パーティが前方の1匹を相手

にする段取りで、先陣を切ったパーティの後方を着いていく。


打ち込める距離まで近づいたようで、前方から合図があった後、

直ぐに直径1m程の炎の塊が、鰐擬き3匹の中央に着弾した。


すると、後方の1匹はその場に留まっていたが、前方の2匹は前の方へと10m

ほど移動した事で、3匹の間に距離が開いた。


その一瞬の隙を逃さないように俺は後方の1匹に向かって駆け出した。

後ろを振り向いて確認はしなかったが、俺の後方でも戦闘が開始されたよう

だった。


分断に成功した事で、当初の予定通りの戦闘に持ち込むことが出来た。


そして、俺の目の前にいる個体だが、情報よりは少し大きいサイズだった。

それに、やはり知能の発達した個体のようだ。


試しに、強めの威圧を仕掛けてみたが平然と佇んでいた。


“ティーナ、どう思う”

“かなり知能が発達した個体みたいね。 でも、ジョンなら大丈夫よ”


ティーナお墨付きを貰い、俺は背中に背負っていたロングソードを抜くと

目の前の鰐擬きと戦闘を開始した。


毒針の攻撃を想定しながら、ソードで切りつけてみる......が、薄皮一枚分も

斬る事は出来なかった。


“ティーナ、凄く硬い鱗のような外皮だよ。 斬る事は難しいかな”

“ジョン、脚の付根辺りならどうかしら、突き刺す力で通るんじゃない”

“分かった。 やってみるよ”


俺はティーナの助言に従い、噛付きと尾っぽの攻撃をいなしながら、

前脚の付根にソードの剣先を力を込めて突き刺した。


ティーナの言う通り外皮が柔らかく難なく突き刺す事が出来た。


GAaaaaa!...GUaaaaa!...


突き刺した剣先を抜くと、そこからは緑色の体液が流れ出した。

剣先が関節の骨まで届いていたようで、動きを止めた鰐擬き。


俺は力任せに鰐擬きをひっくり返すと、下顎の柔らかい部分から頭部を

貫くようにロングソードを突き立てた。


Gururuuu......


俺は鰐擬きが完全に沈黙したことを確認すると......、

後方で戦闘をしているシルバーランクの冒険者パーティに視線を移した。


其々が、パーティメンバー5人で対峙しているので、彼らの戦闘も後少しで

終了する感じだった。


そして彼らの戦闘が終了した事を確認したところで、俺も更に後方で支援

していたクレアさんとブロンズランクの冒険者の所へと戻った。


「前線で活動された皆さん、ご苦労様でした。

もう直ぐ自警団の方達が荷車を持って来ると思うので、身体を休めておいて

下さい」


クレアさんの言葉に、其々パーティが休憩に入った。


「ジョンさんは、少し時間を貰えますか」

「はい、いいですよ。 クレアさん」


自警団が来るまで、俺とクレアさんで今回の討伐に関しての大雑把な活動記録

を纏めておいた。



三日後......。


雨も止み、川の水位が下がった事で、対岸に渡れるようになったと宿に連絡が

届いたらしい。


それを宿の奥さんに聞いた俺は、直ぐに身支度を整えて旅を再開した。


“旅の途中の雨はしょうがないが、長雨は止めて欲しいと思う”

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