第62話 闇を好むもの

ティーナの注意喚起により、長い夜になりそうな気配が漂ってきた。


本当は何事もなく過ぎ去ってくれるのが、一番なのだけれど......。


マチェーテの町に着いたのは午後3時だが、俺はティーナの発した言葉に従って

不測の事態に対応出来るように早目の夕食を済ませると、宿の部屋で3時間ほど

の仮眠を取っておいた。


さて、何が出てくるのか......。



深夜0時、町の外れで火の手があがったようで、教会の鐘が激しくて打ち鳴らさ

れている。


“ジョン”

“来たみたいだね”


俺とティーナは泊まっていた宿を急いで出ると、火の手の上がる町外れの方へと

向かった。


“近づくにつれて腐敗臭が酷くなってくるね”

“これが、ゾンビ臭ね”


目に見える範囲にいるゾンビの姿は10体、その他には見当たらない。

また、近くには町の人達は居ないようだ。


“ティーナ、近くに人の気配はする”

“この付近には感じないわ、でも町の方からこちらに向かってくる人の気配は感じ

るわ”

“多分、教会関係者か冒険者だね”

“私も、そう思うわ”


“取敢えず、目に見える範囲のゾンビ達は倒してしまおうか”


ロングソードで切り刻む事も考えたが、余りにも臭いので火魔法で焼き払い浄化

の魔法で成仏させることにした。


“10体全部をマーク、浄化の青い焔、ファイヤー‼”


ティーナにもサポートして貰いながら、ゾンビ達に対して魔法を発動した。


浄化の青い焔によって焼き尽くされていくゾンビ達。

5分後、青い焔が消えるとゾンビ達の姿は無く、白く残った灰だけになった。


“匂いも綺麗に無くなったね”

“我慢の限界だったわ”


“よし、じゃぁ宿に帰ろうか、あとは後から来る人達に任せよう”


俺はティーナを肩に乗せると、踵を返し宿の方へと駆け出した。



ジョンとティーナが居なくなって3分後......。


松明を掲げた、教会関係者と冒険者が現場へとやって来た。


「おい、ゾンビの姿は何処にも見当らないぞ」


「そうですね。 匂いも全くしませんね」


「あっ、でも司祭様。 あの辺に、白い灰のようなものが」


「どれどれ......。

確かに、これはゾンビ達の残証ですね。

ここまで、綺麗に浄化出来るとは、しかもこんなに早く。

余程、高位の魔法使いなのでしょう。

是非とも、教会に勧誘したいですね」


「司祭様、もう周りにはゾンビ達はいませんか......?」


「はい、今夜はもう大丈夫そうです」


「そうか、なら帰ろうぜ。 眠くていけねぇ」


「はい。 では、そうしましょか」


“でも、如何いった方だったんでしょうかね......”



次の日の夜は、何事もなく。

俺とティーナは宿の部屋で、ぐっすりと眠ることが出来た。



そして三日目の朝......。


朝早くに、マチェーテの町から海沿いの街へと向かう駅馬車に乗って

旅を再開した。

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