公爵令嬢から婚約破棄された俺は、自由気ままな旅に出る

あんドーナツ

第1話 15歳の春、婚約が解消された日

その日、俺は成人の儀を受ける為に領地を離れ、王都の大聖堂を訪れていた。


「ジョン・ランボルギーニ......。

ジョブの女神様より、貴方のジョブは、自由人(フリーメン)と啓示されました」


と、大司祭様から啓示のお言葉が俺に対して宣誓訓示された。


********


そしてその夜.......。


俺は、王都の公爵邸に招かれていた。


それは幼い頃に婚約者として決められていた、公爵令嬢ララ・フェラーリ本人から話があるので、屋敷の方へ来るようにと宿泊している宿の方へ連絡が来たからだ。


「ジョン......。

貴方が、ジョブの女神様より啓示されたジョブである自由人(フリーメン)は、

この公爵家の品格には不釣り合いなものです。

ですから、わたくしの方から貴方に対して、婚約の解消をさせて頂きます。」


と、まぁ、一方的に婚約の解消を言い渡されてしまったのだった。


まぁ......俺としては、“やったー!超ラッキー”と心の中では大歓びしていた。




翌朝......。


王都を離れ、帰りの馬車の中で、父上が......。


「ジョン済まないな。 儂に対抗する権力が無いばかりに.....」

「そんな、父上が今回の件に対して心を病むようなことは、全然必要有りませんよ。 寧ろ俺は、これで凄く良かったと思っていますから、本当ですよ!」


「そう、なのか?」

「はい。 父上、考えても見て下さい。

これで、これから先の俺は、何の制約も受けずに、自由に気ままに生きて行く事が

出来るんですから‼」


「まぁ、それは、そうかもしれないがな」


領地へと続く帰りの道中、辺境伯爵家の所有する馬車の中、俺と父上は普段通りの他愛のない会話に華を咲かせながら、領地への帰途についていた。


********


王都を離れて、二十日後。


俺と父上は無事に領地である、東部辺境伯爵家の屋敷へと戻って来た。


「ジョン。 ララ嬢との婚約が破棄になったって、父上から聞いたぞ」

「あぁ、そうだよ。 でも良かったよ、これで俺は自由だからね」


俺に、そう声を掛けて来たのは、長兄のジェイソン兄さんだった。


「それで、これからどうするんだ。 この屋敷の中で、俺の手伝いでもするか」


「いや、次兄のアーノルド兄さんも優秀だし、三男の俺は冒険者にでもなって、

自由気ままな旅に出ても良いかなと思っているんだ」


「そうか......俺達兄弟三人で、仲良く領地経営を出来ればと思っていたんだがな」


貴族家としては珍しく、俺達三兄弟は非常に仲が良い、勿論家族の仲も良い......で、領地経営を其々に役割分担して行ってきた。


俺はまだ学生の身分なので、役の担当は無いのだが。 あはっ。


********


成人の儀から、三年の月日が流れ......。


俺は領都にある魔法学院を、無事に卒業する事が出来た。


そして、卒業式が終わると直ぐにその足で、冒険者に成る為に冒険者ギルドへと

登録に赴いた。


俺は空いている窓口に向かい、受付嬢に声を掛ける。


「あの~、済みません。 冒険者登録をお願い出来ますか......」

「はい、大丈夫ですよ。 では、こちらの用紙に必要事項の記入をお願いします」


俺は、カウンターで必要最低限の項目を書き込んで受付嬢に手渡した。


「ジョンさんですね。 お住まいはこちらですか」

「はい、そうです」

「では、領民票はお持ちですか」

「え~と、これで良いですか」


領民票を受け取り、確認した受付嬢が一瞬フリーズする。


「んっ⁉......はい、確認出来ました。

こちらのグリーンカードが、ジョンさんのギルドカードになります。

紛失しないように気を付けて下さいね」


「はい、ありがとうございます。 気を付けます!」


それから30分程、諸々のギルドルールを説明してもらい、俺は屋敷へと帰宅した。


********


「さっきの青年、ハンサムで背が高くて格好良かったわね」


隣の受付嬢が、青年を担当した私に、興奮した様子で声を掛けて来る。


「......そうね」


「何なに、どうしたの? 心ここにあらずな返事をして」


個人情報は、ギルド職員の同僚とはいえ気軽には話せないので返答に困る。


「あ~、何となく知り合いの息子さんに似ていたからなのよ」


「な~んだ、そうなんだ。 明日、来てくれると良いなぁ~」


領主様の御子息だと分かったら、彼女はどうするんだろうな。


でも、私も来てくれると良いなと、そう思っている。

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