第121話 領地にも盗賊はいたらしい

湖畔の宿に二泊した俺達は、領都フィエンテに向けて旅を再開した。



“ねぇねぇ、ジョン。 宿で頂いたあの魚料理の元になった魚はどんな姿をした

魚だったの”


「あ~、やっぱり気になるか...。

チョット待ってねティーナ、いまその魚の姿を描いてあげるから絵を見ても驚か

ないでね」


15分程掛けて、俺はティーナが知りたかったその魚の真の姿を絵に描き起こした。


「ティーナ、こういう姿をした魚だよ」


“えぇ~、グロテスク。 こんな魚があんなに美味しい料理に変わったの...?”


「あら...ウナギだったのね、あの料理」


“えっ、ヴィーナは食べた事があるの?”


「そうね...、

もう何百年も前の事だから、食べた記憶はあっても味は忘れていたのよね。

でも、今回の料理は素晴らしく美味しかったから、料理人の腕が良かったのね」


“そうよね。 この見かけによらず、凄く美味しかったわ”


そう、二人が言うように、噂通りのとても美味しいウナギ料理の数々だった。



旅を再開して、三日目......。


お昼前に、俺達3人は200人程の人が住む集落へと到着した。


食事を済ませたら、俺達3人はそのまま集落を離れるつもりだったのだが...。


大変だ~、大変だ~


と、大声で2、3人の男どもが叫びながら集落の中へと走り込んできた。


男たちはこの集落の住人のようで、他の住人達にそれぞれ声を掛けて回っていた。



何があったのか気になった俺は話を聞いていた一人の住人に声を掛けてみた。


「何かあったんですか?」


「あっ、旅の方ですね。

いえ、最近では無かったのですが、昨日辺りから作物の盗難が起きるようにな

ったんです」


「作物の盗難ですか?」


「はい。 こんな小さな集落ですから作物を盗られてしまうと死活問題なんです」


「これまでは、如何して盗難は治まっていたんですか」


「それは、ここの領主様が盗賊の討伐をして下さったからですよ」


父上は、しっかり取り組んでいたようで俺は安心した。


が...。


いま現在は、新たな盗賊が生まれてしまったということだろう。


“ジョン。 見て見ぬふりは出来そうもないわね”


「そうだね。 二人共手伝ってくれる」


「良いわよ、私は退屈しのぎになりそうだもの」


ヴィーナは、平常運転のようだ。


俺は、話をしてくれた住人の女性に頼んで、この集落のまとめ役の所へと案内して

貰った。



集落のまとめ役の所へとやって来た俺達3人は状況を聞く為に顔合わせをした。


その際、話がスムースに進むように俺は代表者に対して、実家の紋章が入った

短剣とギルドカードを提示した。


「まぁ、これはこれは。 御領主様の御子息様でしたか」


「それで、如何いう状況か教えて貰えますか」


「はい」


それから、30分程...。


盗賊達の住んでいるであろう場所と大体の人数を聞くことが出来た。


何人かに話を聞いたのだが、それぞれが言う事に誤差が有ったので纏めるのに

時間が掛かってしまった。

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