第122話 ヴィーナ無双

集落のまとめ役の処で話を聴いていたら、盗賊退治に向かうには既に遅い時間

となっていた。

なので俺達は翌朝、日が昇る前に盗賊の根城に向けて出発することにした。



翌朝、東の空が明るくなり始めた頃......。


「二人共、目は覚めた」


“少し眠いけれど大丈夫よ”


「私も大丈夫よ」


俺とヴィーナは装備を確認すると、集落の皆がまだ寝静まっている中、俺達3人

は盗賊の根城に向かって歩きはじめた。


“ねぇ、ジョン。 こっちの方角で間違いないの、集落の人達の話とズレている

と思うのだけれど”


「皆の話はどれも正解なんだけど、それはね盗賊が根城の場所を特定させない為

に、わざわざその都度逃げる方向を変えていたからなんだよ」


“そう言う事なのね。 盗賊もソレなりに頭を使っているのね”


「その頭を正しい方向に使ってくれるといいのにね」


“理由は分かったわ。 けれど...自信を持ってこちらの方向に進んでいるのは?”


「それはね...ティーナ。 私が昨夜の内に、上空から根城の場所を特定しておい

たからよ」


“えっ、いつの間に”


「あなた達が寝ている間によ」


そんな話をしながらも、俺とヴィーナは結構な速さで駆けていた。

無論、ティーナは落ちないように俺の胸ポケットに収まっている。



「そろそろよ」


“ヴィーナ、あそこかしら?”


ティーナが、ポケットの中から気になる方向へと指をさす。


「そうよ。 崖に穴を掘って根城にしているみたいよ」


「人力で造るには時間が掛かるから、魔法を扱える人物が一人か二人居るのかな...」


「そうね。 昨夜は、魔力感知はしなかったから、やってみましょうか」


そう言うと、ヴィーナが魔力感知を始めた。


「ジョンの言う通り二人居るわね、面倒くさいから魔力感知をするついでに、

二人には威圧を掛けて寝て貰ったわ。 さぁ、行きましょうか盗賊退治‼」


そう言うと、ヴィーナはニィ~と白くて綺麗な歯を見せて笑った。



俺とヴィーナはミドルソードを片手に洞窟の中へと足を踏み入れた。


「ジョン。 私が前よ」


「えっ、良いの?」


うふふっ!


ヴィーナが寒気で凍るような笑顔を見せると、向かって来た盗賊達の方へと駆け

ていった。


ガキンッ


ザシュッ...


ゴキッ


バシャッ...


俺の前方では、俺が手を出す間もなくヴィーナによって盗賊達が切り伏せられ

ていく。


そして、最後の一人...


多分、この盗賊達の頭の男だろう。


「てめぇ~、生きてここから出れると思うなよ」


そう叫んだ男の言葉が、その男の最後の声となった。


男が言い終わった瞬間、ヴィーナが瞬間移動で動いて切り伏せたからだった。


「ねぇ、ティーナ...」


“なぁ~に、ジョン”


「俺、何にもしていないんだけど」


“いいんじゃない。 ヴィーナは、満足そうにしているから”


この後、何も出来なかった俺は...

盗賊達の遺体の処理を一生懸命頑張った。

処理した遺体の数は全部で25体で、内2体は無傷のままだった。


ヴィーナの言った、寝て貰ったという言葉の意味は永遠に寝て貰ったと言う事

らしい。



盗賊達の処理を済ませ、集落に報告を済ませた後...

俺達はまた旅を再開した。

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