第47話 帝国の乙女達 “備”

帝國劇団・華組の皆さんからお願いされた“下着ドロボー”を捕まえて、

と言う要請は、ティーナの“私は、良いと思うな(笑)”発言で決着した。


その日は結局、泊まれる宿は一つも見つからず、ギルドの訓練場でテント

を張り一夜を過ごした。



翌日は、朝から帝國劇団・華組の楽屋へと足を運んで、ティーナお勧め

の衣装を選んでいた。 そう、女装用の衣装である。


“諦めました”


ただそこで問題が、俺の背丈に合う大きさの衣装は無かったのだ。


この劇団で背の高い男役の女性でも身長は178cm、娘役に至っては

165cmの人が一番背の高い女性だった。


そこで急遽、衣装担当の係の人が楽屋に呼ばれてきて、俺の為に新しく

衣装を作製する事となった。



そして、更に翌日......。


一晩で、俺専用の新しい衣装を作り上げた衣装担当の係りの人が、楽屋口

の前でドヤ顔で待っていた。


「ジョンさん、早速ですがこの衣装に着替えて下さい」と、

そう言って渡された衣装を持つと、俺は衣装担当の係の人に更衣室へと連れ

ていかれ、その中へと放り込まれた。


そして、しょうがなく着替えをしている俺の耳元では......

あ~でもない、こ~でもないと、ティーナが俺の着かたに注文を付けていた。


“女性用の衣装なんて、いままで一度も着たことなどないのだか”


まぁ、ティーナの助言もあって、何とか衣装を身に着けて更衣室から出ると、

そこには、何かを期待していたのか、劇団員の人達が眼をランランとさせて

立っていた。


“猛獣に襲い掛かられる前の小動物の心境です”


「ジョンさん、凄く良いです。 これで後は、化粧を施せば完璧です」


“その嬉々とした表情で言うのは、何かを失いそうなのでやめて欲しい”


「では、ジョンさん。 こちらの化粧部屋の方へ」



それから、2時間。

あれやこれやと、皆さんの玩具にされながらも、無事に女装が完成した。


“下着ドロボーは、もう如何でもいいから帰りたい”


「完成です‼ これなら、何処に出しても可笑しくない完璧な女性です」


「やっぱり、下地が良いと完成度も120%ね」


それぞれに、俺の見た目についての感想を述べていく。



「ところで、下着ドロボーを何処で監視すれば良いのですか?」


「ジョンさんに見惚れていて、すっかり忘れていたわ」


「楽屋と更衣室、それと浴室付近かしら」


「浴室付近に俺では不味く無いですか?」


「大丈夫よ。 劇団員はみんな承知しているから。 よろしくね!」


「あの~その~、中までしっかりと確認して下さいね」


「え~と、誰も入って居ないときに確認します」


細かい点を幾つか確認したところで、午後の公演開始から俺の任務が始まった。


「あっ、そうそう、一人称は俺じゃなくて、私に変えておいてね」


最後に、衣装担当の係の人が爆弾を落としていった。

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