第64話 潮騒のメロディー
30分位は、海を見ながら二人で惚けていただろうか。
ハッと我に返って、肩の上に座っているティーナの横顔を覗いてみていると、
見られている事に気が付いたのか、俺の顔を見て微笑むと......
“ジョンと一緒で良かったわ”
と、ティーナが照れくさそうに言った。
だから、俺もティーナの顔を見ながら......
“俺もティーナが一緒で良かったよ”
と、笑顔で言葉を返した。
********
夕暮れ時......。
海沿いの宿が建ち並ぶ地域へと戻って来た俺とティーナは、泊る為の宿を探して
歩いていた。
しかし、既に有名な観光地になっていたようで、何処の宿も満室の状態だった。
これは、いよいよ野営する場所を探さないといけないと、街の中心にあるらしい
冒険者ギルドに向かおうとしたところで、横の建物の中から声を掛けられた。
「お兄さん、海は見て来たのかい」
その声の主の方へ向くと、昼間の女性が手を振っていた。
俺は荷馬車の女性の方へ歩いて行き、改めてお礼を言った。
「昼間は、ありがとうございました。
海は見てきました‼
初めて見た海の大きさには流石にビックリしました」
「そりゃ良かったね。 それで、こんな時間に如何したんだい?」
「いや~、海で遊んでいて遅くなったので、宿を探していたんですが、何処も満室
だったので、冒険者ギルドに行って野営する場所を借りようかと思っていた所です」
「あららっ、そりゃ大変だね。 何なら家に泊まっていくかい」
「え~と、迷惑じゃ無いですか。 家族の方とかに申し訳ないですし......」
「あ~それなら、心配いらないよ。
家には男共しかいないから賑やかだよ。 酒が入るとチョット騒がしいけれどね。
遠慮しないで、さぁ入っとくれ」
「そういう事でしたら、お言葉に甘えてお邪魔します」
この日は......、同じ女性に2度も助けてもらった。
“本当に、ジョンの幸運度は神がかっているのね......ビックリ!だわ”
翌朝......。
泊めて貰ったお礼を言って、女性の家を出た俺とティーナは、女性の家族の人達
から教えて貰った、とある場所に向かっていた。
“人魚の調べが聴ける岩礁か、どんなところだろうね”
“でも、直接姿を見せてはいけないのでしょう”
“岩陰でそっと聞き耳を立てるようにしないといけないらしいからね”
“それで、相手には気づかれないのかしら”
“多分、気付いてはいるけど、面と向かってでなければOKなんじゃない”
“随分と大雑把な感じよね”
二人で、そうこう話しているうちに、目的の岩礁に着いたようだ。
ここは、地元の人達しか来ない、ディープなスポットらしい。
教えて貰った岩陰に身を潜めて、聞き耳を立てながら暫くの間待ってみた。
10分程時間が過ぎた時に、突然ハープの音色と共に澄んだ歌声が聞こえて来た。
そして5分程、ハープの演奏と澄んだ歌声が続いた後......。
一際大きな波音が聞こえたと思ったら、人魚の調べは終わっていた。
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