第43話 よくあること???
空腹が満たされ元気が出てきたチェルシーが、事の顛末を話してくれた。
昨日の朝、母親からそろそろお使いが出来る様にと、集落の中にある雑貨屋さんに行って来るように用事を頼まれたらしい。
“はじめてのおつかい” その言葉に歓喜したチェルシーは、意気揚々とお使いへと
出掛ける用意をした。
そして、雑貨屋には何時も母親と一緒に出掛けていたので、ある場所も道順もハッキリと覚えていた。 そう、家の門から外に出て数m先の角を曲がるまでは......。
右に曲がる所を、左に曲がってしまったのだ。
そこから先は、所謂お決まりのパターンで、闇雲に歩き回り自分の家の方向まで
分からなくなってしまったのだった。
その時に、その場所で近くに居た人に助けを求めれば良かったのだが......。
たまたま目の前に飛んできた、青い小鳥が気になってその後を追い駆けてしまったらこんな所まで来てしまい、空腹と疲れで岩陰に身を伏せていたらしい。
“何か走馬灯を見たような気がした”
それは、俺にも似たような経験があるからだ。
しかも、つい最近の話だし。
俺の肩の上では、ティーナが自ら口を押さえて笑いを堪えていた。
“何も言うまい”
これまでの経緯が分かり、事件性は無かったので一安心だ。
「ところで、チェルシーの住んでる集落の名前は?」
「チェルシーの住んでる所は、デーベルというの」
俺は地図を取り出し広げると、デーベルの場所を確認した。
「この先の分かれ道を左に曲がって、20分位の所だね」
「その地図で判るの?」
「そうだよ。 ここがいま俺達が居る所で、そこの道がこの線になるんだよ。
そして、ここがデーベルだよ。 解るかな」
「うん。 分かった、ありがとう」
「じゃぁ、チェルシー。 デーベルまで送っていこう。 もう、歩けるかな?」
「うん。 大丈夫、歩ける」
俺は、急いでテントと調理道具を片付けると、チェルシーを連れて街道に出る。
そして、デーベルの集落へと向かった。
20分後......。
「チェルシー‼」
集落に近付くと、道の向こうから女性の声が響いて来た。
すると、その声を聞いたチェルシーは、急に駆け出してその女性方へと近付いていった。 そして顔を見合わせると、何方ともなく抱きしめ合った。
暫く二人で話をした後、チェルシーが女性を伴って俺の下へとやって来た。
「チェルシーに聞きました。 この度はありがとうございました」
「いいえ、丁度通り掛かった所でしたから、無事で良かったですね」
こうして、チェルシーを無事に送り届ける事が出来た俺達は、進むべき街道へと戻ると、ロシアーノ帝国に向かって再び旅を再開した。
“ティーナ。 さっきは笑いを堪えてくれてありがとう!”
“もう、笑いを堪えるのに必死だったわ”
“みんな、似たような経験を一回はするのかもな”
“え~、それは無いんじゃないかな。 特殊だと思うわよ”
“いや、絶対、みんな経験しているって......”
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