第116話 導かれし遺跡

花火大会を堪能した次の朝、俺とティーナは宿を引き払うと領地へと向かう街道

を徒歩で移動していた。



“ジョン、昨夜の花火大会は凄く良かったわ。 ジョンの実家の方では花火大会は

やって無いの?”


“花火を作るのに特殊な技術が必要で危険を伴う作業らしくてね、なり手が中々

居ないらしいんだ。

それに、花火自体を移動させるのにも暴発の危険を伴うらしくて、遠くまで運ぶ

のが難しいらしいよ”


“そう、あんなに綺麗な花火なのに...残念ね”

“まぁだからこそ、花火大会の時はあれだけの人がヴェルナの街に集まるんだろう

からね”


と、花火談議に花を咲かせながら、俺とティーナは街道をのんびりと歩いて行く。



五日後、領境を抜けてランボルギーニ家の領地へと足を踏み入れた。

とは言っても、領都フィエンテまでは...まだまだ遠い。



フィエンテに向かう街道を南下して1日目の夕方近く、野営地を探しながら移動

していると、街道沿いで綺麗に整備された野営地に到着した。


“あら、今までとは違って随分とここは整備された野営地ね”

“多分、ジェイソン兄さんの仕事だと思うな”


“え~と、如何いう事なのジョン”


“随分と前の事だけどね...、

そうティーナと出会って別れた後の話なんだ。

俺が、ヴェスターの村からベルツァーの街に向かっている時にね街道沿いの

野営地が全て綺麗に整備されていたんだよ。

それをね、俺がジェイソン兄さんに手紙で知らせた事があったんだ。

だから、ジェイソン兄さんが整備してくれたんだろうなと...思ったんだよ”


“あっ、私がジョンが迷子になっていないか確認しに行った所かしら”

“そうそう、あそこの野営地も綺麗に整備されていたでしょう”


そして、ここの野営地には、竈と水場とトイレが何時でも利用出来るように

整備されていた。


この日は、俺とティーナ以外にも、商隊の人達やその護衛の冒険者、一般の

人達も何組か野営地で過ごしていた。


街道沿いに、安心して休める環境があることは、とても重要なことだ。



その夜、俺は黄金色の光を追いかけている夢を見ていた。

そして、黄金色の光は遺跡らしい所へと到達して、そこの入口の扉をすり抜けた。

俺は、何故かその光が気になり、その扉を開けて中に足を踏み入れた。


うわっ⁉


“ジョン...ねぇ、ジョン”


“どうしたの、ティーナ”


“如何したのじゃないわよ。 急に変な声を上げるからビックリ!したじゃないの”


如何やら、夢の中で扉を開けて中に足を踏み入れた時に、急に床が抜けた事でその事に驚いた俺が現実世界でも声を上げてしまったようだ。


“あ~、驚かせてごめんね。 ティーナ”


“何か怖い夢でも見たの?”


“いや、そんなんじゃなくてね。 

夢の中で黄金色の光を追いかけていたら、遺跡に着いたんだよ。

それで気になったから、夢の中なんだけれど遺跡の扉を開けて中に足を踏み入れ

たら、急に床が抜けたから声を上げてしまったんだ”


“そう、でも気になるわね。 その黄金色の光...”

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