第68話 闇に染まる王城

王宮でのお茶会が終了してから、二日が経過しましたね。


いよいよ機は熟したようです。


私の手元にある、魔石が怪しく共鳴して魔石の中で靄が黒々と渦を巻くよう

に激しく揺らめいています。


さぁ、忌々しい王族どもよ、闇に染まるがいい......。


********


お茶会、当日の夜。


「フフッ、皆さん成果はどうでした」


「それはもう、目星を付けていた物は全て手に入りましたわ」


「そちらは、どうでしたの」


「わたくしも、思い通りの物が手に入りましてよ」


第2王子の夫人達が集まり、その日の成果を披露し合っていた。


*******


そして、二日後。


深夜0時の王宮、奥の間。


お気に入りの宝石を身に着けたままベッドへと入り就寝した第2王子の夫人達。


その夜、夫人達は思いもよらない変化を遂げるのであった。



深夜2時の王宮、奥の間。


GUrururu......GUrururu......


GAaaaaa......GAaaaaa......


声にならない化け物の重音な呻き声が石造りの建物の中に響いていた。



早朝4時の王宮内、第1騎士団詰所。


「団長、王宮の奥の間から異様な呻き声が聞こえていると、メイド長から報告が

上がって来てます」


「分かった。 私は至急登城して、王様に報告してくる。

その間に、精鋭部隊の編成を任せる。 後を頼むぞ、副団長」


「はい、了解しました団長!」



朝7時、王城内。


王宮の奥の間から上がった火の手は、王城全体にも影響を及ぼし始めていた。


「団長、もう手に負えません。 冒険者ギルドにも応援を頼むべきです」


「副団長、それでは騎士団の名折れだ。 もう少し頑張れ......」


この報告の時にはすでに、第2騎士団、第3騎士団は、ほぼ壊滅状態だった。



午前9時、王城内・王の執務室。


「ジェノバ王、もうこれ以上は騎士団も持ち応えられません。

早急に城外へと避難をして下さい!」


「宰相、余は逃げぬぞ」


「トップに立つものが居なくなってしまっては、政治が止まってしまいます。

ここは、勇敢なる撤退を選んで下さい」


「分かった、宰相の言う通りにしよう」



午前11時、城外・冒険者ギルド臨時対策本部。


「ギルド長、ブラックランクの冒険者4名到着しました」


「分かった。 こっちの天幕の方へ案内してくれ」


「はい、了解しました」


王都の冒険者ギルドでは、王城の緊急事態を朝6時の時点で把握していた。


そして、朝6時半にはブラックランクの冒険者に対して緊急招集を掛けていた。


「みんな済まないな。 早朝の急な招集を受けてくれて感謝している。

早速だが、事態は急を要する。

どういう理由かは分からないが、王宮の奥の間にグールが現れた。

王城内に詰めていた騎士団は、既に壊滅した模様だ。

そこで、君たちの出番だ。

今はまだ王城内の被害で済んでいるが、王都に被害を出す訳にはいかない。

グールは4体、非常に凶暴な個体だと聞いている。

今後の事も考えて、何としても王城内で仕留めて欲しい。 よろしく頼む」


4名のブラックランクの冒険者達が、王城の非常用地下通路から城内へと侵入

を開始した。



午後3時、王城内・謁見の間。


グール4体の討伐に、4名のブラックランクの冒険者達が無事成功した。


「いやぁ、こんなに時間が掛かるとは思わなかった」


「久しぶりに、もうダメかと思ったよ」


「余りにも、強力な個体だったな。 どうやって現れたんだか?」


「まぁ、ここは王城内だし、そこら辺は王族がしっかりと調べるだろうさ」


グール4体の亡骸を目の前にして、其々に感想を述べていく冒険者達、

言葉の割には疲れは無いようだった。


********


後日、再建途中の王城内・王の執務室で......。


「なに、それは本当か」

「はい、充分に調査した結果です」


「もしそうなら、第2王子の処分も考えなければならぬな」

「その様になりますね」


「我儘に育て過ぎたか。 今更どうにもならないがな」



その後、第2王子は王位継承権の剝奪、そして地下牢への幽閉処分となった。

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