第2話 18歳の夏、旅立ちの時 1

冒険者ギルドで無事に登録を済ませた俺は、屋敷へと戻って来た。


「ジョン、ギルドに登録は出来たのか?」

「はい、父上。 これが俺のギルドカードです」


「うむ、良かったな。 それで、直ぐに旅に出てしまうのか?」

「いいえ、暫くは依頼を受けて、盗賊や魔物との戦闘に慣れる訓練をしてから旅に出ようと思っています。 学園在学中でも多少やりはしましたが、引率の先生たち

が常に側に居てフォローアップしてくれていましたから、自分自身の純粋な能力をしっかりと把握してから旅に出たいと思います」


「そうだな。 しっかりとした備えは大事だからな。 上の二人にも話はして置くようにな」

「はい。 ありがとうございます、父上。 では、失礼します」


********


あれから......季節は巡り、春から夏になろうとしていた。


「ジョンさん、こちらの依頼を受けて頂きたいのですが」


依頼掲示板の処で依頼票を眺めていると、登録の時にお世話になったサーシャさんが声を掛けてきた。 そして、その手には見慣れない色の依頼票が握られていた。


「初めて見る色の依頼票ですね」

「これは指名依頼の時に用いられる物ですから」


と、サーシャさんは説明をしてくれた。


「指名依頼ですか?」

「はい、薬師ギルドの方から出来ればジョンさんにお願いしたいと.......

採集の仕方が丁寧で信頼がおけるから是非とも...と、言う事です」


「分かりました。 そこまでお願いされたら、断れませんね」

「ありがとうございます。 では、お願いしますね」


受付で依頼の受注処理を終わらせて、俺は依頼票を手にギルドを後にした。

採集する物の詳細は、薬師ギルドの方で説明があるという事なので、薬師ギルドの建物へと向かう。


薬師ギルドの建物へと入り受付へと向かった。

すみません、こちらの依頼を受けて来たんですけれども...と言って受付に居る女性へ俺は依頼票を手渡した。


「はい、お預かりします。 いま、確認しますね」


受付嬢は依頼票を手に立ち上がると奥の部屋へと歩いて行き、暫くすると一人の男性を伴って帰ってきた。

すると、男性が......


「あなたが、ジョンさんですか?」

「はい、そうです」


「いつも丁寧な採集をして下さり、大変助かっています」

「いえいえ、俺はただ普通に採集しているだけなんですが」


「その普通がなかなか出来ないんですよ。 それでは、採集する物についての説明をさせて頂きますね」


それから、30分ほど会議室において、採集する品物の種類と数、採集の仕方などについてのレクチャーを受けた。 


「ではジョンさん、よろしくお願いしますね。 期限の方は一週間ありますから、採集出来たものから随時こちらに納品して下さい」

「はい、分かりました。 では、行ってきます」


俺は採集用の道具を一式、薬師ギルドから借り受けると、これまた用意して下さった馬車に乗って採集へと向かった。

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