第102話 運命歯車が回り始める前

新年を迎えて、港町ロレンツォはお祝いムード一色となっている。


“ねぇ、ジョン。 今年は新年を迎えた、という感じが凄くするわね”

“そうだね。 去年は雪の影響で部屋の中で細々とお祝いをした感じだったからね”


この冬、俺とティーナは雪の無い地域で過ごしているので、余り冬と言う季節感

を感じることは無い。


何時でも、四六時中外を出歩けるからだ。


“北の地域はまだまだ雪が有るだろうから、北上するのはもう少し後になるかな”

“そうね、無理をして北上するよりも、このロレンツォでもう少し遊びましょう”


この時、俺とティーナはこれから起こる騒動に巻き込まれるとは微塵も思っても

いなかった。



その頃、新年を迎えた王都では......。


王城内では、この雪の降る寒い中、未だに復旧工事が行なわれていた。


雪の影響から建物外部の復旧工事は滞り気味で、建物内部の復旧工事しか出来

ない状況だからだ。


しかし、そのことは王城内にまで波及しており、建物内部も非常に寒い状態と

なっていた。



「くそっ、何で今年はこんなにも寒いんだ。 何とかならないのか忌々しい。

くしゅん...」


地下牢では第2王子が余りの寒さに愚痴を溢していた。


ただし第2王子の為に、騎士団が暖房の魔道具はいちおう設置させているのだが、

暖房の効き目は期待出来ないようだった。



「ジェームス、王城内の様子はどうだ。 寒さ対策は出来ているのか?」


「はい。 使用する部屋を限定して、そこに暖房の魔道具を集中的に置いてい

ますので何とかなっています」


「そうか。 まぁ、まだ例年より雪の量が少ないことが唯一の救いか」


「はい、そうですね。

ですが、いま王城内で騒動が起きてしまうと対応のしようが無いかも知れません」


「まぁ、そこはオスカー団長に頑張って貰うしかないな」



その頃、修道院では......。


「皆さん、新年の炊き出しの準備はよろしいですね」


「「はい、準備出来ています」」


「では、皆さん。 

外は雪で寒いですから、くれぐれも風邪をひかないようにして下さいね。

それから、上手にローテーションをしながら頑張って下さい」


修道院では礼拝堂の入口の軒先を雪除けにして、新年の炊き出しを行います。

私ララは、初めて参加する新年の炊き出しですが、笑顔で頑張ります!


********


新年も開けて、いよいよまちに待った春がもう少しでやって来ます。


私の手元にある、魔石が怪しく共鳴して魔石の中で靄が黒々と渦を巻くよう

に激しく揺らめいています。


地下牢にいる第2王子もこの寒さに負けて、愚痴や怒りがましているのでしょう。


それとは、別件ですが。


大鬼達は、相も変わらずこの寒さは駄目のようです。


尻を蹴りつけても、動こうともしません。


焚火の傍から離れないのです。


なので、強化訓練が一向に進みません。


暖かくなったら、強制的にダンジョンで強化合宿をさせるようです。


そして、もう一つ気がかりなのが、龍種が2体動いた事です。


この数百年、静かにしていたのにです。


あの彼と、何か関係があるのでしょうかね。

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