第19話 大鬼の影響があるようだ

男の人の後に続いて、俺は門を抜け村に足を踏み入れた。


そして、俺は視界に入ってきた景色に思わず驚愕した。


それは何故か......?


俺の目に飛び込んできた景色が、村というよりは町という感じの発展した風景だったからだ。 碁盤の目の様に綺麗に整備された道、家々も統一感があり綺麗に配置されていた。


おっと忘れていたが、門を開けてくれたのは、この村の警備主任でガーザさん。

これから、村の中を案内してくれるらしい。


「失礼ですがガーザさん、この村には冒険者ギルドはありますか?」

「はい、ありますよ。 このまま、案内しましょう」

「はい、お願いします」


歩きながら、俺はガーザさんに村の事を少々聞いておく。


この村の名前はヴェスターと言い、大きさは東西500m、南北500mの正方形の防壁で囲まれていて、役場やギルド、商業施設などは中央広場の所にまとまって造られているらしい。

農業が中心で防壁の中の四分の一は農地だそうだ。

商業も盛んで、人の出入りも多いらしい。


あれ、俺がさっき通った門には人が居なかったような。


そのことを不思議に思い、ガーザさんに聞いてみると......。


「あ~、あの門はですね。 シープ族、ゴート族など、西の草原や森の際辺りで遊牧的な生活をしている獣人達の為の門なんですよ。

東の門の方では、遠回りになってしまって大変ですからね」

「なるほど、そういう事なんですね」


俺の中の疑問が一つ解決して、気持ちがスッキリとした。


「そろそろ、ギルドに着きますよ」


と、言われた方向へ顔を向けると、実家のある領都のギルドと同じくらいの規模の建物がこの村の冒険者ギルドだった。 “本当に村???”


気を取り直して、ガーザさんとギルドの建物の中に入っていく。


それから、ガーザさんは幼馴染だというギルド長のスコットさんを俺に紹介してくれた。 すると、職務が有るからと言ってガーザさんは帰っていった。


そして何故か......俺は今、ギルド2階の接客室でお茶を飲んでいた。


“コン、コン”

と、ドアがノックされ、先程紹介して貰ったギルド長のスコットさんと事務服を着た女性が入ってきた。


「彼女はギルドの秘書官のキャンディスだ」

「俺は、ジョンです」


秘書官のキャンディスさんに挨拶をして置く。 第一印象は大事だからね。


「ジョン君、早速だが聞きたい事があるとか」

「はい、この村に来る途中で、シープの獣人達と交流したのですが、その時に彼らが大鬼に襲撃を受けたと話していたものですから、こちらで何か情報がないかと」


「そうか、いよいよ西の方でも被害が出ていたか。 情報の提供ありがとう。

東の方に被害が集中していたから気が付かなかったよ」

「あっ、でも8日位前の話で、それまでは無かったようですよ」


「そうすると、東の方で討伐隊を派遣した時期と重なるか。

いや、それでも辻褄が合わないな、東から西へ移動した形跡が無いからな」

「そう言えば、彼等は大鬼が突然現れたと言っていました」


「そうなると、誰かが意図的に事を起こしている可能性があるな。

ジョン君、情報をありがとう。 もう一度、討伐隊のリーダーを集めて話し合う事にするよ。 キャンディス、連絡をよろしくな」

「はい、早速連絡を取ります」


「そう言えば、ジョン君。 宿は決まっているのかい」

「いいえ、これからです」

「そうか。 キャンディス、彼の宿も手配してくれ」

「はい、畏まりました」


キャンディスさんに宿の手配をして貰った俺は、ギルドを出るとその足で宿へと向かった。


********


“キャンディス、彼の印象はどうだった”

“あの年齢で、ゴールドランクですから、かなりの腕前だと”

“大鬼の討伐に協力してくれそうかな”

“指名依頼としてお願いすれば大丈夫と思いますが”

“そうだな、村長に相談してみるか”

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