第118話 初代魔導師の遺産

突然建物の中へと転送されてしまい、啞然としていた俺とティーナ。


どれ位、啞然としていたかは分からないが、何とか気持ちが落ち着てきたので

置かれた状況を把握する事にした。


“ねぇ、ティーナ...落ち着いた?”

“えぇ、もう大丈夫よ!”


いま俺達が立っている場所は、天井が高くとても広い玄関ホールと思われる。

そして、魔道具の照明器具なのか建物の中を明るく燈していた。



“外の外観からは考えられない広さだよね”

“あの外観はおそらく幻影魔法で造られたダミーのようね”


“あっ、ティーナの泉や源一郎さんの所の湖のようにか”


それを思うと......、

本来のこの建物の大きさは、俺達が居るこの場所を基準に考えると、先日お世話

になったフィアット家のお城位の大きさは有りそうだった。



俺とティーナが、15分位その場から動かずにあれやこれやと話をしていると...。



俺の夢の中に出て来た黄金色の光の玉が、頭上から俺達二人の所へと降りてきた。

そして、目の前まで降りてくると今度は水平に移動を始めた。


“着いてこいと言っているのかな?”

“そうみたいね”


俺達はこの場に留まって雨が止むのを待っていても良かったのだが、黄金色の

光の玉の行先が気になったので着いて行く事にした。


俺が5人横に並んで歩いても余裕がある大きさの廊下を歩いて着いて行く。


すると、光の玉は廊下の大きさに似合わない小さな扉の前で一旦停止すると

その扉の向こうへ消えていった。


その光景に、俺とティーナは光の玉が消えた扉の前まで急いで行くと、俺達を

待っていたかのようにその扉が独りでに開いた。



“部屋の中に入れってことかな?”

“多分、そうでしょうね”


俺とティーナは、意を決して部屋の中へと足を踏み入れた。

そして、俺達が部屋の中へ入った事を感知したのか、扉はまた独りでに静かに

閉じた。


俺達が招かれた部屋は書斎のような処で、部屋の中を一通り見渡すと壁際の書棚

には沢山の書物が納められていた。


“ここが、この屋敷の主人の部屋のようだね”

“でも、人の気配は全く感じないわ”



二人でそんな話をしていると、光の玉が点滅をして俺達を書斎の奥の方にある

大きな机の方へと誘った。


“如何やら机の所に行かないといけないみたいだね”


俺達は、光の玉の遺志みたいなものに従って机の前まで歩み寄った。


すると、その机の中央には無色透明で大きく真丸いクリスタル置かれていた。


気を引かれた俺がそのクリスタルを覗き込むと、そのクリスタルの中には見た

こともない綺麗な魔法陣が描かれていた。


“ティーナ...これ、如何すればいいと思う”

“ねぇ、ヴィーナを呼んでみれば...”


“えっと、如何いいう事?”

“何かしら...答えが返って来そうな気がするのよ”


ティーナの直感的な指摘は的を得ている事が多いから、俺は従うことにした。



ヴィーナを呼ぶ為のクリスタルに魔力を流して魔法陣を起動する。


“は~い! 呼んでくれてありがとう‼”


いつも元気なヴィーナが、直ぐに現れた。


“あら、こんな所に居たのね。 懐かしいわ、なん百年ぶりかしらね”

“ヴィーナ、このお屋敷を知っているの?”


“勿論よ、ティーナ”



そこから、暫くの間......。

ヴィーナからこの屋敷についての情報を講義してもらう俺とティーナだった。

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