第117話 夢は現実へと

翌朝...、

食事を済ませて身支度を整えると、俺とティーナは街道を領都フィエンテに

向って歩きはじめた。


“ジョン...昨夜は、あれから夢は見なかったの?”

“あの後は、見なかったね。 何だったんだろうね”


夢を見た理由は今はまだ分からない。



野営地を出て暫くはのんびりと歩いていた俺とティーナだったが、急に辺りが

薄暗くなったので空を見上げた。 すると、その薄暗くなった原因は南の空に

浮かんでいる入道雲が発達して雨が降りそうになっていたからだった。


その状況に、俺とティーナは街道沿いの最初の街を目指して先を急いだ。


“ジョン。 急がないと、ずぶ濡れになっちゃうわよ”

“分かってはいるけれど、まだ結構距離が有るよ”


と、言っている間に雨雲からポツポツと雨粒が落ちて来ていた。


“ティーナ。 何処か雨宿りする場所を探した方がいいかも知れないよ。

雷も遠くから聞こえるようになって来たし...”


“そうね。 雷は無しの方がいいわ”


俺は雨除け用のポンチョを羽織、地図を確認しながら探索魔法を発動して雨宿り

出来そうな場所を探した。


“ティーナ。 街道から外れちゃうけど、ここから西に500m位先に何か建物が

あるみたいだよ”


“じゃぁ、急いでそこに向かいましょう”



俺とティーナのこの判断が、夢の中の続きになるとは思ってもみなかった。



“ティーナ。 この建物、昨夜、夢の中に出て来た建物とそっくりだよ”

“え~、まさか幽霊屋敷じゃないでしょうね!”


空はこの短時間で雲が厚くなったのか、昼間なのに日の沈む頃の暗さになって

いた。 そして、雷を伴った大粒の雨で今にも土砂降りになりそうだった。


“取り敢えず、雨宿りをさせてもらおうティーナ”


俺は、急いで扉を叩いて声を掛けてみたが返事は一向に返って来なかった。


“ジョン。 この屋敷、今は誰も住んで居ないみたいよ。 人の気配は一切感じ

られないもの”


“えっ、そうなの。 こんなに、綺麗に保たれているのに?”


“ジョンも魔力感知を使ったら分かるんじゃない”


ティーナの言葉に従って、俺は魔力感知を発動して探知してみた。


“本当だ、誰も居ないね”


そこで、仕方なくその建物から離れようとした時、突然に......。


ピカッ...ゴロゴロ...ドッド~ン


と、数メートル先の大木に爆音のような音を共なって雷が落ちた。


俺は、その音と光に驚いて咄嗟に建物の扉に掌を着いてしまった。


そして...その瞬間、何かが反応して扉が光ると、俺とティーナは建物の中へと

転送されてしまった。



建物の中へと転送されてしまった俺とティーナは暫くその場で惚けていた。


“ねぇ、ティーナ。 ここは、あの建物の中だよね多分...”

“私も、そう思うわよジョン...”


お互いに問いかけるが。


未だに、現状を受け入れられない二人だった。

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