第11話 作戦決行 起・承
午後1時、冒険者ギルドで一番の機密性の高い部屋を使って会議が行われた。
そして、今は午後3時を少し回った処だが、まだまだ陽射しが元気よく降り注いでいる。 そんな街中を、俺とエレーナさんが町人の格好で、件の小道に向かって歩いていた。
どうして、こんな事になってしまったのか???
今回の取り締まりに対する、騎士団と冒険者ギルドとの合同会議のあと、急遽指名依頼の依頼票が、俺へとギルド長自らの手で直に手渡された。
それが、この町人の格好で件の小道を調査せよと言うミッションだったのだ。
俺は、この街に来てまだ七日しか滞在していないので、人選ミスだと思うのだが、取り締まりの当日ということもあり渋々了解した。
「エレーナさんは良かったんですか、チョット貧乏そうな町人のような格好をしなくてはいけなかったのに」
「私は気にしていませんよ。 むしろ、このミッションの方が興味深くてワクワクしていますから」
エレーナさんに取っては“怖いもの見たさの興味本位”が勝っているようだ。
「でも、危険が伴うかも知れませんよ」
「でも、ジョンさんが守って下さるでしょう?」
まぁ、それはそうなんですけれどね。
「この小道です。 昼間でも薄暗いですね。 気を付けて進みましょう」
「ジョンさん。 手をつないで貰って良いですか」
「えっ、そこまでしなくても......」
「その方が、変に怪しまれないと思いますよ」
ん~、そうなんだろうか???
エレーナさんの言葉に対して、俺が返事に困っていると......
強引に腕を絡めてきて “さぁ、いきましょう” と、言って歩き出してしまった。
振りほどく訳にもいかないので、そのまま拉致されたような状態で小道の中を進んで行くことになった。
********
その頃......。
「おい、昨夜攫ってきたガキはどうしてる」
「へい、隔離部屋の中で大人しくしていまさぁ」
「大事な取引商品だ、傷をつけるんじゃねーぞ」
「そりゃぁ、わかってまさぁ」
「食事はしっかりと与えておけよ」
「へい」
幹部の言葉に軽く返事をして、部屋を出ていく部下の男だった。
“どうして、こんな事に”
私はただ街の中を散策したかっただけなのに。
御付きの人が面倒な人だから、チョットのいたずら心で脇道に入って隠れていたら急に後ろから袋のような物を被せられて、抱えられて運ばれてしまったの。
“ここは、何処なんでしょう???”
狭くはないけれど、薄暗くてかび臭い部屋だわ。
きっと何処かの地下室のような場所なんでしょう。
このまま、誰も助けに来ない可能性が高いわね。
もう少し、みんなに優しく接して置けば良かったわ。
今となっては、後の祭りよね。
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