第12話 作戦決行 転・決
“件の小道を調査せよ”のミッションを無事に終えて、西の空が赤く染まる時刻に
俺とエレーナさんは冒険者ギルドへと戻って来た。
会議室に向かい調査報告を済ませる。
取り締まり対象の建物の把握は終わっているので、騎士団と冒険者ギルド側で其々の役割分担の最終確認をして持場へと散っていく。
「ジョン君、ご苦労だったな。 作戦開始時間までは、のんびりとしておいてくれ。 それから、装備の確認はしっかりとして置くようにな」
「はい、ありがとうございます」
俺がギルド長のラッセルさんに返事を返すと直ぐに、後ろから軽く肩を叩かれた。
そして、振り返ると......、エレーナさんが。
「ジョンさん、お腹が空きました。 何か食べに行きましょう」
「そうですね。 軽く食べておきましょうか」
丁度お腹が空いていたので、行動前に軽く腹ごしらえをすることにした。
********
作戦決行、3分前......。
ある闇組織の幹部共の部屋では、慌ただしく男達が動き出していた。
「兄貴、建物の周りを全て囲まれてしまいましたぜ」
「くそ~、こんなに早くこの場所を特定されるとは。 敵さんの方も相当優秀なようだ。 だが、地下通路の方は迄は把握しきれて無いだろう。
良し、急いでこの場を棄てて次の拠点に移動するぞ」
「兄貴、昨夜のガキはどうします?」
「もう時間がねぇ、また新しいガキを捕獲すれば良いさ。 それよりも、捕まらなことの方が先決だ」
「へい、了解しやした」
「用意出来たか、野郎ども行くぞ」
この時、闇組織の幹部達は、騎士団と冒険者ギルドの方で既に建物の構造の詳細な図面を確保されている事を、知る由もなかった。
騎士団長の合図の声が響く。 “作戦決行、3.2.1......Go!!”
取り締まる側と、逃走する側のチキンレースが始まった。
作戦開始、3分後......。
“おい、拙いぞ。 地下通路の方にも奴らが”
“他の通路はどうなんだ”
“ダメでさぁ。 もう、押さえられてるみたいでさぁ”
“仕方ねぇ。 隔離部屋に入って、認識阻害の障壁を貼ってやり過ごそう”
闇組織の幹部達は、籠城を選択して隔離部屋へと向かった。
「おい、見つからない幹部は、残り3名だな。
おい、隅々まで何度も確認して置くんだぞ。 しかし、困ったな」
「如何したんじゃ。 団長よ」
騎士団長の横に並んで立っている、ギルド長のラッセルが声を掛ける。
「貴族のご子息がまだ見つからないんですよ」
「どこかにまだ捜索していない隠し部屋があるんじゃ無いのかの」
「そうか。 おい、誰か......、魔法探知の出来る奴を連れてこい」
メインの取り締まり隊は、建物の表側からと地下通路を主に担当して、闇組織の男達を捕縛していた。
その頃......。 俺は、裏の小道で建物への侵入口を探していた。
「暗いのも有りますが、触りながら探しても何処にも出入口の扉は在りませんね」
「何かで偽装されているんじゃ無いかしら。 暗いことに意味があると思うのよ」
エレーナさんの発した言葉で、俺はハッとある事を思い出した。
「そうですよ、エレーナさん。 ありがとうございます」
俺は、此処が狭い小道である事、そして暗がりになっていること、さらに昨夜の状況から、手に魔力を纏わせながら壁を触り始めた。
すると、魔力に反応した小さい魔法陣が光、俺達を壁の向こうへと転移させた。
「取敢えず、成功したみたいですね。 あそこの隅で蹲っているのは子供ですかね」
「そのようですね。 私が声を掛けてみますね」
エレーナさんが蹲っている子供の方へ、そっと歩いて行き声を掛ける。
「あなたは、攫われた人でいいかしら」
下を向いて、俯いていた子供が顔を上げる。
その子は可愛い顔をした、女の子だった。
“はい”
と、小さく返事を返すと、女の子は泣きながらエレーナさんに抱き着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます