第96話 楽をしてはいけない

南部辺境伯領の街フェラートを出立した俺とティーナは、王国の西海岸を目指し

て旅を続けていた。


何故、西海岸を目指しているのかと言うと......。


“ティーナは、何処か行きたいところはない”

“そうね??? また、お魚を食べてみたいわ!”


“お魚かぁ...。 内陸だとお肉が中心の食生活になるからね”

“それもあるけれど。 美味しい川魚は水の綺麗な山の方へ行かないといけないし”


“そうだね。 そういう意味では海の方が美味しい魚の種類も豊富だしね”

“そういう事よ。 ジョン、Let's Go!”


そして、俺とティーナは王都へ向かう街道を逸れて、西海岸を目指して進路を変

えた。


“ねぇ、ジョン。 あの分かれ道から海沿いまではどれ位掛かるの”

“ちょっと、地図で確認してみようか”


地図を広げて確認してみると、このまま徒歩で移動して14日位いの距離だと分か

った。

途中に二つの小さな町もあるようなので、安心して補充しながら進むことが出来る。


そして、途中にあった小さな町で補充をしながら旅を続けて、予定通りの14日目

に海岸線までたどり着くことが出来た。



すると、急にティーナが声をあげた......。


“ねぇ見て、見て、ジョン。 こんなにも綺麗な夕陽を見るのは、私初めてだわ”

“水平線に沈む夕陽は、こんなにも綺麗なんだね”


海面を紅く染めて沈みゆく太陽、感動のあまりその光景を眺めながらその場から

暫らく動くこと出来ない俺とティーナがいた。



翌朝......。


海沿いの小高い丘で野営をした俺とティーナは、朝の食事を終えると、テント等

の道具を片付け、身支度を整えてから海沿いの街を目指して歩き始めた。



歩き始めて、2時間......。


“ジョン。 街が見えてきたわ”

“思っていたよりも随分とおおきな街だね”


俺は、街壁の門の所へ歩いていき、ギルドカードを門番に提示して、街の中へと

足を踏み入れた。


“大きな街だから、暫くはここで逗留しようか?”

“そうね。 早速、宿を探しに行きましょう”


“じゃぁ、ギルドに顔を出しておかないとね”

“ねぇ、ジョン。 たまには、ギルドをスルーして自分達で宿を探しましょうよ”


“それは、良いけど。 急にどうしたの?”

“だって、ギルドに顔を出すと、ロクなことが無いなじゃい”


“まぁ、それは言い得て妙だね”

“でしょう。 だから、静かな所でのんびりとしましょう”


この街での方針が決まった所で、俺とティーナは宿を探し始めた。



お昼過ぎ......。


俺とティーナは、海沿いで海が綺麗に見える宿を確保することが出来た。


“ティーナ、この宿が見つかって良かったね”

“やっぱり、地元の人達に宿の評判を聞いたのが正解だったわね”


いつもは、ギルドで紹介してもらって楽をしていたから、自分達の脚を使って

探すのには最初の内は苦労していた。

が...、探している途中でティーナに、この際街の人に聞いてみればと言われて、

聴きながら探し始めるとすんなりと見つけることが出来たのだった。

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