第72話 港湾都市サンクト 1

精霊エリアスとの出会いから10日、俺とティーナは港湾都市サンクト

に到着した。


“ティーナ、サンクトに着いたけど帝都モスコより賑やかじゃない”

“こっちの方が、帝都ですと言われたら信じてしまうわね”


それ程に、港湾都市サンクトは賑わっていた。


“さて、冒険者ギルドに顔を出して宿を紹介してもらおう”

“そうね、少し急ぎましょうか”



ギルドで宿を紹介して貰い、俺とティーナは急いで宿へと向かった。


何故そんなに急いでいたのか......。

それは、俺が首から掛けているコバルトブルーの水晶が原因だった。


神秘の泉で精霊エリアスと出会った時、泉には溢れんばかりに水の精霊

が住んでいた。


その泉の畔で俺とティーナは精霊エリアスから、その水の精霊達を紹介

されたので、交流を深めるべく暫く遊んでいた。


そして、2時間ほど泉の畔で過ごしてしまっていたので、俺とティーナは

そろそろ旅を再開するので行きますねと挨拶をした所、精霊エリアスから

この水晶を友達の印として貰って欲しいと言われて渡されたのだった。


それで、急いでいた理由は......

このコバルトブルーの水晶が光り、点滅を始めたら精霊エリアスが俺達の

所に遊びに来たいという合図で、俺達からの外遊許可が遅くなると拗ねて

しまうという状況になるので急いでいたのだ。


港湾都市サンクトに来るまでに、2度ほど拗ねさせてしまって大変だった。



“ジョン、ティーナ。 こんにちは‼”

“ちょっとエリアス、そんなに頻繁に泉を離れて大丈夫なの”


“ティーナ、心配してくれてありがとう。 大丈夫よ、ちゃんと任せられる

代行さんが居るから”


“代行さんは大変だなぁ” と、俺は心の中で呟いた。



“そう言えば、ここは何処なの”


“エリアスここはね、サンクトと言う港湾都市よ”


“ありがとう、ティーナ。 ジョン、外には行かないの”


“今日の所は宿でのんびり休養して、明日の朝から街を見て回るから少しの間

我慢して貰えるかな”


“分ったわ、ジョン。 じゃぁ、明日の朝よろしくね!”


そう言うと、エリアスは神秘の泉へと帰って行った。



翌朝......。


水晶を通して顕現したエリアスを伴って、サンクトの街へと繰り出した。

(ティーナとエリアスは、ジョン以外の人達には認識出来ない仕様よ)


“そう言えば、船の時刻と乗船料金を調べておかないとね”

“でも、乗船料金はジョンの分だけでしょう”

“ティーナと私の分は掛からないのね”


“まぁ、周りは認識できないのだから、当然と言えば当然か”


面倒な事は先に済ましてしまえばいいという事で、港の乗船受付窓口に行き

乗り場と時刻と料金を確認して置いた。


“ねぇ、ジョン。 人間の食べる物で、何かお勧めの物はないの”


エリアスの問いかけに、通りを眺めてさがしていると丁度いいものを見つけた。

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