第94話 飢餓面白、のようです

“ねぇ、ティーナ。 説明しないと解らないんじゃない”

“え~、読んで字のごとくよ”



フェラートの街に来て三日目......。


街の中は、相変わらず元気のない様相だ。


物質に関しては、緊急処置としてマール聖教国の方から輸入を始めたので問題は

無いようだ。 しかし、人の移動が制限されているので活気は無い。



さて、厄介な連中の方に対しては、ギルド長のジャスミンさんが対応してくれる

事になってはいるが、俺の方でも辺境伯に対しての対策を講じる事にした。



“ねぇ、ジョン。 来てもらうの初めてよね”

“そうだね。 すっかり、忘れていたのもあるけど”


“ジョン。 それは、絶対、本人の前では言っちゃダメなやつよ”


ティーナの言葉に頷いて、俺はクリスタルに魔力を流した。

そして、クリスタルの中の魔法陣が反応すると、白龍のヴィーナがやって来た。


“待ちくたびれましたよ。 いつ呼んでくれるのかと!”


“いやぁ~、ヴィーナが洞窟を守るのが大変かなと思って...”


“まさかジョン、忘れていた訳じゃないでしょうね?”


“そんな事は、微塵もないよ”


何とかその場を誤魔化して、俺は本題に入ることにした。


“ヴィーナに、頼みたい事があって来てもらったんだよ”


“何かしら、面白そうな事だったら、大歓迎よ‼”


そこから、ヴィーナには俺の考えた作戦を事細やかに説明していった。


“いいわよ~。 初代様とは違うのね、そういうのワクワクするわ。

初代様にはそういう面白味は皆無だったから、退屈では有ったのよね”


ヴィーナは俺の提案に、凄くノリノリな感じでOKしてくれた。


これが後々、大々的な問題になってしまうのだが......。


この日は、ヴィーナを呼んだのが宿の部屋の中だったので、残りの時間は

飲み物とお菓子を出して俺、ティーナ、ヴィーナの3人で、これまでの旅の

話とかをして過ごした。



フェラートの街に来て七日目......。


作戦決行の日になった。


朝日が地平線から姿を現す前、東の空が少し明るくなった時刻で、俺が頼んで

いた通りにヴィーナが白龍の真の姿で飛んでくる予定だった。


だが......。


薄暗い東の空に現れたのは......、

ヴィーナを先頭に5体のドラゴン。 そして何故か、源一郎さんも混じっていた。


話を付けておいた筈の、厄介な連中の集団も、ジャスミンさん率いる冒険者達も

地獄絵図のように阿鼻叫喚となってしまった。


ただ、当初の予定通りに俺達の上空を何事もなく通り過ぎて、辺境伯の居る城の

上空へと飛んで行く。


すると、今度は城の方から阿鼻叫喚の声が、俺達の方へと聞こえて来た。



それを合図に、俺とティーナは先行して城へと向う。



そして、予定通り俺は辺境伯が行っていた、数々の悪事の資料と証拠を手に入れ

ることに成功した。



事態が終息した後、地上に降りてきた源一郎さんに来た理由を聞くと......。



ここ数百年、面白いことに飢えていたそうで、ヴィーナから面白い話があると聞い

た途端に参加を決めたそうだ。


ヴィーナに聞くと、やはり同じ答えが帰ってきた。


俺が話をした時に言った、“ワクワクする”の意味をようやく理解した瞬間だった。

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