第75話 港町スタンツァ

晴れ渡る青空に、海も穏やかで、快適な船旅を満喫した俺とティーナ。

マール聖教国の南の港街スタンツァに、三日間の船旅を終えて無事上陸した。


この港街から北上を続けると、イタリアーノ王国へと戻る事になる。


“港湾都市サンクトからすると、こじんまりとした港町よね”

“質素・倹約を唱えている国だからね、こういう感じの街になるのかもね”


“質素・倹約は良いとして、余り過剰なのもどうかと思うわ”

“そうだね。 ただ、他所の街を訪れて見ないと何とも言えないかな”


“ん~、私は何処も似たようなものだと思うわ”


まぁ、二人で“あ~だこ~だ”言っていても始まらないので、港から街の中心に

行って見る事にした。



“やっぱり、街の中心も余り賑やかではないわね”

“そうだね。 でも、ただ何かこうなった理由があるように思えるんだよね”


“ジョンがそこまで言うのなら、冒険者ギルドに行ってその理由を探して見ましょう”


ティーナの意見に従って、ギルドに足を運んでみた。


“ここも、雰囲気が暗いわね。 覇気が感じられないわ”

“何だろうね。 ギルドの中って何処に行っても、いつも騒がしいよね”


ギルドのウエスタンドアを開いて中に入った途端の俺とティーナの感想だった。


俺とティーナは仕方なく、受付カウンターの方へ向かった。


そして、俺はギルドカードを提示しながら受付嬢に声を掛けてみた。


「済みません、お聞きしたいことが有るんですが、いいですか?」

「はい、何でしょう」


俺は、受付嬢に直球ストレートに聞いてみた。

「今日初めてこの街に船で来たんですけれど。 如何してこんなに暗いんですか」


「あっ、この街に来るのが初めての方なんですね。

実はですね、この街から北東にある山の中腹に洞窟があるのですが、如何やら

そこに魔物が住み着いてしまったようなんです。

この街のギルドで対応出来れば良いのですが、高ランクの冒険者がいま聖都の

方へ呼ばれていまして、対応できない状況なのです。

魔物が何時この街を攻めて来るのか分からないので、皆さん戦々恐々としていて、

暗くなっているんです」


「なるほど、理由は分かりました。 じゃぁ、魔物の種類も分からないんですね」


「そうなんです」


と、返事をしながら、俺のギルドカードに視線を落とした受付嬢は......。

「えっ、ゴールドランクの冒険者」と叫んでしまった。


すると、周りで暗くなっていた冒険者達が一斉に俺の方へと視線を向けた。


その雰囲気を感じ取った受付嬢はバツが悪そうにして、俺の方へと顔を向けると

「......済みません......でした」と一言、謝って来た。


まぁ、受付嬢に悪気があった訳ではないので、そこは手で制して置いた。

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