第81話 透明の石が内包しているもの

俺の流した魔力に反応して、石の中に小さい魔法陣が浮かび上がった。

但し流した魔力が少量だったので、その魔法陣は直ぐに消えてしまい、

石はまた、混じりけの無い透明な物へと戻った。


“ティーナ、あの魔法陣は何だったんだろうね”

“直ぐに消えてしまったから分からないけれど、いまこの場で解析する様な代物

ではないことは確かよね”


“俺もそう思うよ”


二人の意見が一致したので、俺とティーナは川岸へ戻る事にした。



“そう言えば、ティーナ。 俺、臭わなくなった”


“大丈夫よ。 さっきのあれは、冗談だから!”


“酷い”



川岸へ戻ると俺とティーナは、渓谷を聖都方面の山の方へ向かって登り始めた。


“ティーナ、この石どこで検証しようか?”

“渓谷を抜けてからで、いいんじゃない。 人気のない場所の方が良いと思うわよ”


“そうだね。 人の居る処は避けた方がいい感じだよね”



渓谷の谷から登ること3日、俺とティーナはやっと渓谷を抜ける事ができた。


“うわぁ、渓谷を抜けたと思ったら、今度はここから先は大草原だね”

“ジョン、地図を出してみて”


“あっ、ちょっと待って”


俺は、マジックポーチから地図を取り出して、草の上に広げて置いた。


“ねぇ、ジョン。 人の居ない所はどの辺かしら?”

“地図で見ると、この辺りだね”


“取敢えず、そこに向かって進んでみましょう”



俺とティーナは地図を頼りに、西に向かって移動する事にした。

そこは、大草原と大砂漠の際にあたる場所で、集落などは無いような場所だと

判断したからだ。



街道から道を逸れて4日、ついに大草原と大砂漠の際までやって来た。


“いやぁ、草原の中は大変だったね。 一角兎があんなにも出てくるなんて”

“でも、野営の為の食材には困らなかったでしょう”


“そうだけど、食材用のマジックバッグはパンパンだよ、一角兎で......”



際に到着したのが、夕方近くになっていたので、俺は野営の準備を始めた。

簡易の竈を造り、鍋を火にかけ、お湯を沸かす。

そこへ、根菜類の野菜を入れて、半煮えになったところで、下味を付けた

一角兎の肉を投入した。 後は、火加減を調整しながら煮込むだけだ。


“ふぅ、夕飯の用意も出来たし食べようか。 ティーナは、何にする”

“私は、フルーツゼリーを頂戴”


“了解! これでいい、ティーナ”

“そう、それでいいわ”


“そう言えば、ティーナ。 そろそろ街で、補充しないとティーナの分が無く

なってしまうよ”


“えっ、そうなの。 じゃ、サッサとあの石のことを片付けなくちゃね”


ティーナにとっては石よりも、食の方が大事らしい。



翌朝......。


“ティーナ、周りは大丈夫そうだよね”

“えぇ、人の気配は、一切、感じないわ”


“じゃぁ、魔力を流して見るよ”


俺は、川底でやったように、石に自分の魔力を流して行く。


俺は、徐々に流す量を増やしながら、ティーナにも石の様子を確認して貰う。


“ジョン。 魔法陣の色が濃くなって来たわ”


それを聞いて、更に量を増やしてみた。


“ジョン。 魔法陣が輝きだしたわ”


そこから、暫くすると。


手のひらから石が空中に浮き始めて、更に輝きをました。


地上から5mくらい浮かび上がった所で、破裂するように輝くと......。


そこには、体長1m位の真っ白い鱗を纏った、ドラゴン?、白龍?、が現れた。

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