第93話 王国の南部はきな臭い

ギルド2Fの会議室へと案内された俺とティーナ。


そして、案内してくれた受付嬢がお茶とお茶請けを用意していると、会議室の扉を

開けてギルド長のジャスミンさんが、分厚い資料を片手に部屋の中に入ってきた。


「シオン、済まないね」


ジャスミンさんは、持ってきた資料をテーブルの上に置くと、椅子に深く腰かけた。


「ジョン、済まないが。 これに目を通してくれ」


「俺が見ても良い資料何ですか?」


「あ~、それは大丈夫だよ。 ゴールドランク以上の冒険者には見せても良い資料

だから」


「分かりました」


ジャスミンさんから渡された資料には、今回の厄介な連中の情報が記されていた。

構成されている人種、職歴、経歴などが、大まかではあるが事細やかに書かれて

いた。


「これで、王国南部の地域は大丈夫何ですか?」


「大丈夫じゃ、ないだろうな。

何時かは分からないが、戦争に発展してもおかしくない状況だからな」


まさか、奴隷から上級貴族までリストに入っているとは......。


「これを読むと、厄介な連中の意味が解りますね」


「だろう! 只の盗賊連中の方が、何倍いや何百倍も楽だからな」


俺はもう一度渡された資料を読み込んでみた。


「それで、ジャスミンさんは如何したいんですか?」


俺の問いかけに、目を閉じて考えた後......。


「あたいの考えとしては、指揮権を持っているだろう、その資料に書いて有る3人

の貴族と2人の元騎士団長を生きたまま捕えるか、最悪討伐するかだな」


「それは、ギルドが独自にやるんでしょうか?」


「それなんだよ。 独自で出来れば直ぐにでも動けるんだが、ここ迄状況を悪化

させた元凶の辺境伯がウンと言わないんだよ。 こいつには、悪い噂もあるから

こっちも何とかしなきゃいけないんだけど管轄外だからね」


「と言う事は、厄介な連中は国に対してではなく、辺境伯に対して反旗を挙げて

いると言う事なんですね」


「そうさね。 だから、動きようがないんだよ」


まぁ、どう見ても元凶を叩いてしまえば良い事なんだろうけど、相手が貴族でここ

の辺境伯だから手も足も出ないという処だよね。


「ジャスミンさん、俺から質問なんですが」


「なんだい」


「辺境伯の悪事の資料や証拠が手に入れば、首を挿げ替えて新しい領主の下でやり

直せるかもしれないですよね」


「そりゃ~、そうなんだが。 そんな事は、あたいらには出来ないだろう」


「実は、面白い作戦を思いついたんです」


それから1時間半くらい、俺はジャスミンさんに作戦の内容を説明していった。



「面白そうだね」


「なので先ずは、厄介な連中のトップとジャスミンさんが話し合いをして欲しい

んですよ」


「分かったよ。 何とかして、話をしようじゃないか」



こうして、ジャスミンさんと話を終えた俺は1Fホールの受付に寄って、受付嬢の

シオンさんに声を掛けて宿を紹介して貰った。



“ふぅ~、到着したその日にえらい目にあったね”

“ジョンって、何かしら巻き込まれるのが常よね”


“おかしいよね、幸運度はMAXの筈なんだけど......”


“私と出会ったんだから、それは保証してあげるわよ。 ジョン‼”

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