第78話 湖での出会い

聖都ニーアへ向かう街道を離れて、ビクトリアの湖の方へと進路を変えた俺達

は、湖の外壁を構成している外周の小高い丘をゆっくりと湖に向かって下りて

いた。


このビクトリアの湖は、大昔火山が大爆発を起こして出来た大きな陥没の穴に、

雨水と地下水が溜まって出来た湖で、その周りの丘は火山の外輪山なのだ。


自然の力とは空恐ろしいものである。


そして、この湖で最も特徴的なのは、湖の中に何個か島が有ることだ。


今回、俺達はその島の中でも、神の島と言われている島に上陸する事が目的だ。


“ここから見えている、あの湖の畔にあるのが、この場所で唯一の集落だね”

“なにか、寂れた観光地のような雰囲気ね”

“ダメよティーナ、そんなこと口しては。 ここは、水神様の聖地として祀られ

ているのだから”


“えっ、そうなの。 エリアス⁉”

“そうよ、私たちが行こうとしている、島の名前は...何?”


“あっ、神の島‼”

“そうよ、ジョンも理解してみたいね。 良かったわ”


丘を下り始めて2時間、やっと集落にたどり着いた。


“あれっ、近くで見ると随分と綺麗に整備された集落だね”

“あっ、私の泉と同じで、この集落には幻影の魔法が掛けてあるのね”


“あら、ティーナ良い所に気が付いたじゃない”

“それじゃまるで、私がアホの子みたいじゃないの。 プンプン‼”


ティーナとエリアスのじゃれ合いを横目に眺めながら、集落の中へと入った。


「これはこれは、珍しい組み合わせの旅人さんたちじゃな」


「あっ、初めまして。 旅人で冒険者のジョンと言います。

え~と、もしかして、見えていますこの2人のこと」


「あ~、見えとるよ。 妖精様と精霊様じゃな。

ワシは、この集落を纏めておる、唐十郎じゃ。 よろしゅうな」


「よろしくお願いします、唐十郎さん。

この集落に、宿泊出来る施設はありますか?」


「社の隣りに在るで、案内をばしよう」


“ねぇ~エリアス。 聖教国なのにどうして社が在るの?”


“それは、こちらの方が遥かに歴史が有るからよ。

それにね、ティーナも騙された幻影の魔法が集落全体に掛けられているし、ここ

は外の世界と隔絶された場所だから。

そして、もう一般の人にはこの集落が存在している事すら忘れられているのよ。

教会のトップからすれば、一般の人達はこの集落の事を知らない。

教会よりも、神様を祀っているこの集落の方が歴史的に古い。

それに水神様でしょう水が無くなったら、みんな生活するのにも困るもの。

ただね、以前バカな教皇様がここを無くそうとしたの、その時には水神様の怒り

を買ってしまって、聖教国は大干ばつ&大飢饉に見舞われたのバカでしょう。

それ以降は、教会のトップはこの集落を黙認しているの”


“流石、精霊エリアスだね。 勉強になったよ”

“ジョン、それは私が年寄りだと言いたいの‼”


如何やら、俺は地雷を踏んでしまったようだ。


“えっ、いや、単純に博識だなぁと。 はい!”

“そう、ならいいわ”


「お前さんたち、着いたぞい。 ここは、修練場として使かっとった場所じゃ

気兼ねなく使うがよいじゃろう」


「はい、ありがとうございます」

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