第112話 ギルドには内緒で

ティーナに指摘されて、ポーションの材料が揃っている事は確認出来たのだが

肝心のポーションを作製する作業場の確保が問題だった。


“冒険者ギルドや薬師ギルドには知られたくないんだよね”

“後々が面倒くさそうだものね”


ギルドの会議室の中で考えていても始まらないので、俺とティーナは表に出て

気分を変える事にした。



1時間程、街中を散歩しながら自分中で考えを纏めようとしてみたが、なかなか

思うような良いアイデアは浮かばなかった。



“ねぇ、ジョン。 直接、辺境伯爵の所へ行ってみるのはどうかしら”

“えっ、でも...。 顔を合わせた事も無いのに、会ってくれると思う”


“まぁ、何とかなるんじゃない!”


ティーナは軽い感じで考えているけれど、貴族と言うのは結構面倒くさい人種

なのだが。


まぁ、でも...。 


行って見るだけでも、行って見るかと思い辺境伯爵家のお城へと行く事にした。



城の門前までやって来た俺はギルドカードではなく、実家ランボルギーニ家の

紋章の入った身分証を門番に対して提示した。


「はっ、ランボルギーニ家の方ですね。 本日はどういった御用向きでしょうか」


「本日この街に参りましたところ、辺境伯爵様の奥方様が病に伏せておられると

聞きまして、お見舞いに参りました」


「そうですか。 お会いになられるかどうか聞いて参りますので、こちらでお待ち

頂けますか」


そう言うと、門番は駆け足で城の中へと入っていった。

そして、5分程待っていると先程の門番が駆け足で帰ってきた。


「領主様がお会いになられるそうです。 ご案内致しますのでこちらからどうぞ」


俺とティーナは、案内してくれると言う門番の後を着いていった。


「こちらの部屋で、お待ちください」


部屋の中へと案内されて、ソファに腰掛けて待っていると、奥の扉が開いて一人の

男性が入ってきた。


「お~、随分と男前になったなジョン。

お前の親父のルドルフに、旅に出たと聞いていたが元気そうで何よりだ」


いきなり挨拶をされて、俺が戸惑っていると......。


「赤ん坊の時以来だから、俺の事は分からないか。 はっはっは」


「済みません」


父上とは知り合いのようだが、俺にとっては初対面なので一応謝っておいた。


「そう言えば、家内のお見舞いに来てくれたんだったな。

あいつにも顔を見せてやってくれ、小さい頃とはいえジョンの事は知っているから

喜ぶだろう」


俺は、領主のウィリアムさんに案内されて、奥様のダイアナさんが床に伏せている

と言う部屋へ、お見舞いがてら顔を見せにいった。


「ダイアナ、ルドルフの所のジョンが見舞いに来てくれたぞ」


ゴフッ...グフッ...


「ごめんなさいね。 貴方がジョンさんね、あんなにも小さかったのに大きく

立派になられたのね」


「ありがとうございます」


簡単な挨拶を交わして、俺は領主のウィリアムさんと奥様のダイアナさん2人が

揃っているので、本題を切り出すことにした。



「......と言う事なんですが。 ポーションを作る場所を貸して頂ければと」


「そう言えば...、ルドルフが言っていたな。

俺の所にはジョンが作って置いて行ったポーションの備蓄が沢山あると。

良いだろう。 逆に、こちらからお願いする」


俺は、ウィリアムさんからポーションを作る為の場所に関して、了解を得ることが

出来た。



2時間後......。

俺は手持ちの材料を使って、特製ポーションを作り終えた。



「ウィリアムさん、こちらになります。 どうぞ奥様に飲ませてあげて下さい」


ウィリアムさんは、俺からポーションを受け取るとダイアナさんに飲ませ始めた。


そして、ポーションを口に含んで半分ほど飲んだ時に、ダイアナさんの体が黄金色

の光に包まれた。


「なぁっ、まさか......?」


「あなた、これは......?」


そう、俺が作ったポーションは最高級の万能薬だった。

知り合いだし、折角なので全て万全にしてあげようと思い作ってみたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る