第17話 方向音痴ではないと思う

草原を目指して歩きながら、シープの獣人の生活環境についての情報をカレンさんに教えてもらう。


「なるほど、では遊牧的な民族なんですね」

「そういう感じですね。 寒さには比較的強いのですが、暑さは苦手ですね。

なので夏場は涼しい高地の方へ移動して生活するのです」


岩場から歩くこと1時間、草原の入口辺りまでやって来た。


「カレンさん、この辺りで、どの方向か見当は付きますか?」

「はい、何と無く、記憶が甦って来ました」


カレンさんが太陽を背にして、一つ一つ指差し確認しながら記憶を手繰り寄せているようだ。

俺は、その様子を静かに見守りながら、魔獣や獣の襲撃がないか心配なので、時折周りの警戒は忘れずにしておいた。


15分程、あれやこれやと小声で呟きながら思い出したのか、俺の方へと顔を向けると一言......。


「サッパリです」と、野賜った。


その言葉を聞いた瞬間 “おい、なんじゃそりゃ” と、俺は心の中で絶叫した。


まぁ、だがしかし、俺も似たようなものなので......ポーカーフェイスで......

「しょうがないですね」と、返事を返した。


仕方なくその場でもう一度話し合いをして、取り敢えずこの場所から見えている山の麓を目指して行く事にした。 暑いときは高地の方へ行くと言っていたからね。


草原の入口付近から山の麓を目指して、歩くこと3時間半お昼を過ぎた頃、麓の傍まで辿り着くことが出来た。


「はぁ~、やっと到着したね」

「はい、私も歩き疲れました」


この辺で休憩がてら、お昼ご飯を食べることにして、その準備を始める。


「ジョンさん、私にもお手伝いさせて下さい」

「そうですね、お願い出来ますか」


カレンさんに下拵えをしてもらい、俺は石組みで簡易の竈を作り始めた。


「カレンさん、そろそろ鍋のお湯も沸いて来ましたよ」

「はい、下拵えも完了です」


いつもの如くの、サバイバル料理が完成した。


「じゃ、腹ごしらえを。 いただきます」

「はい、いただきます」



ご飯を食べ終えようとしていた処、複数の足音が近づいて来るのが分かった。


「カレンさん、複数の足音が近づいて来ています」

「はい、私にも聞こえます。 でも、この足音には聞き覚えが有ります」


如何やら、カレンさんの部族の人達が、こちらに向かって近づいてくるようだ。

カレンさんが立ち上がり、足音のする方角を確認する。


「あっ、やっぱりそうです。

部族の人達です。 5人程こちらに向かって歩いて来ます」

「じゃぁ、合流出来ましたね」


5分程で、シープの獣人が俺達の元へと現れた。


カレンさんは、同族との再会に笑顔を見せた。

そして、先頭に居た男性へと駆け寄り、抱き着いて涙を溢しながら再会を喜んでいた。 それは、同族の彼らも同様であった。


それから暫らくの間、簡単な挨拶などを交わした後、迎えに来た彼らと共にカレンさんは帰っていった。





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