第35話 冬が本格的に始まる前に

ベルツァーの街に来て二十日、そろそろ次の目的地へ出発する準備を始める事にした。 取敢えず、次の目的地はメルセーデス公国の首都ライプリッヒに決めてある

ので、冬の装備を充実しておこうと思う。


ベルツァーの街から南へ徒歩で七日の距離にある首都ライプリッヒ。

この街よりも比較的暖かい環境らしいが。

冬には変わりないので、寒いことは変わらない。

ただ、厳しい寒さでは無いという事らしい。


この日の午後......。


俺は冒険者ギルドへと来ていた。


「ジョン、姉さんから聞いたぞ。 旅を再開するって」

「そうです。 本格的な冬になる前に移動しようかと思って」


「そうか、せっかくナディアも遊び相手が出来て喜んでいたのにな。

それで、次は何処に向かうんだ」

「この公国の首都ライプリッヒに向かおうかと」


「それなら丁度、護衛の依頼が有るんだがどうだ」

「護衛は良いのですが。 貴族の護衛は遠慮して置きますよ」


「あ~、それなら大丈夫だ。 大きな商会の商隊の護衛だからな」

「分かりました。 そういうことなら、その依頼を受けます」


「ありがとう。 これで、やっと人数が揃った。

手続きは受付のアイリの所で、やっておいてくれ。 頼んだぞ」


それから、俺は受付のアイリさんの所へと向かい、依頼の手続きを完了した。



“え~、ジョンさん旅を再開しちゃうのか。

旅人さんだから、余りギルドに顔を出さなかったのよね。

妖精さんの事を聞いておきたかっのに。

まぁ、ギルドの受付嬢が安易に声を掛けて聴ける事ではないしな。

いつか、聴けると良いのだけれど。”



三日後......。


護衛任務の確認で一度顔合わせは終わっているので、俺は集合場所となっている南門の広場に来ていた。


「冒険者の皆さん‼ 首都ライプリッヒまでの道のり、護衛をよろしくお願いしますよ。 では、出発します」


商隊の代表が出発の合図を出して、隊列を組んだ商会の馬車と荷馬車がゆっくりと動き出した。


全部で7台もの馬車が一斉に移動する様は初めての経験だ。

俺の持場は隊列の真ん中辺りで、いまは荷馬車の御者席に座っている。

午前と午後で、歩きの護衛と入れ替わるのだ。

歩きっぱなしは、流石に辛いからね。

でも、硬い木の座席に長い間座っているのも、辛いものがある。


一日目の野営地に到達した商隊は、円を描くように馬車を並べて、夜食の準備に取り掛かる。 俺達冒険者は、警戒の仕事が有るので、其々バラバラに食事を済ませる。 こういう時は大概、定番の干し肉と具の無いスープに乾パンだね。


この夜は、何事もなく平穏に過ぎていった。

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