第52話 穴掘りを邪魔する者

ベイツさんの話を纏めると......。


稀少鉱物が取れる坑道に厄介者が住み着いてしまった。

ドワーフ達で太刀打ちしたが背が低い為に、相手にもされなかった。

討伐出来れば良いが、坑道から追い出すだけでも良い。


以上。



「それで、その相手とは......?」

「大きな蜘蛛じゃ」


「成程、討伐出来ればしますが、追い出した時はどう対処するんですか?」

「それはじゃな。 もう鉱物も取れなくなった廃坑の方へと誘導するのじゃ」


「それもまた、一つの方法ではありますね。 それで、いつ対処すれば良いの

ですか?」


「ジョン殿も旅の途中で疲れているじゃろうからな。

それに、一度集落でも話し合いをするから、そうじゃな三日後でどうじゃろ。

それまでは、わしの家の離れで過ごしてくれれば良いからの」


「分かりました。 では、それでお願いします」


ベイツさんと話が終わると、先程の女性が奥から出て来て離れの方へと

案内してくれた。


********


三日後......。


討伐するか、追い出すかはその時の状況を見て選択する事になったので、

その下準備もしっかりとドワーフの皆さんがやっていた。


「ベイツさん、一度現状を見て来ても良いですか?」

「それは構わんが」


「前回、皆さんが挑んだ時は怪我人は出ていないんですよね」

「そうじゃのう、転んでの擦り傷程度だったと思うぞ」


ベイツさんの言葉を聞いて、魔物では無いと判断した俺は蜘蛛の様子を

見に行ってみる事にした。


“意外と大きな坑道だね”

“そうね......”

“ティーナはこういう所が苦手なの”

“ジョンが一緒じゃなかったら、一人では絶対に入らないわ”


100m程歩いた所で、いよいよ蜘蛛の巣が有る場所へと到着した。


“結構大きいけど、2m50cm位の高さで足の長さを入れて横も同じ位かな”

“それ位の大きさね”

“見た感じ獰猛そうには見えないよね”

“こういう種類の大きな蜘蛛何でしょうね”


俺の判断としては、やはり魔物では無い様なので、この坑道から引っ越し

して貰うのが良さそうと判断した。


坑道の入口へと戻り、ベイツさんに俺の判断を伝えた。


「そうか、ジョン殿の判断を信じようかの」

「それでは、移動させる方の方法を予定通りやりますね」


坑道の外でも準備が整ったので、追い出し作戦を決行する。


「それでは、行ってきます」


蜘蛛の居る場所まで戻り、先程よりも近づいて追い出す算段をしていく。


“ティーナは、どう思う”

“蜘蛛の巣を支える為に、坑道の天井壁に伸びている5本の蜘蛛の糸を

切ってしまえば地面に降りるしかないから、降ろした処で蜘蛛の後ろ

から松明を使って追い立てればいいんじゃない”

“そうだね。 その方法が最善かな”


方針が決まった処で、俺は即座に行動を起こした。


ロングソードを持ち体勢を整えると、魔法で足元に空気を圧縮した領域

を造り、圧力を解放した力で横壁から天井へと駆け上がった。


そして、ものの見事に天井壁に伸びていた5本の蜘蛛の糸を断ち切る事に

成功する。 それから、坑道の床に着地した俺は、やはり糸の支えが無く

なって坑道の床に降りた蜘蛛を、蜘蛛の後ろから用意した大きいサイズの

2本の松明で追い立てを開始した。


2本の松明の明るさと、熱に驚いた蜘蛛は一目散に坑道の外へと逃げ出し

た。 坑道の外へと出た蜘蛛はドワーフ達が用意した沢山の虫よけの煙に

誘導されるように、廃坑になった古い坑道へと誘われていった。


取敢えず、追い出し作戦は成功を収めたと言っても良いだろう。



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