第86話 国境の街クオーネ

感謝祭で盛り上がる聖都ニーア。


俺とティーナは、聖都ニーアでのんびりと過ごすことが当初の予定だった。 


が......‼


如何やら、訪れる時期を考えないで旅をして来た弊害がここに来て出てしまった

ようで、のんびりとは行かなくなってしまった。


このまま、ギルドの訓練場でテント生活するのも、旅人としては如何かと思うので、早目に出立する事にした俺とティーナだった。


“ねぇ、ジョン。 それで、何処に向かうの?”

“このまま、北上してイタリアーノ王国との国境へ向かおう”



聖都ニーアを出立した俺とティーナは、五日後には国境の町クオーネに到着した。


“ジョン、直ぐに国境を越えちゃうの?”

“それだと寂しいから、この街で暫く滞在しよう。 ここ迄かなり、駆け足の旅に

なってしまったからね”


“そうね。 その方が、私も嬉しいわ”


俺達は何時ものように冒険者ギルドに行き、宿屋を紹介して貰い寝床を確保した。


“聖都に人が集まっていたから、この街は逆に閑散としていたね”

“でも今は、それで助かっているわね。 あの人混みには、もうウンザリだわ!”



翌日......。


宿屋の受付で、お勧めのスポットを聞いた俺達はその場所で行く事を決めた。


街の西口広場から駅馬車が出ているらしく、宿屋で教えて貰った道順に従って

徒歩で向かった。


“ジョン、あの駅馬車じゃない”

“そうだね。 馬車の横に行先が書かれているね”


俺達が向かおうとしている場所は、日帰りの出来る温泉郷だった。

駅馬車だと片道1時間で到着出来るとあって、人気の観光スポットらしい。


俺とティーナは早速、駅馬車に乗車して目的地に向かった。



“じょん、此処って海の側よね。 山じゃ無くても温泉に入れるの”

“そうらしいよ。 何でも海岸線に温泉の湧き出る噴出口が有るんだってさ”


クオーネの宿屋で貰って来た、お勧めの温泉宿の割引券を持っているので、

先ずは、その温泉宿に向かう。


“あそこだわ、ジョン”

“お勧めだけあって、綺麗な温泉宿だね。 早速、中には入ろう”


受付で割引券を渡して、日帰り客用の部屋へ案内して貰う。


「お客様、温泉の入浴に向かわれる場合は、こちらの出入口から自由に出入り

出来ますので、いちいち受付を通らなくても大丈夫になっています。

お帰りの際だけ、鍵を受付までお持ちください。

後、使用した浴衣などは、こちらの籠の中に入れておいて下されば結構です。

どうぞごゆっくりとお過ごし下さい。」


“凄く、親切丁寧な宿だわね。 今までで一番じゃない”

“ここを勧めて貰って良かったね”


暫らく部屋で過ごした後、各種温泉を楽しむ為に、教えて貰った出入口から温泉

が整備されている海岸線へと徒歩で向かった。


ただ、ここも感謝祭の影響か人が疎らで閑散としていたが、それが逆の効果を産み

俺とティーナはのんびりと各種温泉を楽しむことが出来た。


この時ばかりは、感謝祭に感謝した‼


各種温泉を思うがまま堪能した俺とティーナは、夕方近くに温泉郷を離れた。

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