第124話 実家でのひと時

この冬を領都フィエンテの実家で過ごすことにした俺とティーナ。


そして春を迎えたら、俺とティーナの二人で新たな旅を始めようと考えていた。


次の旅の目的地は、ロシアーノ帝国の港湾都市サンクトから外洋航路の船が往来

している大陸で、その大陸に渡り諸国巡りをする事だ。



さて、この数カ月の出来事といえば......。


領都フィエンテの実家に帰って来てからの話になるのだが、俺はのんびりと過

ごそうと思っていたのだが、中々思うようにはいかなかった。


最初の一週間は家族から別々に聞いてくる、どんな旅をして来たのかの質問に

対しての返答をする事に時間を費やされていた。


そして秋の終わり頃には、今度は冒険者ギルドからの呼び出しがあり、雪が降る

前にプラチナランクへの昇級試験を受けるようにと、フィエンテのギルド長から直々に言われてしまい、俺は渋々昇級試験を受けることになってしまった。


俺としては、春には旅を再開する予定なのでこのままで良いと何度も断っていた

のだが、ギルド全体の規則の事も考えるようにと言われてしまっては、断ること

が出来なくなってしまった。


イタリアーノ王国に於けるその昇級試験の内容は、元ブラックランクの冒険者だ

ったギルド長との剣技による模擬戦闘で、負かす必要は無いが15分間全力で戦う

というものだった。


結果は、契約によってヴィーナから力の補助を受けている俺の圧勝だった。


この時点で俺のプラチナランクへの昇級は決まったのだが、息が上がりへたり込

んでいるギルド長が、この力量ならブラックランクへの昇級でも可能だぞと爆弾

を落としてきたのだった。


そのことにつては、俺は丁重にお断りしておいた。


何かあるたびに呼び出されては、旅の楽しみが無くなる恐れがあるからだ。



それから、俺の剣技の師匠で王国騎士団・団長のオスカー団長から父上の所に

手紙による連絡が届いたようで、俺に如何するのか訪ねてきた。


手紙の内容を簡潔に説明すると、

『春先になったら王国騎士団の寄宿舎に来てもらいたい。』と書いてあった。


「ジョン、オスカー団長への返答は如何するんだ」


「父上、何か嫌な予感がするので、上手く理由を付けて断れませんかね」


「まぁ、そうだな。 それじゃ儂が何か適当な理由を付けて返答しておこう」


こうした考えをしてくれる父上には、いつまでたっても俺は頭が上がらない。



暫くはそうやって、俺は忙しい日々を実家で過ごしていた......。



そんな中、俺が実家で使用されて減っていた各種ポーションの補充をする為に

ポーション作製の作業をしている時のこと、長兄のジェイソン兄さんが俺専用

の薬剤室へと訪ねてきた。


「ジョン、いま手が空いているか、空いていれば少し話をして置きたいんだが」


「あぁ、いいよ。 少し片付けるから、待っててくれる」


片付けが終わり、俺が机の上に飲み物を用意するとジェイソン兄さんが徐に話

をし始めた。


「実はな、王都の公爵家で・・・・・こういう事が起きていたんだ」


「俺が、旅をしている間にそんな事があったんだね」


俺はジェイソン兄さんから事の始まりから顛末まで詳細に聞かされた。


「ジョンが各種ポーションを大量に置いて行ってくれて助かったよ」


ジェイソン兄さんから各種ポーションが殊更役に立ったと聞いて、作って置い

た甲斐があって良かったと俺は安堵したのだった。



ジェイソン兄さんから話を聞いた俺は、フェラーリ家のクリストファーさんには

これからも頑張って貰って、何とか公爵家への再興を果たして欲しいと思った。


ジェイソン兄さんとクリストファーさんは学生時代から仲が良いからね。


そして、夫人達の策略のせいで床に伏せていたララも元気を取り戻して、修道院の

方で頑張っているようなので何よりだ。

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