第39話 難しい依頼
鍛冶屋での用事を終わらせて、ロバートさん達と冒険者ギルドへとやって来た。
「ロバートさん、報酬は直ぐに貰えるんですか?」
「あ~、護衛の分は直ぐにでも大丈夫だぞ。
ただ大鬼の討伐報酬については、ジョンは加勢したパーティーと配分を決めないと貰えないぞ。 どうする」
「そうですね。 俺は片腕を切り落としただけなんで、報酬自体が必要では無いんですが」
「そうは言ってもタダ働きという訳にいかないぞ。 今後の事もあるからな」
「そうですか。 俺は所謂、渡り鳥的な冒険者なので、気にはしないのですが」
「そうか。 じゃぁ、その事に関しては俺が間に入って処理しておこう」
「ありがとうございます、ロバートさん」
他人任せになるが、面倒なのでお願いする事にした。
二日後......。
この時期に出来る依頼はないかと、ギルドに顔を出していた。
まだ雪は降らないが、この二日で一気に寒さが厳しくなって来たので、今のうちに
少し稼いでおこうと思ったのだ。
“報酬をいっぱい貰っているだろう” と、思われるかもしれないが、その通りだ。
しかし雪が降り、そして積もり始めると、仕事が出来なくなるらしいので、安心して冬を越すためにも補充はして置きたい。
“何が有るか分からないからね”
「と、いう事で......。 何か出来る依頼は有りますか?」
「何が、という事で......なのか、意味不明で分かりませんが。
ジョンさんが出来る依頼は、こちらになりますね」
受付嬢のアンナさんが、俺の言葉に呆れながらも依頼を見付けてくれた。
「八面鳥ですか?」
「この時期だけの定番の食材なんですが、今年はまだ捕獲量が少ないんですよ。
それで常時依頼として出してはいるんですが、危機察知能力が高くて逃げ足も速いので、普通の冒険者では精々三日で一羽捕獲出来るかどうかなんですよ。
なので、凄腕のジョンさんなら一日一羽捕獲出来るのでは無いかと......。
どうでしょう‼」
何気に、アンナさんから顔面に挑戦状を叩き付けられた感じがした。
「分かりました。 その挑戦状、受けて起ちましょう」
「何羽でも良いので、お願いします。 但し、あくまでも捕獲ですからね」
「了解しました」
“私と対決する訳ではないのだけれど、何故かその場の勢いで煽ってしまったわ。
これは、受付嬢としては失格ね”
さて、八面鳥の生息域まで地図を見ながらやって来たのだが、辺り一面の背の高い草は枯れてはいるが、倒れずにそのままの状態で残っていた。
しかも、八面鳥も同じ色合いの保護色の羽を纏っているので判りずらいことこの上ないだろう。 ギルドの図鑑で特徴は調べては来たが、大丈夫か......俺。
“冷たい風が、身にしみる。 はぁ~”
“何、辛気臭い事を言っているのかな”
“あっ、フェアリー”
“あっ、フェアリーじゃ無い。 そろそろ名前で呼んで欲しいのだけれど”
“でも、名前を聞いて無いんだけど”
“だって、あなたが聞いてくれなかったんでしょう”
“はい、そうです。 ゴメンナサイ”
俺は、フェアリーに痛い所を突かれてしまった。
“俺は、ジョン。 あの時は、ありがとう”
“ウンウン。 感謝の気持ちは大事よ。
私は、ティーナよ。 よろしくね!”
“ところで、こんな枯草の草原で何をしているの”
“八面鳥を生け捕りにする、クエストを受けて来たんだよ”
“八面鳥をねぇ~。 ジョンなら何とかなるかもしれないけれど時間が掛かるわよ”
“それは、想定内だけど。 そんなに、難しいの”
“気配隠蔽の魔法が使えれば大丈夫よ。 でも一番の問題は枯草と見分けが付かない所よね”
“やっぱり、そこか~”
“大丈夫。 私が手伝ってあげるから心配しないで”
やっと、お互いの名前を聞けた俺とティーナは共同作業を始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます