第89話 意外と頑張る大鬼

俺はロングソードを構えて、目の前の大鬼と対峙する。


以前、遭遇した大鬼と比べて見ると。


大鬼の体長は、大きくなった訳ではないようだ。

ただ、筋肉の付き具合は二回りほど太くなった感じはする。

特に首周りは、頭骨と変わらないに程に太く強化されているようだ。

首を一気に断絶するのは難しいだろう。

脚に関しても、太腿は太く、脹脛は均整が取れていて俊敏性も強化

されているようだ。


そう、あと何故か棍棒が一回り小さくなっている。

これは、腕力を存分に発揮出来るようにと、考えてのことだろう。


さて、考察も終わったところで、戦闘開始と行きますか。


と、先に動き出したのは大鬼の方だった。


俺が仕掛けて来ないので、しびれを切らしたのだろう。



“ジョン、気をつけてね”


そう言うと、ティーナは俺の肩の上から退避した。



ゴキッ、ガコッ


振り下ろされた棍棒をソードの腹を使い、横へ弾いて軌道を逸らす。


棍棒が一回り小さくなったので、重さが軽くなり弾くのに苦労しない。


ガコッ、ゴッツ


今度は、横から薙ぐように振られた棍棒を、ソードの腹で上から叩き落とした。


俊敏力が上がったようで、大鬼は次々と休む間も無く棍棒を振り回してくる。


が......。


息が上がって来たようで、肩が上下に揺れて来ていた。


これまでの経験では、戦闘時間が短かったのだろう。


筋力は増えても、持久力は向上していないようだ。


付け込むとしたら、そこが弱点かな。


俺は戦闘を継続しながら、相手の不利な部分を洗い出していく。



そろそろ、決着を着けることにしよう。


経験値稼ぎをさせたくないからね。


俺は、試しに白龍から譲渡された力を使って見る事にした。


取敢えず、筋力強化と素早さを底上げして、ロングソードに風の刃を纏わせると

一気に大鬼の下に移動して、腰のあたりを横からロングソードで切り付けた。


すると、何の手応えもなく刃が通り、大鬼の胴体が上下二つに別れて横倒しに

なった。


“ふぅ、無事に倒し終わったよ。 ティーナ”


“お疲れ様、ジョン”


そう言いながら、ティーナは俺の肩の上に戻って来た。


“外の様子を見に行って見るかな”


“トッドが居たから、大丈夫でしょ”


俺は、倒した大鬼から魔石を取り出すと、洞窟の入口の方へと向かった。


********


彼は、あの時の青年ですね。


彼からは、何か懐かしい魔力の波動を感じました。



しかし、戦闘中にあそこまで冷静に考察して、対応するのですから実力的には既に

ブラックランクの冒険者を超えているかもしれませんね。



彼が王都に到着する前に、私は計画を実行に移す事にしましょう。


********


洞窟の外へと出て来た俺とティーナは、ほっと胸をなでおろしていた。


「ギルド長、こちらは終わりましたよ」


「あ~、了解した。 済まないが、小鬼の残党が居ないか確認してくれないか」


「は~い、了解です」


俺とティーナで、小鬼の残党が残って居ないか調べていく。


途中、何体かまだ息が有る小鬼がいたので、可哀そうだがとどめをしておいた。



冒険者の方は、治療魔法を使える魔法士を連れて来ていたので、死者は出ていない様だった。



周辺の安全を確認したところ問題は無かったので、拠点まで戻り休養を取ると、

翌朝クオーネ街へと帰還した。

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