第9話 交易都市の裏の顔と表の顔 2

話し合いが始まって、1時間半ようやく終わりが見えてきた。

円卓を囲んでの話し合いだったのだが、俺は専ら聞き役として参加しているだけで

途中からは眠気との戦いになってしまっていた。


「最後になるが、ジョン討伐報酬はどうするんだ」


ドナルドさんの問いかけに、俺は一気に眠気が覚めてしまった。


「え~と、どういう事でしょうか?」


全部丸投げした筈なので、報酬は必要ないのだが。


「ギルド長からなキチンと処理するようにと、言明が下ったんだよ」

「はぁ~」


「お前の取り分なんだから。 ギルドカードは持っているんだろうサッサと出せ」


その言葉に、仕方なく俺はギルドカードを懐から取り出すとドナルドさんに預けた。


「ジョン⁉ お前のカード、シルバーランクじゃねーか。

どうりで、あんなにも強かったわけだ。 俺はてっきり見た目から、ブロンズかと思っていたんだが、しかも登録してからまだ半年しか経ってねぇじゃねーか。

どうなっているんだ」

「いやぁ、どうなっているんだと言われても......」


明らかに、驚いたような、呆れ返ったような顔で俺を見ているドナルドさん。

そこへ、事務服を着た女性が助け船を出してきた。


「ドナルドさん、言いたいことは分かりますが、個人情報は詮索しては駄目ですよ。 知っていますよね」

「あっ、いやぁ......済まんかった。 余りにも規格外だったんでな、ついな......」


事務服を着た女性がドナルドさんから俺のカードを取り上げると、事務処理をすると言って部屋の隅の機械に俺のカードを差し込んだ。

そして、1分もしない間にピーと言う音と共にカードが差し込み口から排出される。


「はい、ジョンさん。 討伐報酬は、このカードを受付カウンターの所にある機械に通して確認しておいて下さいね」


そう言って、事務服を着た女性はカードを俺に返却してくれた。

その際、ウインクをされたが気にしないでおこう。


時刻は昼過ぎになり、話し合いも終わったので、その場で解散となった。




それぞれが、部屋を出て行く中......。

俺に対して、ギルド長からお声が掛かった。


あっ、案の定......何か、ギルド長からお叱りがあるのかなぁ。


「ジョン君、取り敢えずそこの椅子に掛けてくれたまえ。 何も、そんな心配そうな顔をせんでも良いだろう」

「はぁ」


お叱りでは無いようなので、素直に椅子に座り話を聞く事にした。

そして、ギルド長から話始める。


「先ずは、儂はこのギルドの長をしておるラッセルじゃ。 よろしくな。

ジョン君は、今回の盗賊の頭を討伐した事で、ポイントが貯まったのでゴールドランクに昇級する事が決定じゃ。 そこでじゃ、いまこの街で起こっている問題を把握しておいて欲しいと思っておるのじゃ。 エレーナ君、説明を頼めるかな」

「はい。 大丈夫です」


事務服を着たこの女性は、エレーナさんと言うらしい。


「では、説明をさせて頂きます」


俺は、気を引き締めてエレーナさんの説明を聞く。


エレーナさんが説明してくれた内容は、犯罪組織が地下に潜って人身売買や違法薬物販売などを行っている事に対しての説明だった。


「そしてこの所、活動がより活発になって来たので、騎士団と共に取り締まる事にしたのですが、冒険者の数が足りないので、取り締まりをする時に是非とも参加して欲しいのです」

「なるほど、分かりました。 そういうことなら、参加します」


「この街に来て早々で、悪いのじゃが、よろしく頼むの」

「はい、力になれるか分かりませんが、頑張ります」


治安の悪化は、父上の領内でも問題になっていたので、俺はお手伝いすることにした。


「ジョンさん、ではもう一度カードを出して頂けますか」


エレーナさんに、再度懐に仕舞ったカードを預ける。


エレーナさんが先程と同じように機械にカードを差し込んで処理が終わると、新しく書き換えられたゴールドカードが排出されて来た。


俺はその新しいカードをエレーナさんから受け取ると大事に懐へと仕舞った。

カードを受け取る時に、エレーナさんがまたウインクをしていたが気にしないことにする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る