第52話 迷宮ダンジョン十五階を目指す 5

 やっと十五階だ! 先にセーフゾーンを出た冒険者達は、もう外に出たのだろうか? 十四階の隠し部屋、凄く嫌だった。出る時も、ポイッと外に捨てられて、ルシウスが上に落ちてきたんだ。


 まじ、死ぬほど重かった! 白猫レオが一人だけ、くるりんと着地しているのも腹立った。ジャスが一番下で喚いていたけどね。


 十五階も宮殿の続きだけど、危ない! 天井から大鎌が振り子のように揺れている。

 それに落とし穴もいっぱい! なのに、アナコンダは落ちないだなんて、不公平だろう!


「これはキツイな!」ルシウスも、天井からの攻撃、足元の落とし穴、そして蛇や蝙蝠や蜘蛛の魔物も巨大化しているのにうんざりしている。


「その上、隠し部屋、結構大きいんだよ!」


 一旦、十五階をクリアして転移陣を使えるようにしてから、後日、隠し部屋を攻略しても良い。十階の時は、そうしたからね。


「いや、迷宮ダンジョンは、今日で一旦はやめにしたいから、隠し部屋も攻略しよう!」


 ルシウスの意見に、ジャスと私も賛成する。もう、迷宮ダンジョンには飽きた。それに、これ以上の階は力不足だよ。特に隠し部屋は無理だと思う。


「アレク、あの大鎌、天井との接点が弱点だ!」

 白猫レオに言われて、そこを中心に疾風の矢で射る。

 大鎌を次々に落としていくと、後は落とし穴に注意して進むだけだ。


「召喚!」

 おっ、白猫レオが機械ハチドリを召喚して、大鎌の付け根に氷の粒で攻撃させている。あまり効果が無いんじゃないかな? と思ったけど、何羽もが氷の粒をぶつけるので、凍りついて動きが遅くなる。

 そこを疾風の矢で壊していく。


 アナコンダをジャスが炎の剣でぶっ殺し、アラクネをルシウスが風の剣で引き裂いて進む。


 白猫レオと魔導書のお陰で、星の海シュテルンメーアもかなり強くなっている。


 十五階の隠し部屋、落とし穴方式だった。床がスコンと抜けたんだ。なんとなく、そうじゃないかと皆も思っていたので、重なり合って落ちるのは回避できた。


「やっぱりな! 落とし穴の多い階だから、こうくると思ったよ!」

 ジャスが自慢しているけど、全員分かっていたよ。


「おっ、ここは図書室じゃないか!」

 ルシウスは、魔導書がドロップするのでは? とやる気満々だ。


 両サイドの壁一面が本棚になっているけど、正面には何故かパイプオルガン! 図書室は静かにしなきゃいけないんじゃないの?


 チェーンブックの攻撃力が強い。本とは思えない牙がびっしり生えている。それに、本が火を吹いて良いのか?


 長年、発見されていなかったので、どわぁとチェーンブックと噛みつき本に囲まれてしまった。


「アレク、指揮棒(バトン・クラウンステッキ)だ!」

 十階の隠し部屋の司令官がドロップした指揮棒(バトン・クラウンステッキ)をアイテムボックスから出して、振り抜く。


 チェーンブック、噛みつき本がバーンと後ろに飛んでいった。

 一斉に攻撃されたら、ちょっと焦ったけど、距離をおけばいける!

「召喚!」

 白猫レオは機械兵を出して、槍で本を貫かせる。

 ルシウスとジャスもチェーンブックを剣でぶった斬っていく。


 私は、奥のボスが相手だ! と思ったら、ボスは司書を召喚した。


「図書室で暴れる者は許さぬ!」と怒っているけど、本が一番先に暴れたんじゃん!


 司書人形、羽ペンを飛ばしてくるのがマジウザい。それに、これも当たると爆発するから、全員にバリアを張る。


「召喚!」

 白猫レオが機械ハチドリを召喚して、羽ペンを攻撃させる。でも、機械ハチドリのレベルはまだ低いので、当たって爆発しちゃているんだ。


「バリア!」でかなりの羽ペンは落とした。

「アレク、羽ペンより司書だ!」

 白猫レオは、機械ハチドリの損害なんか気にしていない。次々と召喚して出している。まるで煙幕みたいな使い方だ。


 司書人形に「フルメン!」を連発して倒す。

 ボス司書は、怒り狂って、本棚に攻撃を命じる。


 本棚の梯子が先ずは先鋒だ! 当たると大怪我をしそうだと思ったけど、白猫レオが召喚した騎馬騎士が突撃している。


 ボス司書は、パイプオルガンを演奏しだした。

「おぃ、図書室で音楽は拙いんじゃないの!」と怒鳴ったら、大音量の音楽に耳がやられそうだ。


防御デーフェンスィオ! 防御デーフェンスィオ!」を掛けて、やっと立っていられる。


 ボス司書とパイプオルガンを鑑定したら、この音楽は重力魔法だった。


「アレク、パイプを壊すんだ!」


 白猫レオも耳を後ろに倒している。猫は耳が良いから、音に敏感なんだ! 


遮断ディスコンティ! 遮断ディスコンティ! 遮断ディスコンティ!」

 パイプを破壊したら、こちらの番だ! ボス司書を疾風の矢で、パイプオルガンに射止める。


 そこをジャスが炎の剣でぶった斬って討伐した。

  

 破壊の限りを尽くした図書室! 床には本がどっさりと山になっている。

 それと、羽ペンもびっしり! 魔石も多い。


「魔導書と普通の本もある!」

「本は嬉しい! 買うと高いんだ!」

 ルシウスも本が好きみたいだ。それより驚いたのは、ジャスも本を読むってこと!

「馬鹿か! 女の子にモテるには詩の二つや三つ捧げなきゃいけないんだぞ!」

 私とルシウスは、ジャスが詩を? と爆笑してしまった。


「本は、クランができたら皆で読みたい」

 その前に金級と銀級にならないといけないんだけどね。取り敢えず、私のアイテムボックスに入れて、蔵書目録を作って貸し出す事にした。


 ボス司書は、大きな魔石、豪華な魔導書、そして宝箱をドロップした。


 魔導書は、金熊亭でゆっくりと調べる事にして、宝箱を鑑定する。


「開けても大丈夫みたいだけど、鍵が掛かっているよ」

 ルシウスが、武器庫で得た鍵を慎重に宝箱に挿して回す。


「おっ、これは……アレク、鑑定してくれ!」

 ルシウスの声が興奮で震えている。

「鑑定! マジックバッグ……小だよ!」

 鑑定の精度が上がったから、小まで分かっちゃった。

 でも、そんなの関係ない! ルシウスとジャスと私は飛び上がって喜ぶ。


「やったな! マジックバッグだ!」

「目標達成だ!」

「これで、当分は迷宮ダンジョンに潜らなくて済む!」

 全員で笑った。同じ中級ダンジョンでもキツかった気がするよ。


「ここで昼食にしよう!」と騒いでいたら、白猫レオに叱られた。


「パイプオルガンの下を見ろ!」

 マジックバッグに浮かれて、ちゃんと見ていなかった。

 小さな宝箱を見落としていたんだ。鑑定を掛けてから開けると、鍵!


「ううん、これは先にしよう!」

 流石のルシウスも宝物庫の誘惑に勝った。

 エールを一杯飲んで、昼食の肉詰めパンを食べて、十五階の転移陣を目指す。

 やっと、外に出れる! 浮かれていたけど、ボスが待っていたんだ。

 

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