第34話 アイテムボックスの使い方

 空中公園のドロップ品、機械花の宝石は嵩低い。機械ハチドリの青色の部品は、ちょっと複雑で細かい。


「それは、こちらの袋に入れろ!」

 アイテムボックスに入れたら、同じだけど、細かいから籠の網目から落ちそうだもんね。


 鑑定! を掛けたら、機械ハチドリの部品だ!


「機械ハチドリって何の役に立つのかな? 氷魔法で攻撃してきて、鬱陶しかったけど、そんなに強くはないよね」


 白猫レオが「伝令になるし、空から斥候もできる」と言う。


「へぇ、なるほどね!」と私が納得しているとジャスが慌てている。


「人前で話して良いのか!」

 コソッと白猫レオに注意する。そうか、ここには星の海シュテルンメーアだけじゃなく、荷物持ちの四人もいる。金熊亭の部屋で白猫レオが話しているから、鈍感になっていた。


「大丈夫! どうせ記憶を改竄するから」

 怖い事を平然と告げる白猫レオ


「ちょっと……そんなのできるの?」

 小声で聞いたら、簡単な改竄だけだと言う。殆どの能力を全能神様オムニスに封じられているからと悔しそうだけど、そうして貰って良かったよ。ほんの少しでもヤバいじゃん。


「お前達、何も考えていないのか? 秘密の隠し部屋の出来事は、我と相性が良いから記憶の改竄ができるのだ。大体、ルシウスが口止めしても、拡散されると思わないのは愚か過ぎる」


 ケチなルシウスとしては、口止め料を出していたんだけど、確かに隠し部屋はバレるかもね。


「同じメンバーを雇って、秘密にするようにとは言ったが、確かに目をつけられるかもな。魔導灯は、シャンデリアと蝋燭のドロップ品だから、まだ問題は少ないけど、機械兵、機械騎士は駄目かもしれない」


 金になるけど諦めようと、ルシウスがガックリと肩を落とす。


「愚か者! 機械兵と機械騎士が広まらないと、護衛として召喚し難いではないか! オークダンジョンを制覇するのは、一日ではできないのだぞ。ダンジョン内で野営する時、機械兵に見張らせたら良いのだ」


 白猫レオの言い分も理解できるけど……従魔が見張っておけば良いんじゃない?


「レベルが低いから、睡眠が必要なのだ! それに食事も!」

 えっ、食べなくても死なないって言っていたよね? ミルクはあげているけど……足りないの? これからは、ちゃんと食事をあげよう!


 白猫レオが出口で「記憶改竄ニャニャニャン!」と鳴いたら、一瞬だけ荷物持ちの脚が止まったけど、そのまま歩き出した。


 ちゃんとできているの? って頭で考えたら「馬鹿者ニャニャン!」と叱られた。態度デカいよ!


 それにしても危険な能力だよね。悪用されないか不安! 私の記憶も改竄されたりして……。


できないニャニャン!」

 えっ、できないんだ! 少しホッとしたよ。

愛し子だからニャニャニャン!」と悔しそう。


「他の人もしちゃ駄目だよ!」と言ったけど、荷物持ちの記憶は改竄しちゃっているんだよね。


 ルシウスが荷物持ちに日当を払い、さりげなく今日の迷宮ダンジョンで変わった事がなかったか訊ねている。


「三階に行けなかったですね。行けると思っていたのですが、明日も雇ってくれるのですか?」


「ああ、よろしく頼む! 馬車代は渡すから先に帰ってくれ」

 

 明日も雇うので、背負い籠ごと預かる。借りている部屋で、あれこれ作業するからね。



 部屋に入るなり、白猫レオが「アイテムボックスの使い方が下手すぎる!」と文句を言う。

 生意気! 腹が立つけど、可愛い見た目に絆されちゃう。


「機械兵、機械騎士は、上の階で遭遇する。だから、パーツがドロップするし、自由都市群パエストゥムでは作っている筈だ。ただ、その階に到達するまでは、販売しない方が良いだろう。だから、荷物持ちの籠が午前中で満杯にならないように、アイテムボックスに嵩張るのは収納しながら攻略していけば良い」


 そうか、荷物持ちの記憶を改竄できるなら、秘密の部屋のドロップ品はアイテムボックスに入れたら良いんだ。


「それで良いのか?」とジャスは心配しているけど、ルシウスはマジックバッグを早く見つけたいから、効率的にダンジョンを攻略するのに賛成みたい。


「今日のを収納するね!」

 籠の中のドロップ品を収納して、白猫レオに教わった遣り方で、インデックスで整理する。


「魔導灯は四個できる。機械ハチドリはええっと三羽。冷風機は四台!」

 

 それと、メイド服とか要らない物を出していく。


「おっ、綺麗にたたんであるじゃん!」

 メイド服は、十枚あった。


「メイド服、銀食器、銀のトレイ、ナイフ、ハサミ、蝋燭、葉巻、魔石……これらは、籠に入れて持って帰って売ろう」

 

 金貨ゴルディ銀貨クラン銅貨ペニーはその場で分けた。


 問題は、半端な部品! かなりインデックスに溜まっている。


「部品も買い取ってくれるけど、できたら製品にしてからオークションに掛けたい。魔導灯は、オークションに掛ける必要はなさそうだけどな」


 王座の細い金の冠、家礼の金の懐中時計はオークションに掛ける。機械花の宝石は、小さいし、ギルドの買取りかな?


「温熱冷風機は? 冷風機が四台作れるけど、どうするの? それと片眼鏡は?」


 温熱冷風機と片眼鏡は、高価買取が期待できるけど、売るか皆も悩む。


「アレクがいるから、片眼鏡はオークションに掛けても良いが、不審がられそうだ。温熱冷風機も、もう少し上の階を攻略してからの方が良いだろう」


 つまり、今はアイテムボックスの中で保管しておく事になった。


「機械ハチドリが見たい」

 ジャスに言われて、アイテムボックスの中から機械ハチドリの部品を組み立てる。


 青い機械のハチドリが三羽! ドロップした魔石も入れてあるので、パタパタ飛んでいる。


「敵だった時は、可愛いとは思わなかったが……」


 ジャスが手を差し出して、指に止まらせている。大男の指に可愛い機械ハチドリ……何だか笑いそうだけど、我慢する。


「これで斥候させる練習をしてみたいが、ダンジョン内だと他の冒険者に攻撃されるかもな」


 ルシウスが心配するのも分かるよ。私も、機械ハチドリが飛んできたらフルメンで攻撃しちゃうだろうから。


「それなら、何か自分達の印を身に付けさせたら良いだけだ」

 

 白猫レオも偶には良い事を言うね! 三人で『星の海シュテルンメーア』の印を考える。


「三つ星で良いだろう」

「ジャス、単純だね! 人数が増えたらどうするんだ?」

「印なんだから、それで良いだろう!」


 リーダーがそう言うなら、別に良いけどさ。地図の裏に三つの星を描く。

 防衛都市カストラに戻ったら、絵の具を手に入れて、これを機械ハチドリに描こう。


「冷風機も組み立てよう!」

 四台の冷風機を組み立て出す。


「一台ずつ使おう!」と三人とも賛成する。

「魔石をどのくらい消費するのか、チェックしようぜ」

 ルシウスは節約しそう。部屋を冷やしたら、寝る前に消すタイプかも。あれって途中で暑くて起きちゃうんだよね。


「一台は売るのか?」

 ジャスは思案顔……きっとルミエラちゃんにプレゼントしたいのだろう。


「まぁ、今は売らないけどな」

 ルシウスは、ジャスの思惑に気づいていないのか、気づいても無視しているのかわからない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る