第51話 迷宮ダンジョン十五階を目指す 4

 次の日の朝から、十四階を探索する。もう一組は、凄く早起きなのか、もうセーフゾーンにはいなかった。


 十四階は、宮殿に戻っていた。十三階は、何なんだったんだ! と白猫レオに文句を言いたい。


「隠し部屋っぽいのはあるけど……小さいよ」


「宝物庫かも! そこにマジックバッグがあるんじゃないか!」

 ルシウスが期待しているから、隠し部屋に急ぐけど、メイド人形や従僕人形、それに執事人形がウザい。


 廊下の角ごとに待ち伏せされている。その上にアラクネ! 蝙蝠! 蛇! 段々大きくなってボス並だよ。


「荷物持ち、機械兵で良かったよ!」

 いちいち荷物持ちにバリアを張って戦っていられない。

「まぁな! それにアレクが修理できるようになったし!」

 それ、結構重要! バージョンアップして丈夫になったけど、やはり魔物の攻撃で壊れる事もあるからね。


 アラクネ、いつかは隠し部屋でなくても、ボスがでてくるのかな? 快適反物、欲しいな。今度、ダンジョンの外に出たら、シャツができている予定! 快適シャツ! もう一枚欲しい! 

 欲望丸出しで、アラクネを討伐したけど、普通の絹の生地だった。


「ふぅ、やはり階数が上がると魔物も強くなるな!」

 ジャスもアナコンダを炎の剣でぶった斬って、額の汗を拭いている。


「あそこが入口な筈だけど……」

 天井、床、壁を見るけど、扉のカラクリがわからない。


 あちこち叩いて探す。


「コン、コン、コン、ボス!」

「えっ、ジャス、怪力で穴を開けた? 吸い込まれているよ!」

 慌ててジャスの手を掴んだら、一緒に吸い込まれた。ルシウスが私の手を掴み、白猫レオは頭にしがみつく。


「ここは……拷問部屋?」

 壁には手鎖、床には足枷。なんか映画で見た鋼鉄の処女? それに、革のボンデージを身につけた拷問官人形がムチを振り回している。


「パスしたい!」とジャスが弱気だ。多分、奥にいる仮面をつけた女王様にビビっているのだろう。


「ここは、良いんじゃないかな?」

 私もパスに一票! ガチムチのボンデージ人形の相手は嫌だ!

「趣味悪い!」と白猫レオに苦情を言っておく。

 

 ガチムチ達が沸きすぎて、身動きが取れないので、その隙に逃げ出したい。


「どうやって逃げるんだ?」

 ルシウスも、ちょっと苦手みたい。特に、鋼鉄の処女が抱きしめようと手を伸ばしてくるのを見て、顔を青ざめさせている。


「ボスを倒すまで逃げられないぞ!」

 えっ、そんな設定だったかな? そう言えば、ここまでずっと隠し部屋のボスを討伐したような?


「ええぃ、やらなきゃ出れないなら、やるだけだぁ!」

 ジャスが炎の剣で拷問官人形を焼き払う。

 私もバリアを横に掛けて、ガチムチ達を切る。

 

 少し、空間ができたら、鋼鉄の処女軍団がやってくる。

フルメン! フルメン! フルメン!」

 脚が止まった所を、ルシウスとジャスがぶっ壊していく。


「油断するな!」

 白猫レオが機械騎士を召喚する。狭い部屋なので、機械馬は出せないみたい。


「ほほほ、私の愛の鞭を受けてごらん!」

 ぴしゅん! と鞭が空中でしなる。ピンクのハートが空中に舞う。

「げー! 拙い! ジャスが女王様の虜に!」

 すぐにルシウスがグーで殴って正気に戻した。

防御デーフェンスィオ!」を特にルシウスとジャスに二重掛けする。


「手前ぇ! 許さねぇぞ! 第一、俺の趣味じゃねぇし!」


 ジャスの罵り言葉に、女王様はお怒りだ。黒いオーラが禍々しい。

 壁の手枷、床の足枷が私達を拘束しようとする。それを機械騎士達が、叩き壊していく。


「おのれ! 私の僕達よ! 嬲っておやり!」

 げっ、女王様、召喚できるの? 出て来たのは、煌びやかなサーコートを着た騎士達だ。機械騎士じゃないけど……騎士人形?


 そいつら、女王様に鞭を貰うと身悶えて喜んでいる。このプレイ、見なきゃ駄目? でも、女王様の鞭を受けると赤いオーラが出て、一回り大きくなった。


「これの相手するの嫌だ!」

 まじ気持ち悪い! 

「嫌なら、さっさと討伐しろ!」

 白猫レオに叱られた。白猫レオも耳を後ろに伏せているから、嫌なんだね。


「俺は、女王様をやるから、変態騎士達は任せる!」

 ここには、星の海シュテルンメーアしかいない。髪の毛ザッパンでも、女王様とは一刻も早くお別れしたい。


女神様の裁きディヴァーインジャジメント!」

 嫌すぎて、魔力全部投入したよ! 


 稲妻が女王様を何度も何度も何度も貫き、討伐完了! 髪の毛は、伸びちゃったよ!


 魔力切れで、手が震えるけど、座り込んで、中級回復薬をなんとか飲む。


「アレク、やっちまったな!」

 ジャスに笑われたけど、無理だったんだ。

「髪の毛、切らなきゃ!」

 アイテムボックスから、ハサミを出して、バッサリ切ろうとしたら、白猫レオに止められた。


女神様クレマンティアの姿なのに!」

 えっ、仲悪かったじゃん! 


 私が、神様ガウデアムス女神様クレマンティアの確執について考えていると、ルシウスとジャスが呆然としている。


女神様クレマンティアって、そんな姿なんだ」

「田舎の教会の絵姿は、ボロけていたけど、似ていると言えば、似ているかも?」


 白猫レオが余計な事を言うから! と腹が立つ。


女神様クレマンティアは、もっとお美しいぞ! 私が似ているだなんて、不敬罪になる」


「まぁ、その通りだ! ガサツなアレクと女神様クレマンティアを似ていると思うなんて、精神的に疲れていたのだろう」


 白猫レオ、一度、もふもふの刑にしてやる!


「髪の毛が長いと、より多くの馬鹿が集まるから嫌なんだ!」


 キッパリと言い切って、髪の毛を切ろうとしたら、ジャスに取り上げられた。


「どうせ切るなら、ちゃんと切ろうぜ!」


 大男の癖に、器用にカットしていく。その上、切った髪の毛は紐で括ってくれた。

「クレアの髪をよく切らされたんだ」とポソッと呟いた。シスコン決定だな!


「おぃ、ドロップ品を鑑定してくれ!」

 現実主義のルシウスが一番立ち直りが早い。


 床には、魔石、鞭、手錠、足枷、首輪、ボンデージ衣装、煌びやかなサーコート、煌びやかな剣、煌びやかなブーツ、煌びやかな鎧が落ちていた。


「うん? この煌びやかシリーズ、装着すると攻撃力アップだってさ」

 ルシウスもジャスも「要らない!」と拒否! まぁ、あれを見たからね。後で落ち着いたら使うかも? 使わなければ、オークションに出したら良いだけだよ。


「えっ、手錠、足枷、首輪も値打ち物かも? 手錠を嵌めたら、ご主人様の言いなりだってさ! いらねぇ!」

 私は、要らないと思ったけど、ルシウスとジャスは違う考えだった。


「これ、盗賊を捕まえた時に便利だよなぁ。まぁ、基本は殺すけど、賞金首とか腐っていたらイチャモンつけられるからさぁ。これをつけて、連れて帰れば良いじゃん!」


「そうだよなぁ! 前に違う奴じゃないかと隊長にごねられたよなぁ。思い出しても、腹立つ! 夏場だから、腐るのは仕方ないだろ! でも、アレクがいれば腐らないんじゃないか?」


 ううん、アイテムボックスに入れて欲しいと言われても拒否しよう!


 これらは売るか保留! そして、近づくのも嫌な女王様のドロップ品。


 革のボンテージ、革の仮面、革のムチ、革のブーツ! 女王様の装備一式!


 それと、魔導書! 大きな赤い宝石?


「鑑定したくないけど……女王様の装備を付けると、防衛力、攻撃力アップ! ジャス、口を開く前に考えろよ!」


 私に装備しろなんて言ったら殺すぞ! と口を閉じさせた。


「鞭は、味方の攻撃力をアップさせるだってさ! 赤い宝石は……魅惑のルビー! 魅惑効果がある魔石だ」


 魔導書を注意深く、開かないように拾う。

「何だ?」とルシウスとジャスが興味津々だ。


「魅了!!」

「これは、封印だね!」と叫んだけど、ルシウスはオークションに掛けようと笑っている。


「この隠し部屋は二度と来ないよ!」

 それは、全員一致だ! 白猫レオも何故こんな物を作ったのか覚えていないそうだ。

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