第46話 十一階のセーフゾーンを目指すぞ

 やっと十一階の探索だ。蛇はどんどん大きなサイズになりアナコンダみたい。蝙蝠は顔が人間っぽくて嫌だなぁ。蜘蛛、普通に小型のアラクネが出てくるようになった。


 機械兵、機械騎士が団体で出てくるのは美味しい! それとシャンデリアが豪華になって、ドロップ品が多くなるのも嬉しい。


「ふぅ、十一階からそれまでのボスとか出てくるようになるんだね」


 ただ、隠し部屋よりは楽だと思う。


「十一階から地図を買っていないんだ。ただ、隠し部屋っぽいのはあるから、そこを目指そう!」


 ルシウスのケチが移ったから買わなかった訳じゃない。十一階からの地図の精度が落ちるから買わなかったんだよ。


「アレク、地図を売れば金になるぞ」

 ルシウスが提案するけど、パス!


「隠し部屋は書かなくて良いと思うが……あっ、ギルドマスターが苦手だからか?」


 ジャスは勘が良いね! これがガンツ・ギルド長なら金儲けになるから地図を作成して売っていたかも。


 ルシウスは難しい顔をしている。

「これって大問題だな。冒険者が金儲けになるのに、ギルドに協力したくない気持ちになるようなギルドマスター!」


「いや、面倒臭いとも思ったよ! 脳内地図マッパエムンディで正確なのがわかるから、地図を描く必要がないからな」


 ルシウスが心配しているので、ちょっと言い訳しておく。


 魔物達を討伐しながら、隠し部屋に進む。


「ここは、かなり大きな隠し部屋みたい」


 それに、扉はよくあるクルリンと回るタイプだった。


「なんだ、これは!」

 ここも未発見だったのか、大広間にぎっしりと貴族人形と貴婦人人形が沸いていた。


フルメン!」でかなり倒せたし、動きが止まったのをルシウスとジャスが無双していく。


 かなり減らしてから、白猫レオが機械兵を出して、機械人形達を殲滅していく。


 私達は、機械人形の奥に控えていた機械楽士達と戦うのだけど、音楽での攻撃に苦戦する。


「頭が痛い! アレク、どうにかしろ!」


 精神攻撃には「防御デーフェンスィオ」かな? 少しは激痛が弱まった。


フルメン」で動きを止めたら、頭痛でお怒りのルシウスとジャスが全滅させた。


「気をつけろ!」

 白猫レオに言われるまでもなく、指揮者がこちらを睨んでいる。


「あの指揮棒、注意だな!」

 ルシウスの警告どおり、指揮棒から風の刃がビュンビュン飛んでくる。バリアで防御しながら進むけど、上からはシャンデリアも攻撃してくるんだ。


「アレクはシャンデリア! 俺たちで指揮者をやる」


 矢でシャンデリアの金鎖を射ろうとしていると、指揮者が壁沿いに置いてあった椅子を操って体当たりさせる。


 ルシウスやジャスも椅子に阻まれて、なかなか指揮者に接近できない。


 バリアを強化して、なんとかシャンデリア四機を落とした。


 ルシウス達は、力技で椅子を粉砕して進んでいる。


「大地の盾で椅子を飛ばせ!」

 白猫レオの言葉で、ルシウスは盾を椅子に向け「大地の盾!」と叫ぶ。


 シールドバッシュが出て、椅子達は粉々になって飛び散った。


遮断ディスコンティ!」を掛けて、指揮者が怯んだ隙に、ジャスが「炎の剣!」で討伐した。


 かなり苦戦したと思ったのに、指揮者の後ろには、巨大なグランドピアノが!


「嘘だろう!」


 鍵盤を投げてくるのだけど、やはり当たると爆発する。それに精神攻撃もキツい。

防御デーフェンスィオ」と何重にも掛けて、やっと立っていれる状態なんだ。


「召喚!」騎馬騎士がグランドピアノに立ち向かう。

 その対応にグランドピアノが忙しそうな隙を狙って「遮断ディスコンティ!」を思いっきり叩き込んで、やっと討伐成功。


 機械兵達がドロップ品を拾っているけど、殆どは私のアイテムボックス行きだね。

 貴族人形達からは、絹の服やドレス、それに装飾品や懐中時計、何故か宝石のついたナイフも。

 宝飾品にジャスは鼻の下を伸ばしている。ルミエラちゃんにあげたいのだろう。


 楽士は、楽器が多くドロップした。それと、こちらも何故かナイフも! 物騒だよね。


 指揮者は、指揮棒と上級回復薬。


「この指揮棒、風の魔法が出るみたい」

 ビュン! と振ると風の刃が出る。


「それはアレクが持てば良いんじゃないか? 魔法使いは杖とか装備するんだろう?」


 そうなのかな? まぁ、貰っておこう! 不必要だと思ったら、ルシウスかジャスに譲っても良いし、オークションに掛けても良い。


 上級回復薬は、ジャス! これまで出たのは、私とルシウスが携帯していたからね。これで三人とも上級回復薬が持てた。


 グランドピアノのドロップ品、大きなオルゴールと魔導書! 


「魔導書かぁ!」

 ルシウスとジャスが喜んでいる。ただ、開かないように注意して何の魔法かと期待して見る。


「精神錯乱?」ヤバい奴だ!

 白猫レオが「我の得意分野だな」とニヤッと笑う。

 ちょっと皆で考えよう! と保留。


「楽器って需要あるの?」

 お城では、サーシャは王族とは近い部屋じゃなかったから、聞いた事がないよ。

「まぁ、金持ちは楽士を雇ったり、音楽会を開いたりすると聞いた事がある」


 つまり、庶民には無縁なのかな? と思ったけど、ジャスが滔々と花街の芸妓達は音楽を嗜むとか言い出した。


「ふぅん、それなら買い手がいるって事だ!」


 ギルドには隠し部屋の件は知られたくないので、何処か他の商会で売ることにする。


「カインズ商会ばかりだと、後々困るから、ゲイツ商会を当たってみよう! あそこは大手だから、楽器も扱っているかもな!」


 回復薬も少し持って行く事になった。これは、ルシウスに任せるよ。


 十一階の蝙蝠の顔が苦手だけど、ジャスの炎の剣に弱い。それに、剣だと近接戦闘しかできなかったけど、ルシウスの風の剣もなかなか良い感じ。


 私の疾風の矢も、地味に効果がある。私的には、あまり変わらないんじゃない? と思うけど、ルシウスとジャスには「疾風の矢」は凄いと言われたよ。


 なんとか、十二階の前の十一階のセーフゾーンに着いた。あれこれ、実験したいのだけど、冒険者が二組休んでいる。

 邪魔だな!

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