第45話 十階の隠し部屋は?

 十階の隠し部屋に戻るのって、何だか損している気分。


「さっさと攻略して、十一階に行こうぜ!」

 ジャスも同じ気持ちなのかな? 嫌だぁ、あの女好きの大男と同じだなんて。


「ほら、ぼんやりするな!」

 ルシウスに叱られて、床を這う蛇をバリアで一撃で倒す。機械兵がドロップ品を素早く拾う。なかなか便利だね!


「ここが隠し部屋なんだけど……壁は回らないね?」


 これまでは、壁がくるりんと回る隠し部屋が多かった。


「馬鹿者!」と白猫レオが私の頭から天井にジャンプする。


 すると、立っていた床が抜けた。


「落とし穴じゃん!」


 全員、身体強化持ちで良かったよ。落とし穴の底に着いたら、白猫レオが私の頭の上にフワッと着地した。

 荷物持ちの機械兵と機械騎士は、ガチャガチャと煩かったけど、何とか無事に着地した。


「彼方に行くみたいだぞ。暗いな……」


 こう言う時は「ライト!」だよね。


「おお、便利だな! 次は、暗闇ダンジョンにしようぜ」

「ジャスは、ピカピカの斧が使いたいだけじゃん!」


 そんな事を言いながら通路を進むと、大きな扉が現れた。


「これは……もしかして、あの鍵を使うのか?」


 前に隠し部屋の宝箱から出た鍵をアイテムボックスから出して、鍵穴に入れて回す。カチッと音がして、扉が開く。


「えっ、宝物庫じゃないのか……」

 ルシウスは期待していたみたい。私も、ちょこっと宝物じゃないかなって期待したよ。鍵とかさぁ、思わせぶりだよね。


「ぼんやりするな!」と白猫レオに叱られた。

 宝物庫ではなくて、武器庫だったんだ。

 壁に立てかけてあった槍がドンドン飛んでくるし、斧、剣、盾までも! その上に、勝手に弓が引かれて矢もビュンビュン飛んでくる。


「危ねぇなぁ!」

 ジャスは大剣で、打ち落としていく。


「誰がボスなんだ?」

 これまでも無機物の攻撃を受けていたけど、槍と斧や盾や剣や弓が意志を持っているとは思えない。


「召喚!」

 白猫レオが機械兵を何十体も召喚して、飛んでくる武器を叩き壊させる。


「馬鹿者! あの奥の司令官がボスだ!」

 かなり奥に機械騎士の上司っぽいのが椅子に座って指揮を取っている。


「うぇぇ、かなり遠いな! アレク、普通の隠し部屋程度だと言っていなかったか?」


 変だなぁ? 脳内地図マッパエムンディで調べても、そんなに長い隠し部屋ではないのだけど……?


「馬鹿者! あの司令官は空間魔法持ちだ! 捻じ曲げられているのだ」


 司令官を鑑定すると、確かに空間魔法を使えるみたいだ。


「空間魔法を使えるなら、マジックバッグがドロップするかも!」


 そこから、延々と飛んでくる槍や斧や矢をバリアで交わしながら、一歩ずつ前進していく。


 半分ぐらい近づいたと思った時、グワァンと空間が広がって、元の木阿弥! 元の位置に戻っている。


「気をつけろ!」

 白猫レオの叫び声と同時に、大きな鎌が天井から出てきた。振り子のように揺れる何本もの大鎌に、機械兵は全滅させられた。


「第二戦ってわけだ!」

 ジャスとルシウスが気合いを入れる。一回り大きくなった気がするよ。


「炎の剣と風の剣を試せ! アレクも疾風の矢だ!」


 天井から振り子のように揺れている大鎌をタイミングを測って避けながら、前に進む。


「炎の剣!」

 ジャスが叫びながら、司令官に大剣を打ち下ろす。司令官は、炎を嫌がって、指揮棒(バトン・クラウンステッキ)を振りかざす。


「ジャス!」

 私はバリアを張ったけど、グアン! とジャスはぶっ飛ばされてしまった。


「魔法攻撃に弱そうだ!」

 ルシウスは「風の剣!」と叫んで、剣を振りかざす。


 ビュッと風と共に剣が司令官を捉えたと思ったけど、またもや指揮棒(バトン・クラウンステッキ)に阻まれ、入り口まで飛ばされる。


 私も疾風の矢で攻撃してみたけど、指揮棒(バトン・クラウンステッキ)で、パンと弾かれてしまった。


「召喚!」

 白猫レオが機械馬と機械騎士を召喚すると、騎馬騎士で現れた。


 指揮棒バトン・クラウンステッキで阻んでも、騎馬騎士の波状攻撃に指揮官も慌てている。


「アレク、今だ!」

 白猫レオの言葉に応じて、「遮断ディスコンティ!」を掛ける。


 ぜぃぜぃ、やっと指揮官を討伐した。

「召喚!」機械兵を召喚して、槍、斧、剣、盾、大鎌、矢を拾わせる。


「指揮官のドロップ品は……指揮棒かぁ……」

 空間魔法を使うから、マジックバッグを期待しちゃったよ。


「鑑定! へぇ、この指揮棒(バトン・クラウンステッキ)は敵を遠くに飛ばす機能があるんだってさ」


 飛ばされたジャスとルシウスは、苦笑いしている。


「オークとか集団で襲ってくる魔物には有効だな!」


 二人は、魔導書で得た魔法が使えて満足そうだけど……魔法をあんなに大声で叫ばなくても良いんじゃないかな? まぁ、私も叫んでいるけど。すっごく大声だから、近くにいると耳が痛いよ。


「よく見ろ!」

 白猫レオに注意されて、脳内地図マッパエムンディを掛けると指揮官が座っていた椅子の下に何か空間がある。


「椅子を退けて、何か下にあるよ」

 重たそうな椅子をジャスが軽々と動かすと、そこには宝箱が!


「マジックバッグだと良いなぁ!」

 期待を込めて開けるけど、中にはまた鍵が……。このパターン、ちょっと嫌だ。


「今度こそ、宝物庫の鍵かもしれないぞ!」

 楽天的なジャスが羨ましいよ。


 十階をクリアして、十一階のセーフゾーンを目指す。

 隠し部屋でドロップした槍、剣、斧、盾、弓矢は、かなり良い品だった。


「初心者なら十分すぎる武器だ。暗闇ダンジョンのスケルトンが落とす剣より上等だぜ!」


 これは、魔導具の機械兵達に運ばせたら、何処でドロップしたのかと聞かれそうなので、私のアイテムボックス行きだ。


 通常の十階で、ドロップした物を籠に入れて運ばせる。


 やっと十階の転移陣に戻った。十階の隠し部屋は再度行く気にならないから、転移陣は置いて来なかったよ。


 十一階に良い物がドロップする隠し部屋があると良いんだけどね。

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