第29話 迷宮ダンジョン一階 3
「ええっと……この猫をテイムしたんだ」
怪訝な顔の二人に、そう説明する。
「テイム? なんだ、それは!」
ジャスが騒ぐけど、ルシウスは冷静に荷物持ちにドロップ品を拾わせる。
ぎっしりと身動きが出来ないほど沸いていた機械兵と機械騎士のドロップ品が床に転がっているからね。
「スレイプニルも魔物の一種だし、テイマーも昔はいたって聞いた事がある。ホラ話だと思っていたけどな。ただ、その猫は何の役に立つのだ?」
「クレアの前でスレイプニルを魔物なんて言ったら殺されるぞ!」とジャスが騒いでいるけど、二人で無視する。ジャスってシスコンだよね。
ルシウスは、可愛いからテイムするってのは、駄目みたい。現実主義者だから。
「ううんと、何ができるんだろう。鑑定してみるよ!」
白猫を抱き上げて、鑑定を掛ける。
「聖猫(ガウデアムス)レベル1……召喚……召喚できるって何が?」
金色の目を見ても、素知らぬ顔だ。
「役に立たないなら、ここに置いて行こうかな?」
「
ふぅ、最初から素直に従ったら良いのに。手間が掛かる。
「まだレベルが低いから、機械兵しか召喚できないみたい」
「
ルシウスが驚いているけど、本当は
「さぁ、聖獣とバレたら面倒だから、白猫で良いんじゃない?」
あのギルドマスターが煩そうだし、教会関係も煩わしい。
「
機械兵と機械騎士のドロップ品は、それぞれの部品だった。組み立てたら、機械兵や機械騎士になるのかも? だったら、白猫の召喚はいらないんじゃないの?
「
「それなら、次の戦闘で頑張って貰おうかな」
王座の裏の部屋に戻ったら、蜘蛛が復活しているじゃん!
「ギャァァ!」
「腹立つ! 性格悪すぎだ!」
でも、どの程度役に立つのかは調べておきたい。
「謁見の間には、巨大ねずみと巨大猫が出る。それに天井からはシャンデリア、壁からは蝋燭が攻撃してくる。白猫、やってみろ!」
「
偉そうに尻尾をピンと立てて、謁見の間に歩いて行く。
うっ、見た目は可愛い! 駄目駄目、中身は糞
でも、見た目が可憐で、ちょっと大丈夫かなと心配になる。無理だったら、すぐに魔法で攻撃しよう! と思っていたのだけど、呆れた。
「
数十体の機械兵が現れて、巨大ねずみ、巨大猫を討伐する。シャンデリアや蝋燭の攻撃もへともしない。槍を投げて討伐完了。
「おお、凄いじゃないか!」
「やるなぁ!」
ルシウスとジャスが褒めるのは良いけど、私の腕の中で寝てしまっている。
「鑑定! ……魔力切れ! あれっ、レベル2になっている」
寝ていると可愛い白猫なんだけど、正体を知っているからなぁ。でも、ふわふわの毛玉をカバンに入れて運ぼう。
「なぁ、今日はこのくらいにしないか? 何だか凄く疲れたんだ」
ジャス、勘が鋭いね。私も
「それに、機械兵と機械騎士のドロップ品で、籠が満杯だ。昼飯を食べに外に出よう」
あと、この
とは言え、廊下の蝋燭や大広間のシャンデリアは討伐するけどね。ねずみや猫は、ルシウスとジャスに任せる。
迷宮ダンジョンから出たけど、ちょっと待って欲しいんだ。
「宿で部屋を借りたい!」
ダンジョンの側には宿屋がある。凄く不思議だけど、休憩できるようになっているのかな? それか怪我をした時の為なのか?
「良いけど、高いぞ……何をするのだ? 飯なら、そこら辺で食べられるだろう」
「良いから、借りて!」
一部屋借りて、荷物持ちの籠から、魔導灯の材料をピックアップしていく。
「ルシウスとジャスもこれらの材料を見つけたら机の上に置いてよ」
魔導灯の設計図は
パーツがあれば、それを組み立てたら良いだけだ。フィギュアを組み立てるの趣味だったから、ペンチやねじ回しを買って持ってきたんだ。
「よし、魔石を入れて点けてみよう!」
簡単な魔導灯だけど、ちゃんと点く。
「おお、凄いな! これって魔導灯だろう!」
ルシウスの頭の中は、金の勘定で忙しそうだ。
ジャスは、何個か魔導灯は出来そうだけど、残りの材料をどうするのか考え中みたい。
三人で、肉詰めパンを食べながら、迷宮ダンジョンのドロップ品について話し合う。
「隠し部屋でドロップしたのを組み立てたら、機械兵や機械騎士になると思う。ただ、まだパーツが全部は集まっていないかも」
ルシウスは、この部屋を倉庫代わりに借りる事にした。
「迷宮ダンジョンを潜る間は、ここに材料を溜めて、製品にしてから売ろう!」
「そっちの方が高く売れそうだ!」
その日は、魔導灯を三個作った。半端な材料がいっぱいあるけど、明日、また集まれば良いよね。
機械兵は、パーツも多いし、組み立てもちょっと難しそうだから、もう少し後だね。
魔導灯は、ルシウスがギルドに売ってくれる事になった。もっと出来たら、私も一つ欲しいな。蝋燭で本を読むと目が疲れるんだ。
◇
「あっ、猫大丈夫かな?」
部屋に入れてはいけないかも? ペット持ち込み禁止だと困るな。
「女将さんに頼んだら良いさ。アレクは可愛がられているから、きっと大丈夫だろう」
可愛がられているの? まぁ、中庭で回復薬を作ったりさせて貰っているけど。
「顔が良いのは得だよなぁ!」
馬鹿な冒険者に絡まれてばかりだから、得だとは思わないけど……。
「それで、名前は何にするんだ?」
ジャスに聞かれて困る。
「ええっと……ガウちゃん?」
寝ていた白猫がカバンの中から顔を出して「
「レオは?」とお伺いを掛けると「
「レオ……」思わずぎゅっと抱きしめてしまった。子どもの頃、飼っていた猫の名前なんだ。
「
◇
「まぁ、まぁ、可愛い子猫ちゃん! 部屋で粗相をしないように気をつけてくれれば、良いですよ」
金熊亭の女将さんが部屋に入れてくれなかったら、隠し部屋に置いてくると脅したから、凄く可愛く『ニャン!』と鳴いている。あざとい!
「食べ物は何が良いのかしら? ミルク? それとも肉?」
あっ、全く考えていなかったよ。
「何を食べるのかな?」と白猫に聞いてみる。
「
そうか神様だもんね。でも、ミルクを皿に入れて貰ったよ。猫がミルクを飲むのを見るのが好きだから!
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