第22話 食物ダンジョン十階を目指そう! 2
九階は、草原だった。少し木が生えている程度。トレントとヴリシャーカピには、うんざりしていたから、ちょっとホッとした。
草原で草を喰む牛、長閑な風景だなぁ……そんな訳ないじゃん!
「ブォォォモォ!」
ビッグカウが暴走してくる。そして、その後ろからファイヤーウルフの群が!
「ヤバいな!」
ジャスも初めてみたいだ。
「先ずは、ビッグカウの暴走を止めるぞ! アレク、ファイヤーウルフのボスをやってくれ!」
ファイヤーウルフのボス、他のより大きくて赤く燃えているみたいに見える。
「
他のファイヤーウルフも「
ジャスは大剣で、ビッグカウの脳天に斬りつけ、ルシウスは剣で首を斬り落としている。
私は「バリア!」で魔力を節約しながら、討伐する。
「なぁ、ビッグカウってメスな筈だろう? 何故、角があるんだ?」
私の疑問に、ルシウスもジャスも肩を竦めるだけだ。
ドロップ品は、本当にミルク缶と肉とチーズだった。ミルク缶は、前世のコンビニのマークに似ている。
「チーズは少し取っておこうよ!」
酒のアテになりそうだから、ジャスとルシウスも賛成する。
ミルクの缶、結構、重そうだ。こんなのジルとかだと無理だよね。
◇
十階は、ビッグベアが多かったけど、それは問題じゃない。力技なら、ジャスとルシウスに任せておける。
キノコが地味に足を引っ張る。仲間を呼ぶ前に倒さないと、魔法を使うしかなくなるのが嫌だ。だって、十階の転移陣前には、ボス戦があるんだもん。
魔力回復薬、マジで作らなきゃ! でも、
「なぁ、ルシウスやジャスはボス戦やったんだろう? 何だった?」
二人は、肩を竦める。
「かなり前だったし、毎回変わるからなぁ」
「そんなに大した魔物は出ないさ」
確かに、三人だったら大丈夫かもね! でも、ボス戦でルシウスが壊れちゃったんだよ。
「なんで、ここでゴールデンベアが出てくるんだ! 食物ダンジョンにゴールデンベアが出るなんて聞いたことが無いぞ!」
ビッグベア十頭は楽勝だったのに、ボスのゴールデンベアを見て、ルシウスが叫び狂った。
「俺は、これまでゴールデンベアに遭遇したことがないんだ。初めてなのに……食物ダンジョンだから、黄金の毛皮はドロップしないなんて……酷い!」
ルシウスは、ガックリと地面に座り込んでいる。
「壊れたルシウスはほっておこう!」
私とジャスでゴールデンベアを討伐しようと決めたけど、ムクッと立ち上がったルシウスがヤケ糞攻撃をして倒した。
「黄金の毛皮、来い!!」と叫んでいたけど、ここは食物ダンジョン!
特大のハチミツの瓶が、ズドンとドロップした。
私とジャスで、ルシウスを立ち上がらせて、転移陣で地上に戻る。
ルシウスは、魂が抜けたみたいに「黄金の毛皮……」と呟いているから、アテにできない。
私とジャスで商人と遣り取りする。
「なぁ、どれと、どれを取って置くんだっけ? 林檎とオレンジはギルドだよな? チーズは食べよう! 香料は、ルミエラちゃんにプレゼント! あっ、ロイヤルゼリーも一瓶分けてくれないか?」
ジャスの色ボケにルシウスが正気に戻った。ボスン! と頭を殴って、テキパキと売る物と取っておく物を分ける。
「ほら、香料だ!」ジャスに香料の瓶を一つ投げてやっているけどね。レンタルしていた斧も返したり、テキパキと処理していく。
「残りの清算は、ギルドに回してくれ!」
前半の清算を済ませて、馬車で
「おぃ、エールを飲もうぜ!」
相変わらずジャスは、清算はルシウスに任せっきりだ。まぁ、私もだけどね。
「なぁ、明日は休みにしようよ」
ジャスの下心はあからさまだよ。
でも、それも良いかもね! いや、花街へ繰り出すのじゃなく、休む方だよ。
「ほら、今日の取り分だ。後半のは、ギルドに回して貰ったから、明日以降に受け取ってくれ」
二十
「ルシウス、俺はロイヤルゼリーを貰ったから、減らしてくれ」
ロイヤルゼリー、あれは高価なんだよね。
「そんなの一々計算できるかよ!」
ジャスが吠える。
「その通りだ! それにキラービーの巣はアレクが一人で討伐したんだろう」
「でも、トレントは殆ど二人でやったし……わかった! 薬を売った代金も三等分しよう!」
誰がどの魔物を討伐したのかとか計算するのは無理だ。だから、これが公平だと思ったんだけど、二人に笑われた。
「薬師の仕事と依頼やダンジョン活動の時とは違う。それは、アレクだけの収入だ」
むぅぅ、納得できないけど、言わんとする意味もわかる。
「それなら、下級回復薬や中級回復薬をあげる!」
それは二人も喜んで受け取ってくれる事になった。買うと高いからね!
エールを飲んで、金熊亭に帰る。トレントからドロップしたレア肉を焼いて貰わなきゃね!
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