第22話 食物ダンジョン十階を目指そう! 2

 九階は、草原だった。少し木が生えている程度。トレントとヴリシャーカピには、うんざりしていたから、ちょっとホッとした。

 

 草原で草を喰む牛、長閑な風景だなぁ……そんな訳ないじゃん! 


「ブォォォモォ!」

 ビッグカウが暴走してくる。そして、その後ろからファイヤーウルフの群が!


「ヤバいな!」

 ジャスも初めてみたいだ。


「先ずは、ビッグカウの暴走を止めるぞ! アレク、ファイヤーウルフのボスをやってくれ!」


 ファイヤーウルフのボス、他のより大きくて赤く燃えているみたいに見える。


遮断ディスコンティ!」で一撃に仕留める。


 他のファイヤーウルフも「フルメン!」で討伐する。後ろから、ファイヤーウルフが追いかけて来ていたら、ビッグカウの暴走が止まらないからね。


 ジャスは大剣で、ビッグカウの脳天に斬りつけ、ルシウスは剣で首を斬り落としている。


 私は「バリア!」で魔力を節約しながら、討伐する。


「なぁ、ビッグカウってメスな筈だろう? 何故、角があるんだ?」

 私の疑問に、ルシウスもジャスも肩を竦めるだけだ。

 ドロップ品は、本当にミルク缶と肉とチーズだった。ミルク缶は、前世のコンビニのマークに似ている。


「チーズは少し取っておこうよ!」

 酒のアテになりそうだから、ジャスとルシウスも賛成する。


 ミルクの缶、結構、重そうだ。こんなのジルとかだと無理だよね。



 十階は、ビッグベアが多かったけど、それは問題じゃない。力技なら、ジャスとルシウスに任せておける。


 キノコが地味に足を引っ張る。仲間を呼ぶ前に倒さないと、魔法を使うしかなくなるのが嫌だ。だって、十階の転移陣前には、ボス戦があるんだもん。


 魔力回復薬、マジで作らなきゃ! でも、女神様クレマンティア神様ガウデアムスの知識で、まだ見つけていないんだよね。


「なぁ、ルシウスやジャスはボス戦やったんだろう? 何だった?」


 二人は、肩を竦める。

「かなり前だったし、毎回変わるからなぁ」

「そんなに大した魔物は出ないさ」

 

 確かに、三人だったら大丈夫かもね! でも、ボス戦でルシウスが壊れちゃったんだよ。


「なんで、ここでゴールデンベアが出てくるんだ! 食物ダンジョンにゴールデンベアが出るなんて聞いたことが無いぞ!」


 ビッグベア十頭は楽勝だったのに、ボスのゴールデンベアを見て、ルシウスが叫び狂った。


「俺は、これまでゴールデンベアに遭遇したことがないんだ。初めてなのに……食物ダンジョンだから、黄金の毛皮はドロップしないなんて……酷い!」


 ルシウスは、ガックリと地面に座り込んでいる。


「壊れたルシウスはほっておこう!」

 

 私とジャスでゴールデンベアを討伐しようと決めたけど、ムクッと立ち上がったルシウスがヤケ糞攻撃をして倒した。


「黄金の毛皮、来い!!」と叫んでいたけど、ここは食物ダンジョン! 

 特大のハチミツの瓶が、ズドンとドロップした。


 私とジャスで、ルシウスを立ち上がらせて、転移陣で地上に戻る。


 ルシウスは、魂が抜けたみたいに「黄金の毛皮……」と呟いているから、アテにできない。

 私とジャスで商人と遣り取りする。


「なぁ、どれと、どれを取って置くんだっけ? 林檎とオレンジはギルドだよな? チーズは食べよう! 香料は、ルミエラちゃんにプレゼント! あっ、ロイヤルゼリーも一瓶分けてくれないか?」


 ジャスの色ボケにルシウスが正気に戻った。ボスン! と頭を殴って、テキパキと売る物と取っておく物を分ける。


「ほら、香料だ!」ジャスに香料の瓶を一つ投げてやっているけどね。レンタルしていた斧も返したり、テキパキと処理していく。


「残りの清算は、ギルドに回してくれ!」


 前半の清算を済ませて、馬車で防衛都市カストラに戻る。荷物持ちは、ギルドに納める林檎とオレンジ、そして高価買取りのトリュフや香料などを背負ったままだ。


「おぃ、エールを飲もうぜ!」

 相変わらずジャスは、清算はルシウスに任せっきりだ。まぁ、私もだけどね。


「なぁ、明日は休みにしようよ」

 ジャスの下心はあからさまだよ。

 でも、それも良いかもね! いや、花街へ繰り出すのじゃなく、休む方だよ。


「ほら、今日の取り分だ。後半のは、ギルドに回して貰ったから、明日以降に受け取ってくれ」


 二十金貨ゴルディずつ配られた。


「ルシウス、俺はロイヤルゼリーを貰ったから、減らしてくれ」


 ロイヤルゼリー、あれは高価なんだよね。


「そんなの一々計算できるかよ!」

 ジャスが吠える。


「その通りだ! それにキラービーの巣はアレクが一人で討伐したんだろう」


「でも、トレントは殆ど二人でやったし……わかった! 薬を売った代金も三等分しよう!」


 誰がどの魔物を討伐したのかとか計算するのは無理だ。だから、これが公平だと思ったんだけど、二人に笑われた。


「薬師の仕事と依頼やダンジョン活動の時とは違う。それは、アレクだけの収入だ」


 むぅぅ、納得できないけど、言わんとする意味もわかる。


「それなら、下級回復薬や中級回復薬をあげる!」


 それは二人も喜んで受け取ってくれる事になった。買うと高いからね!


 エールを飲んで、金熊亭に帰る。トレントからドロップしたレア肉を焼いて貰わなきゃね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る