第60話 銀級になったよ!
やっとギルドマスター室から解放されたと思ったのに、後ろからついて来るんだけど?
階段の途中で、ギルドマスターが「アレクは銀級に昇級した!」と大声で告げた。
「電撃のアレクが銀級か!」とか「危ねえ魔物を召喚する奴だからな!」とか、前の
「なぁ、これって公表する物なの?」
ルシウスに聞くと、苦笑いしている。
「銀級や金級に昇級したら、告知するけど……まぁ、普通は掲示板に書いて終わりだな」
うっ、やはりギルドマスターは苦手だよ。
「そんなに不機嫌な顔をするな。銀級になるのは、冒険者にとって夢なんだよ! 殆どが銅級に昇級するので精一杯なんだからな」
あれっ、ジャスは? と思って見たら、酒場で女給さんと仲良くしている。ムッ、女好きめ! と思ったけど、違った!
「アレクの銀級昇級を皆で祝ってくれ! エールを奢るぜ!」
ギルドが揺れるような歓声が上がった。
女給さん達がエールのジョッキをお盆に十杯以上持って配っていく。重たそう、よく待てるよね! ちょっと受付のお姉ちゃん達よりゴツイなんて思って悪かったな。
私もエールを受け取ると「「乾杯!」」とルシウスとジャスが叫ぶ。他の冒険者達も「「「アレク、おめでとう」」」と乾杯してくれた。
かなり嬉しい! 奢りのエールで祝福してくれているのだろうけど、少し冒険者の仲間になった気がするよ。今度、ルシウスとジャスが金級になったら、私が乾杯の手配をしてやろう!
きっと、もうすぐなれるんじゃないかな? いや、難しいのかな? そんなの後で考えよう!
「ジャス、ありがとう!」とお礼を言うと、ガハハハと笑う。
「これで、少しは馬鹿な冒険者がアレクに絡まなくなれば良いな!」
あっ、そう言う意味もあるんだな。ジャスめ! 嬉しいじゃんか!
「まぁ、銀級に絡むのは命知らずだけだがな!」
へへへ、銀級に昇級した嬉しさが爆発しそう! もう馬鹿な冒険者に絡まれないと良いな!
それから、三人でエールを飲み直す。乾杯は、一気飲みしたからね。
すぐに女給さんに持って来て貰ったよ。
少し早いけど、何となく食べたい気分になって、ビッグボアのステーキを皆でもりもり食べる。
エールもお代わりする! お腹いっぱいだ!
エールで少し酔いが回ると、景気の良い話になる。
「なぁ、サンドウォームの皮なら幾らぐらいで落札できるかな?」
おおっと、ルシウスはもうオークションに気持ちが飛んでいるみたい。
「あれって、何かに使えるのか?」
ジャスがそもそもオークションに掛けられる価値があるのかと疑問視する。
「伸縮性に優れているから、高級なベッドマットの材料になるって護衛依頼の時に聞いたような?」
ふうん、高いのかも? そこから、三人で幾らぐらいギルドに預けている金を引き下ろして、オークションに参加するか頭を引っ付けて話し合う。
「サンドウォームの皮なら、三百
ジャス、それって良い加減な事を言っているだけじゃん。
「これまでの落札価格を調べる方法があれば良いんだが……オークションだから、高い時と安い時がありそうだよな」
ルシウスは安かったら良いなと
「オークションだから、それは当たり前だけど、市場価格とか無いのかな? 誰か商人に聞けば良いんじゃないの?」
ルシウスとジャスがニヤリと笑う。
「この後、カインズ商会に魔導灯を売りに行くんだよな!」
「へへへ、サンドウォームの価格を聞こうぜ!」
三人でムフフフと笑っていると、
「
ミルクを飲み終えた
「サンドウォームで作れるマジックバッグは、今持っているのと同じ容量で小なんだ。ベビーモスのだと、中! グラビデドラゴンのだと、大が作れる!」
ルシウスとジャスの顔が真剣になる。
「つまり、ベビーモス、グラビデドラゴンの皮がオークションに出たら、手に入れた方が良いって事だよな!」
ただ、グラビデドラゴンなんて、上級者用ダンジョンの最奥にいる魔物で、そうそうにオークションに掛けられない。
今夜出品されるかどうかも分からないよ!
「ベビーモスの皮なら、出品されるかもよ?」
ジャスの発言で、方針が決まった。
「サンドウォームの皮が出品されたら、絶対に落とす。それに、ベビーモスの皮がもし出品されたら……幾らぐらいになるかは分からないが、とにかく札をあげようぜ」
「ええっと、それはそうとして、ベビーモスの皮の価格も、カインズ商会で聞いておいた方が良いんじゃない?」
三人で、まるで落札できたように笑う。エール、三杯で酔ったわけじゃないよね。
銀級になって浮かれていたんだ! もう、オークションでサンドウォームとベビーモスの皮が落札できた気分だよ。
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