第61話 クラン立ち上げ資金を貯めよう

 私とジャスは浮かれていい気分だったけど、ルシウスは現実主義者だ。


「なぁ、ジャス幾ら貯めているんだ?」

「さぁな、かなり貯めてはいるさ」

 その態度、金に疎い私でも、怪しいと思うよ。花街でも、ルミエラちゃんは高い妓楼にいるって噂だもん。


 そこから、ルシウスがジャスに幾ら貯めているのかとしつこく質問するけど、のらりくらりと誤魔化して答えない。

「ジャス、クランを作る為に貯金をしろと言っておいたのに! まさか全部、ルミエラに貢いでいるんじゃあるまいな!」

 ジャスは慌てて否定しているけど、これは怪しい! でも、ルミエラを落籍する為に、お金は貯めていそうだよね。クラン設立の為の分があるかは、知らないけどさ。

 雰囲気悪い! 話題を変えよう!


「そうだ! クランって何だろう。いや、クランは知っているけど、詳しくは無いからさぁ」

 ギルドの規則にクラン設立条件は書いてある。

 金級じゃないと、クランは設立できない! 

 クランは本拠地を登録する事。

 クランメンバーをギルドに報告する。 クランについては、これだけだもんね!


「パーティとの違いは、まずクランは人数が多いって事だな。それと、本拠地を構えて、同じ依頼を受ける場合もあるが、能力別のチームを組んで別行動をしたりもする。言ってみたら、小さな冒険者ギルドだ」

 ふうん、分かったような、分からないようなルシウスの説明だよ。


「今回のオークダンジョン探索とか『月の雫』がクランだから受けられたのさ。あそこは、金級はバッカスだけだし、銀級は、二人か三人だったかな? 銅級が多い感じで、あまり強いクランではないが、大きな依頼を受ける為の人数はいる」

 つまり、何個ものパーティに依頼を出すより、一つのクランに出した方が楽って感じなのかな? ジャスの説明でちょっと理解できたよ。


「でも『草原の風』も参加しているじゃん!」

 ルシウスとジャスが説明し難いって顔になる。

「『草原の風』は、ちょっと特殊なパーティだからな。探索に特化したメンバー構成で、他のパーティと協力する事が多い。今も、『金の剣』と上級ダンジョンに潜っているメンバーもいると思うぜ!」

 ジャスは『金の剣』と上級者用ダンジョンに潜りたいのかな? 少し羨ましそうな口調だ。いや、そうじゃない。上級者用ダンジョンに潜る実力が欲しいんだ!


「クランを作るには、金級が必須条件だから、パーティのままだけど、人数は十人を超えているんじゃないのかな? 定宿に行けば、メンバーの誰かがいるって感じみたいだから、半クランとも言えるな。ただ、クランみたいな纏まりはないが……」


 ルシウスは、どんなクランを作りたいのだろう?

『草原の風』の説明は、護衛依頼の時に、ルシアが言っていた内容に似ている。一緒にダンジョンに潜ろうと誘われたんだ。パーティと言うより、緩い規則がある技能集団って感じだね。


「ジャスとアレクにはクラン設立メンバーになって欲しいと前に言ったよな。アレクも銀級になったから、言っておくけど、一万金貨ゴルディを貯めるのを目標にしてくれ」

 

 ジャスと私がギルドに貯めている金額を思い出して「「無理だ!」」と騒ぐ。

 ルシウスが笑いながら「俺は二倍貯めるつもりだ!」と言うので、無理だと騒いでばかりではいられない。


「これからは、じゃんじゃんダンジョンに潜って儲けようぜ! それと、アレクのマジックバッグ作りに投資する!」

 うん? 意味不明だよ。でも、ジャスはピンときたみたい。


「そりゃ良いな! 俺も全財産を投資するぜ!」

 分かっていない私にルシウスが説明する。

「材料は俺とジャスで用意する。それで、アレクがマジックバッグを作って、オークションに掛けたら、三等分だ!」

「えっ、それって……私は作るだけじゃん。それで良いの?」

 ジャスが爆笑する。

「アレク、お前が作らなきゃ無理な計画なんだぞ。ルシウスに騙されるなよ!」


「うん? そうかも! 材料を買うのは手伝って貰うけど、二人だけに買わせるのは良くない。俺も出すよ! それで売った代金の取り分を決めよう」

 そこから、取らぬ狸の皮算用みたいな話になった。


「マジックバッグ中ができたら、どうする? それは置いときたいよね!」

 ルシウスとジャスも頷いている。

「その時は、マジックバッグ小をオークションに出すの?」

 二人は腕を組んで考えている。

「いや、二つある方が良い!」とルシウス。

「売れば金になるぜ!」とジャス。二人が睨み合う。


馬鹿者ニャニャニャン!」と白猫レオに笑われて、三人で笑う。


「兎に角、取り分はよく考えて決めようぜ! それより、幾ら持って行くか決めなきゃな!」

 

「私は前からアイテムボックスに入れておけば良いと思っていたので、全額引き出すよ!」


 ルシウスはマジックバッグ、ジャスはマジックポーチを持っているから、全額引き出すと思っていたのに、一部は残しておくみたい。変なの? 


アイテムボックスと違うニャニャニャニャニャン!」


 あっそうか! アイテムボックスは盗まれたりしないけど、マジックバッグ、マジックポーチは盗まれたらお終いだもんね。


 丁度、精算も終わったみたい。何と、一人百金貨ゴルディになった。それに、宝石のついたナイフ、宝飾品、宝石はオークション行きだ。今夜のは間に合わないけどね。


 それと、銀級の証を貰ったよ! 銅級の証は、返却した。

「えっ、お金を取るの?」

 それも、銀級は一銀貨クラン! 払うけどさぁ。

「前に銅級に昇級した時は、お金はいらなかったのに……」

 ぶつぶつ文句を言ったら、ルシウスに笑われた。

「多分、銅級はギルド長の奢りだったのさ。あれこれ、アレクはやらかしていたからな」

 うっ、思い当たる事が一杯だ!


「預けている金を全額引き出します」

 幾らになるかな? 手元には、回復薬をカインズ商会に売った金が三百金貨ゴルディぐらいあるんだ。

 

「あのう、大金貨グランディスで宜しいでしょうか?」

 大金貨グランディスって何? サーシャは銀貨クランも滅多に目にする事がなかったよ。

 えっ、もしかしてあの箱に入っていたのって大金貨グランディスだったのかな? まさかね!


大金貨グランディスは、金貨ゴルディ百枚ですよ」

 うっ、恥ずかしい! 貧乏人丸出しだよ。

「知らない奴の方が多いぜ!」とジャスが笑い飛ばしてくれた。

 金袋に全財産! 後は、ルシウスとジャスに代わるよ。

 どれだけ引き出すのか、興味はあるけどね。


 私のは、アイテムボックスに入れて確認した。

「えええ!」と手で口を押さえた。思っていないほど貯まっていたんだ。

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