第三章 防衛都市

第1話 防衛都市ってカオスだ

 カインズ商隊の護衛は、ここでお終いだ。荷馬車は、カインズ商会の防衛都市カストラ店で荷下ろしをしている。


「ご苦労様だった! 後は、冒険者ギルドで精算しよう」


 グレアムさんとアリシア町の町長の息子と一緒に、ぞろぞろと冒険者ギルドに向かう。


 防衛都市カストラには、人が溢れていた。道には、屋台が並び、魔物の肉を焼いている。

 そして、これまで見た以上の子ども達! 交易都市エンボリウムにも子どもはいたけど、街中をこんなに屯ろしていなかった。

 それに、何だか目つきが鋭い子も多い。


「アレク、金をすられない様にしろよ! ここでは、ぼんやりしている奴が悪いのさ」


 治安が悪そう! でも、この子どもたちの親は?


「冒険者の子も多いが……まぁ、花街も大きいからな!」


 ううう……それって……!


「子ども達を教会は保護しないのか?」


 二人は肩を竦める。そうだ! 北の大陸でも親を亡くした子ども達の全てが教会に保護された訳じゃない。

 サーシャは、あのクズ聖王が一応は雀の涙程度の寄付をして修道院に引き取られたのだ。あそこにいた他の子も、貴族の庶子とか邪魔な子だった。


 サーシャだったら、この子ども達を保護したのだろうか? 愛し子としてならできるのか? いや、この南の大陸では無理だろう。それに、女神様クレマンティアに言わせると、聖皇はクソだそうだから、無いな。


 そんな事を考えながら歩く。何回か、ぼんやりしていると思われたのか、ぶつかって財布をすられかけたが、アイテムボックスに入れているから無事だった。


 ルシウスやジャスには、子ども達もぶつかったりしない。

「アレク、馬鹿にされているな!」

 ジャスに笑われた。それは、見た目がゴツイ大男じゃないからだよ。

 

「デカい!」

 交易都市エンボリウムの冒険者ギルドも北の大陸より大きかったけど、防衛都市カストラのは、本当にデカかった。

 まぁ、サーシャの修道院がある田舎町の冒険者ギルドがショボかったんだ。


 中には、ゴツイ冒険者達がウヨウヨしていた。汗臭いし、血の匂いが染み込んだ鎧の独特な匂いだ。


浄化ピュリフィケーション!」と思わず掛けたよ。臭いのは御免なんだ。自分達も悪臭を発してただろうけど、もう大丈夫。


 冒険者ギルドに着いて、中には子どもがいなくてホッとしたけど、これから代金を貰わないといけないんだ。


 それは、金をより多く貰おうと張り切っているリーダーのルシウスに任せて、私とジャスは冒険者ギルドでぬるいエールを飲んでいる。

 クレージーホースのメンバーは、リーダーのクレア以外は、愛しいスレイプニルの面倒を見ているみたいだし、草原の風は、リーダー以外は他のメンバーと再会を喜んでいるようだ。


「結構、高額になりそうだよなぁ」

 ジャスは、その金を持って可愛いお姉ちゃんに会いに行きたいのだろう。

 これが無ければ、私の能力について打ち明けられるのかもしれない。


 前は、転移を使ってダンジョンを制覇するとか、ちょこっと考えていたんだ。

 それと、ある程度の金を稼いだら、薬師として食べていくとかさ。

 

 こちらの世界を舐めていた。魔物、マジ強い! 交易都市エンボリウムの近くの魔物ならなんとかなったかもしれないけどさ。


 それと、仲間がいるのって、やはり心強い。人間は群れる動物なんだよね。

 ルシウスは、金にガメついのが難点だけど、クランを作るって夢は良いと思う。

 それに、私が参加するのか、いやできるのかは分からないけどね。


 銀級、女神様クレマンティア憑きならなれると思うけど、それは御免だ。愛し子だと教会に目をつけられるのも困るから、自分の力だけで銀級にならなきゃね。

 まぁ、自分の力と言ってもかなり女神様クレマンティアから優遇して貰っているけどさ。


「長いなぁ! 宿を取って、風呂に入りたいんだが……」

 それは、私も同感だ。


「なぁ、部屋に風呂がある宿って無いのか?」

 共同風呂は、ちょっと無理だからね。期待しているんだ。

 ジャスが、ガハハと笑う。


「あるさ! 交易都市エンボリウムにもあったが、高いぞ! まぁ、防衛都市カストラの方が宿代も安い。風呂付きの部屋は、金貨ゴルディ二枚はいるぞ」

  

 高いけど、海亀亭トゥラトゥラだって金貨ゴルディ一枚したよね? 


交易都市エンボリウムの物価は高いのさ。だから、冒険者達も暮らしやすい防衛都市カストラを目指すのだが……ここは、魔物が強い」


 それは、バシバシ感じるよ。防衛都市カストラに近づくにつれて、魔物が強くなっているからね。


「言っておくけど、ダンジョンも深くなる程、魔物は強くなるぞ。それに、アレクは一階から始めなきゃいけないからなぁ」


 それは、本当に厄介なんだ。神様ガウデアムスのダンジョンの攻略本っぽいのを、毎晩、少しずつ読んでいるんだけど、ここのダンジョンには、何階かずつに転移陣があるみたい。

 ただ、一度、行かなきゃ、そこに行けないんだよ。


「おっ、そろそろ終わったみたいだ……ありゃりゃ、ギルドマスターが出てきたぞ。オークジェネラルの件とダンジョンが湧いた件だな。先に、宿に行こうかな?」


 こちらのギルドマスター、身体もゴツイし、強そうなオーラを纏っている。


「でも、ルシウスをほって行っても良いのか?」


 ジャスは、防衛都市カストラの中の何軒かの宿に泊まるから、大丈夫だと笑う。


「そんなものなのか?」

 防衛都市カストラに来るのは初めてなので、ジャスに任せる。


「風呂付きの部屋なら、『金熊亭』か『青葉亭』がまだ安い方だ。どちらか、空いている方にしよう」

 そう言いながらも、ギルドの可愛い受付嬢にルシウスへの伝言を頼んでいる。

 女の子が好きだから、可愛い受付のお姉ちゃんに伝言を頼んでいるんじゃないと思えたら、ジャスへの株も上がるんだけどさ。

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