第7話 後片付けも大変だ

 ヴリシャーカピの集団に襲われたけど、なんとか討伐できた。

 全員が、座り込んでいる。ルシウスは水筒から水をグビグビ飲む。

「アレク、また忘れたのか?」

 ジャスに馬鹿にされたけど、荷物は荷馬車の中だったからさぁ。


 ルシウスの空になった水筒を渡して貰い、それに浄水を入れて飲んでいると、クレアにベィビィにもと頼まれた。


「でも、桶は無いけど?」と戸惑っていると、鞍から皮袋を下ろして渡された。


「浄水!」といっぱいにしたら、ベィビィは喜んで飲んでいる。


「アレク! 皆が来る前に、落とし穴を塞いだ方が良い。中のヴリシャーカピを取り出すぞ!」


 これ、アイテムボックスを使えば、簡単なんだけど、まだルシウスやジャスにも内緒にしたままなんだよね。

 打ち明けたいと思うけど、まだ心の底からは信用していないのかも? 特にジャス! 良い奴だと思う時もあるんだけど、女好きな駄目男だからさ。


 全員でヴリシャーカピを十頭、落とし穴から引き上げた。重いから、疲れたよ!


「埋めろ!」で落とし穴を埋めた。後は、ヴリシャーカピの解体だけど、皆、座り込んじゃった。


「解体は、カインズ商会の連中とダークとプルーに任せようぜ!」

 ジャスがぶつぶつ言っている。流石のジャスも戦闘の後、呼びに行ったアルフェは除外する。


 そう言ったものの、のろのろと立ち上がって解体を始める。

『草原の風』のメンバー、ルシアはまだ休憩させているけど、解体が上手だ。ナイフ使いが凄いんだ。


 ジャスとルシウスは、解体が下手だ。クレアに怒鳴られている。


「ジャス! 相変わらず下手クソだな!」


 クレアは上手なのに、習わなかったのかな?

 

 私は、ナタで解体する。


「ジャス? どのヴリシャーカピの肉が美味いんだ? 若いの? それとも魔力が多いボス?」


 ジャスは、少し考えて答えてくれた。


「ボスは、毛皮も高く売れるから、一番解体が上手いアレクがしてくれ! 肉も美味いと思う」


 ルシウスは、少し違う意見だ。


「若い方が肉は柔らかいぞ! ボス以外の肉なら、若いカピの方が良いんじゃないか?」


 クレアが豪快に笑う。

「ボス以外の解体は、商隊が戻って来てからにしようぜ! 腹が減ったから、肉を焼いて食べよう!」


 そりゃ、言われたら全員がお腹を押さえたよ。ぐーぐー鳴っているからね。


 ただ、目の前の死体を見て、即、食べたくなるか? ちょっと微妙なんだよね。


 それに、血の匂い! これって拙くない?


「他の魔物が寄って来ないかな?」

 ポソッと呟くと、全員に笑われた。


「一頭や二頭の魔物の血なら、他の魔物もやってくるだろうが、ここまでの討伐をする相手に近寄ったりしないさ」


 ルシウスがそう言うなら、そうなんだろう。こんなに信頼しているのに、アイテムボックスについて言えないのは何故なのだろう。


 愛し子だと、ほぼバレている。一応は、否定しているけど、交易都市エンボリウムでは色々とやらかしたからね。

 

 ただ、私は本当の意味で愛し子なのか? そこのところは微妙なんだよ。サーシャは正真正銘の愛し子で、聖女になる子だったけど、私はそんなに清らかな性格ではない。


 オーク討伐の時は、女神様クレマンティアの神命が下ったけど、本来は子どもを産んだら、他は自由にして良いって約束だったからね。


 つまり、私の子孫に聖女か聖人か聖王が出るかもしれないってだけ。サーシャの愛し子の能力と、交渉して得た加護があるけど、私って愛し子じゃないよね?

 女神様クレマンティアと関わりがあるだけだと思いたい。

 だって、あのクズ聖王家から逃げ出したんだもん。自由に生きたいよ!


 そんな事を考えていたら、商隊が戻って来た。

「皆、ご苦労だった!」

 あっ、全員を浄化ピュリフィケーションしないで良かったのかも? 

 返り血を思いっきり浴びた状態なのを見て、グレアムが感激して「褒賞を出そう!」と言っている。ラッキー!


 それに、ヴリシャーカピの毛皮や魔石や肉も買い取ってくれるそうだ。これは、普通の事みたいだね。


「オルフェ、ジーナ、治療クーラーティオ! 浄化ピュリフィケーション!」を掛けておこう!


 商隊が合流したので、解体の指揮はハモンドが取る。

「ボスは解体済みなのか? 手早いな! 毛皮と魔石は、全て欲しいが、肉は魔法を使える個体のを優先してくれ。若いのは食べよう!」


 商隊も逃げたり、戻ったりで疲れている。でも、全員で解体とキャンプ設営を頑張る。


「この血の匂い、やはり嫌だな! 浄化ピュリフィケーション!」


 かなりマシになった気がする。鼻が血の匂いに慣れたからかも? それと、若いカピの肉をジュージュー焼いている匂いがしてきたから、血の匂いなんか気にしていられないからかもね!


 猿型の肉、少し抵抗があるかな? と思ったけど、人型魔物のオーク肉も知らない間に食べていた。

 それに、食べた後でジャスに「オーク肉だぞ!」と言われたけど、確かに高級豚肉みたいに美味しかったんだよね。


 ヴリシャーカピの焼肉、腹ペコだったから、むしゃむしゃ食べちゃった。


「若いカピの方が柔らかいな!」

 ジャス! 口に肉が入ったまま喋らないでよ。

「捨てるのは勿体無いから、いっぱい食べようぜ!」

 ルシウスも山盛りの肉を食べている。私は、もう限界だよ!


 それに、眠い! ホッとして、食べたら、眠くて堪らない。


「おい、アレク! 寝るなら、テントで寝ろ! 朝の当番にしてやるから」

 ルシウス、優しいのか、厳しいのか? 兎に角、寝よう! 

 まだ、解体は残っているみたいだけど、もう限界だよ。

 

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