第8話 アルシア町で一息つこう
ヴリシャーカピの集団ほどでは無いけど、次の日も魔物の襲撃が多かった。
「オークの集団も湧いていたし、何処か未発見のダンジョンがあるのだろう」
ルシウスとジャスは当たり前って顔をして、討伐したビッグボアを荷馬車に乗せる。
「えっ、ダンジョンって増えるのか?」
少なくとも北の大陸にはダンジョンは無かった。今は
「ああ、新しいダンジョンが出来たのか、それとも未発見なだけかは、本当の事はわからないがな。ダンジョンは増えるって皆は感じている」
「だから、
ルシウスの説明は、素直になるほど! と聞けるけど、ジャスに言われると、何故か腹が立つ。
「でも、北の大陸ではダンジョンは湧かないぞ」
二人に笑われた。
「そりゃ、聖皇国や聖王国があり、
「そう、そう! アレクが柔なのは、北の大陸育ちだからさ!」
でも、その
「もしかして、
北の大陸の騎士や兵士の実力がどのくらいかは知らない。田舎の冒険者は、こちらの初心者レベルだ。
魔法を使える者は多いけど、魔物自体が少ないから、戦闘回数があまりにも少ない。
「もし、北の大陸でダンジョンが湧いたら……」
考えただけで、ゾッとする。あの
ケチで傲慢な修道院長が魔物に食われようと、へとも思わないが、子ども達は? 誰か守ってくれるのだろうか? サーシャの記憶が私を苛む。
「まだダンジョンが湧いても無いのに、心配しても無駄だ。それに、アレクは北の大陸から逃げて来たのだろう?」
うっ、そうなんだ! 今、北の大陸に帰ったら、
「何で逃げて来たのだ?」
ジャス、そんなの聞くなよ!
「冒険者って過去は問わないのがマナーじゃないのか?」
嫌味を言っても堪える相手では無い。
「アレクは、どう見ても愛し子だし、あちらでも優遇されていたのでは無いのか?」
ルシウスにも聞かれた。
「俺は、愛し子ではない! それに親がいなかったから、幼いうちから農作業や家事、それに薬草採取などでこき使われていた」
愛し子ではない! は、二人に笑われた。ただ、サーシャが苦労して育ったのは、少しだけ理解してくれたかも。
「こちらに逃げて来たのは確かだ。隣の好色な領主に売り飛ばされそうになったから」
ガハハハ! とジャスに爆笑された。殴りたい!
「まぁ、アレクも色々あったんだな。それにしても、昨日、あれだけ魔法を使っても髪の毛は伸びなかったな!」
「そう! 大きな魔法は使っていないからね。ただ、これから魔法の訓練をして、大きな魔法を使えるようにしないとな!」
だってボス戦の時、魔法はあまり効かなかったからさぁ。ショック!
「元々、アレクは神聖魔法使いだから、補助系や回復系の上達を目指した方が良いのではないか? 昨日も、回復魔法や強化魔法で助かった」
ううん、どうだろう? ずっとパーティを組んでいるなら、その通りなんだけど。
「ルシウスが金にガメツイのは、金級になったらクランを作りたいからさ! 家を借りて、本拠地を作り、ダンジョンを制覇するのが夢なんだ」
へぇ、それは凄い夢だね! 頑張って欲しい。
「ジャスもクラン幹部になって欲しいから、少しは節約して金を貯めておけよ! アレクにもクラン幹部になって欲しいと考えている」
えっ、知らなかったよ! パーティは組んだけど、そんな先の事までは考えていなかった。
「まぁ、その前に俺とジャスは金級にならないといけないし、アレクも銀級にならないとな!」
金級がどれほど強いのか、想像もできないよ。
そんな事を話しながらも、ルシウスとジャスは警戒している。
『草原の風』のメンバーが斥候してくれているけど、何だか魔物が多いんじゃない?
まぁ、私は
昼休憩の時にグレアムさんが「大街道から離れるが、アルシア町に向かう」と発表した。
全員がホッと息を吐く。昨日のヴリシャーカピの集団に襲われてから、ずっと魔物と出くわすので、疲れていたのだ。
「なぁ、
全く知らないから聞いてみる。
「ああ、大街道を真っ直ぐ行った方が
ふうん、宿屋とかに泊まるのだろうか? なんて考えていたら、ジャスに笑われた。
「言っておくが、アルシア町でも俺達は護衛任務中だぞ! 町の中で魔物に襲われる可能性は低いが、荷物を盗もうとする馬鹿がいるからな」
つまり、グレアムやハモンド、御者達は宿屋に泊まるけど、護衛は荷馬車を見張っていないといけないんだね。
「でも、皆、ホッとしてたじゃん!」
夜中の見張り当番も一緒なのに、変だろ? カインズ商会の人たちは宿屋に泊まれるから、ホッとするのもわかるけどさ。
「アレクは、本当に何も知らないな! 護衛する対象者が安全な場所にいるなら、荷物を見張るだけで良いじゃねーか」
それに、アルシア町にいる人達は、そこまでの悪人はいないそうだ。まぁ、見張っていないと、荷馬車から少しくすねる奴がいるかもしれないそうだけど。
皆もヴリシャーカピの襲撃で肉体的にも精神的にも疲れていたので、休憩したいと思っていたから、グレアムの決定を喜んだのだ。
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