第27話 迷宮ダンジョン一階 1

 昨日、あれこれ準備したから、迷宮ダンジョンが楽しみなんだ! それと、私を中に入れてくれなかった店主にギャフンと言わせたい。


 そんな事を考えて、浮き浮きしながら馬車に乗っていたんだけど、着いた途端、唖然としちゃった。


「迷宮というより、山だよな!」


「遺跡だから、山っぽいけど……迷宮だろう!」


 ジャスは、気にしていないみたいだけど、ちょっと考えていた迷宮のイメージとは違って困惑している。


「よくよく見たら、宮殿っぽいかも? 塔とかも攻略するのか?」


「この迷宮ダンジョンは、まだ誰も制覇していないんだ。あっ、でもダンジョン石は壊しちゃ駄目なんだけどさ。ここでしかドロップしない物があるから」


 私とジャスが話している間に、ルシウスはダンジョン前の商人達の注文表をチェックしている。


「何が欲しいのか書いてあるんだ!」


 私も慌てて、チェックする。ほとんどのドロップ品を買い取るけど、特に欲しいドロップ品の見本を棚に置いてある。


 コソッと『鑑定!』を掛けると、やはり錬金術の材料だ。魔導灯とか需要があるのか、材料の買取り価格も高い。


 でも、魔導灯よりは凄く安いんだよね。昨日、本屋の近くに魔導具屋があったけど、中に入れなかったんだ。

 ゴツそうなドアマンに拒否られた。紹介状が無いと駄目だとか。

 でも、チラリと中を見て、値段をチェックした。一番多い魔導灯は、扉の近くに展示してあったからね。百金貨ゴルディ! 


 ふふふ、絶対に魔導灯を作って、百金貨ゴルディ以下で売ってやろう! 割と根に持つタイプなんだ。


「ルシウス、さっさと潜ろうぜ!」


 ここでも中に入る時にギルド証の提示を求められた。

 食物ダンジョンと暗闇ダンジョンはスルーだったのにね?


「盗賊が出るのか?」とルシウスに尋ねると「ドロップ品が高いからなぁ」と肩を竦める。


「そう言えば、一階からセーフゾーンがあったような? そうだ、ここは中級者用だけど、少し難しいからだから、初心者は駄目だ」


 ジャスも一階から潜るのは久しぶりだと笑っている。


「二人は十階以上に行っているのに、私に付き合わせて申し訳ない。でも、期待して良いからね!」


 うん? って疑問系の二人に、ギルドで買った迷宮ダンジョンの一階の地図を見せる。


「何だぁ、そんな物を買わなくても、アレクなら魔法で探索できるんじゃないのか?」


 ルシウスが金の無駄だと笑う。


「違うのさ! この地図には、他の冒険者が調べた所しか書いていない。つまり脳内地図マッパエムンディで調べて、記入していない場所は期待できるって事!」


 二人ともピン! ときて爆笑する。


脳内地図マッパエムンディ!」と掛けたら、何ヶ所か、未記入の場所が出た。


 黒鉛を布で巻いた鉛筆擬で、未発見の場所を地図に書き込む。


「ふぅん、かなり入り口から距離がある場所だけど、討伐しながら行こう!」


 それと、他の冒険者達にも注意しながら進まなきゃね。


「あっ、シャンデリアは、何回か討伐したいな!」

 巨大ねずみを討伐しながら、ルシウスに提案する。


「えええ! あれは落ちてくるから嫌いなんだが……わかった! アレクがいうなら、訳があるんだろう」


 中は、宮殿っぽい広間になっていて、巨大ねずみ、それを追いかける巨大猫が走り回っている。


「猫は好きだったから……討伐し難いな」

 だけど、猫も魔物だし、可愛くない。良かった! これでキュートだと討伐なんて無理だったよ。


「えっ、金貨ゴルディをドロップするの?」


 討伐したら、ドロップ品に変わるのには慣れたけど、お金? ボス猫だったのかな?


「ははは、だからこの迷宮ダンジョンは人気なのさ」


 まぁ、金貨ゴルディは滅多にドロップしない。ねずみの肉なんて嫌だと思っていたけど、歯車やゼンマイやネジがドロップするんだ。


「細かい部品は、袋に入れてくれ!」

 銅貨ペニー銀貨クラン金貨ゴルディは、ルシウスの袋に入れさせている。荷物持ちも誘惑が多いダンジョンだ。


 私の今日の目当ては、シャンデリア! それと、蝋燭かな? 入口で拒否られたのに腹が立ったから、魔導灯の材料をドロップする魔物を神様ガウデアムスの知識で予習したんだ。

 いつもしろ! って? 面倒なんだよ。


 大軍のねずみ、ボスは冠を被っている。ちょっと笑えるけど、数が多いと面倒だ。


「バリア!」を横一列に掛けて、討伐する。ボスはぴょんと飛んで逃げたけど、ルシウスが首を刎ねた。


「おお、宝石だ!」


 ボスのドロップ品に喜んだ瞬間、天井からシャンデリアが攻撃してくる。


 菱形の水晶がビュンビュン飛んで来るので、バリアを掛ける。


 吊り下げている金鎖が弱点なのだけど、なかなか命中しない。


「アレク! 矢の練習をサボってあるんじゃないのか!」

 ムッカァ! ジャスに言われると、ルシウスに言われるより腹が立つ。


 目に魔力を集中させ、金鎖をターゲットして矢を射る。


 バッシャン! とシャンデリアが床に落ちて消えた。


「ああ、あった!」

 魔導灯の材料がドロップした!

 

 小躍りしている私を、二人が怪訝な目で見ている。


「これで魔導灯を作るのさ!」と説明しても疑っている。


自由都市群パエストゥムの錬金術師が作るんじゃないのか?」


 二人は、一度、自由都市群パエストゥムまでの商隊の護衛をしたみたい。その時、この迷宮ダンジョンでドロップした素材を運び、帰りは魔導具を運んだそうだ。


「へぇ、でも魔導具なんて見た事ないよ」


 二人に爆笑されたよ!


「高いからなぁ。金級になれば魔導灯とか使うと聞いたぞ」

 それと、大商人は魔導具を使っているそうだ。


「まぁ、アレクの好きにやらせてみようぜ!」

 

 それに、隠し部屋を探索したら、また広間を通るからね。シャンデリアに期待しよう。


 大広間から、廊下を通っていると、相変わらずの巨大ねずみと巨大猫に襲われる。

 それと、蜘蛛! ギャアア!


「バリア!」で一撃に出来たけど、見た目が嫌!


「おっ、絹糸がドロップしたぞ。アレクは引きが良いな」


 ルシウスとジャスは昆虫系も平気みたい。


 廊下では、蝋燭も攻撃してくる。ファイヤーボールを飛ばしてくるのは、ちょっと厄介だけど、シャンデリアよりは討伐しやすい。


 ルシウスとジャスも、剣でぶった斬っていく。私はナタで切る。


「これも魔導灯の材料だ!」

 シャンデリア程は落ちる率が悪いけど、何個かはドロップした。他は、魔石と何故か蝋燭!


 そして、元は豪華だった謁見の間。ここにもシャンデリアがある。


「なぁ、攻撃してくる前に討伐したらドロップしないのか?」


「やってみたら良い。普通は、シャンデリアは厄介だから、攻撃して来ないなら、先を急ぐのだけどな」

 

 巨大ねずみ、巨大猫、蜘蛛は、二人に任せて、謁見の間にあるシャンデリアの金鎖に矢を射る。


 落ちて消えたけど、ドロップ品がしょぼい。蝋燭並だよ。


 でも、一つ討伐している間に、もう二つのシャンデリアが攻撃体勢になった。ラッキー!


 動物系の魔物は、二人に任せて、集中してシャンデリアに矢を射る。


「やったね! アイテムゲットだ!」


 やはり、攻撃体勢にさせてからじゃ無いと、ドロップ品がしょぼい。


 謁見の間、壁の蝋燭も攻撃してくるし、なんと王座まで攻撃してくる。


「王座は逃すなよ!」

 ルシウスが叫んでいるけど、逃げるの? 

 ビシ、ビシ! 金属片を投げてくるから、バリアで防御していたけど、朽ちたカーテンの後ろに逃げようとしている。


フルメン!」で一撃したら、細い王冠がドロップした。


「すげぇ! こんなお宝がドロップするなんて!」


 ルシウスが小躍りしている。ジャスは「ネックレスとかなら良いのに」と色ボケしているけどね。


 カーテンの後ろの小部屋は、ギルドで買った地図にも書いてある。一応、チェックはするよ。


「ギャアア!」

 巨大な蜘蛛が巣を作っていた。それに子蜘蛛がうじゃうじゃ!


 反射的に「フルメン!」で全滅させた。


 絹の布、それに絹糸、魔石がドロップしたけど、ルシウスに注意された。


「アレク、もっと冷静にならないと駄目だぞ」


 はぁぁ、わかってはいるけど、ホラーと昆虫は苦手!

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