第14話 中級者用ダンジョンに挑戦 2
三階に下り、
「やっと冒険者の数が少なくなったな」
私以外には、一組の冒険者がいるだけだ。ホッとする。だって、冒険者になってから馬鹿に絡まれてばかりだから。
そう、だから一人で行動するのが苦痛になっているんだ。城から逃げ出して、ルシウスやジャスに会うまでは、一人で気儘に生きていこうと考えていたんだけどさ。見た目が良すぎて困る。
「あっ、あそこに下級薬草が生えているぞ!」
ジルとサミーに採らせて、私は警戒する。
雨季になったら困るだろうけど、日当をこれ以上値上げする気はないから、下級薬草を買い上げてやりたい。
「ちょっと動くな!」
二人の前に立って、こちらに突進してくるビッグボア三頭に矢を射る。チェッ、一頭は急所を外した!
「バリア!」で倒す。ジルとサミーがドロップ品と矢を拾ってくれるから、先を急ぐ。
だが、三階からは魔物が複数で出てくるようになった。だから、冒険者の数が少ないのかも。
「おっ、魔物の点が重なっている! キラービーだ」
巣ごと退治したら、ロイヤルゼリーがドロップするかもね! それに、ハチミツはもう少しアイテムボックスに保存したい。甘味は、重要なんだ。
「ハチミツ!」とジルとサミーが嬉しそうだけど、毎回はあげないよ。でも、ハチミツって、金熊亭の女将さんにあげたら、とても喜ばれたんだ。ちょっとしたプレゼントに良いんだよね。
いつか、
「うっ、デカい!」
初心者用のダンジョンにあったキラービーの巣の倍はある。
「バリア!」と周りに飛んでいるキラービーごと囲んで、空気を抜いていく。
ボトボトとキラービーが地面に落ちては、ドロップ品に変わっていく。
「巣はなかなか消えないなぁ」
なんて、呑気に見ていたら……「ぎょえええ!」女王蜂、めちゃめちゃデカい。
「バリア! バリア!」と重ねがけして、必死で空気を抜く。
バリバリとバリアを巨大な女王蜂が噛み砕いていくけど、重ねがけしたバリアの中の空気が無くなり、消えた。
「怖かった……」昆虫系の魔物は、嫌だ! ホラーも! やはり暗闇ダンジョンは潜りたくないよ。
私が精神的にやられて、ぼんやりしている間に、ジルとサミーがドロップ品を拾う。
「休憩しよう!」
体力はまだあるけど、あの女王蜂の残像で精神が疲労している。
「ほら、パンを二人で分けろ!」
一人、一個ずつでも良いけど、一個は非常食に置いておきたい。
パンを食べたら、四階に向かう前に荷物の整理だ。
「もう、ほぼいっぱいだよ。大きな巣だったから」
アイテムボックスの中から大きな袋を取り出して、重たいハチミツやロイヤルゼリーの瓶を入れる。
「お兄ちゃん、進むの早いから、荷物持ちを後一人は雇った方が良いよ」
今は、三階、四階と五階はもっと複数の魔物が多くなるか? ロイヤルゼリーやハチミツの瓶の少しをアイテムボックスに入れる。重いからね!
「友だちを連れてきても良いかな?」
ジルの営業力、凄いよ! でもなぁ……子守は嫌だ!
「いざとなったら、私も持つから大丈夫だ」
明日からは、背負い籠を持って潜ろうかな? あっ、一人で潜れば、アイテムボックスを使い放題なのでは? でも、凄く怪しまれそう。アイテムボックス持ちだと、バレたら大変だ!
黙々と四階を目指すけど、あちらから魔物がどんどん向かってくる。冒険者が少ないから、遭遇率が高い。
「下級薬草は、この袋に入れてくれ。上に出たら買い取る」
荷物整理、第二弾だ。これは、軽いけど、嵩張るし、潰されたくない。袋に入れて、アイテムボックスいきだ。
◇
四階は、木がより増えて、草原というより林になっている。
「他の冒険者はいない! それなら、魔物を避けながら五階へ急ごう」
転移したら、簡単なのかな? 命の危機なら、転移するけど……。
林の中、コカトリスがいた。これまでは
「動くなよ!」二人に命じて、先ずは矢を射る。一羽は仕留めたが、もう一羽はこちらに向かってくる。
「バリア!」で首を落とす。
「これ、何?」
ジルが気味が悪いと、ドロップした毒袋を見ている。
「ああ、これは石化予防の薬になるのさ」
小さな袋に入れて、私の袋へ。
「石化?」ジルとサミーが震えている。
「そう、中級者ダンジョンの魔物は強い。だから、子どもの荷物持ちを連れて潜りたくなかったんだ」
石化も
◇
ぜぃぜぃ、五階に下りるまで、ビッグボアの集団に遇って疲れた。
「あと、一階だが、休憩しよう」
五階は、冒険者が三組いる。五階の転移陣で潜って、六階には行かず、ここで狩りをしているのかもね。
オレンジを取り出して、三等分してやる。
「オレンジだ!」とジルとサミーは喜んでいるけど……白い点の動きのチェックに私は忙しい。
一組は、五階の転移陣の近くで狩りをしているみたい。これは、理解できる。討伐して、疲れたら上に戻るのだろう。
もう一組は、かなり半ばまで動いている。こんなに動くなら、六階に行った方が良いのに? でも、六階は魔物が強くなるのかな?
問題は、もう一組だ。四階からの階段、つまり私たちがいる方向に動いている。
「意味不明だよな。五階をクリア出来たなら、四階には用が無いだろう? ギルドで四階に出る魔物のドロップ品の依頼を受けたのか?」
ぶつぶつ独り言をジルが聞きつける。
「それ、ヤバいんじゃないの! 四階から下りて、疲れている冒険者を狩るつもりなんだ」
やれやれ、どこにもクズがいるんだな。中級者用ダンジョンに潜っているのなら、銅級以上な筈なのに。
なるべく避けて行きたいけど、魔物も集団で出るから難しい。それに、あちらの白い点がバラけている。斥候を出したのか?
「ジル、サミー、『動くな!』と言ったら、絶対にそこから動くな! 周りをバリアで囲うから攻撃されても大丈夫だから」
どうやら魔物討伐より、冒険者の荷物を狙う強盗みたいだ。
「ふうん、魔物を討伐できる腕はあるのに、何故だろう?」
こちらに向かってくる間に、魔物を討伐している。
「人数が多いと、分け前が少なくなるからじゃないの?」
ジルに言われて「そうか!」と気づいた。
これまで、初心者用のダンジョン、中級者用のダンジョンに潜っているチーム、三人とかせいぜい五人だった。それに、荷物持ちが二人か三人。
でも、こいつらは斥候を入れたら八人、それと荷物持ち二人。
「なぁ、こんな奴らに雇われている荷物持ちも同罪なのか?」
ジルとサミーは首を傾げる。
「初級の冒険者かも?」
それなら同罪だし、子どもなら……知っていたら有罪だけど、今回初めて雇われたのなら無罪なのか?
「向こうは、こちらのドロップ品目当てだ。こうなったら、有利に戦える場所で待ち伏せしよう!」
林の中に隠れて、
「近いな! ジル、サミー、その木の後ろに隠れていろ! バリア!」
これで子ども達は大丈夫。さて、どうしてやろう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます