第13話 レッドウルフの馬鹿ども

 二度断ったら、殴り掛かろうとした。

「言っておくが、そちらから手を出したんだぞ!」

 サーシャの見た目、綺麗な細身だから、ガハハハと笑われた。くっそう! ジャスやルシウスみたいな大男だったら、生きやすかったのに!


「よく見たら、女より綺麗だな。チームに入ったら可愛がってやるぜ!」


「いや、男娼館に売っても高そうだ!」


 ゲー! 相手は赤毛のボス、それの弟、そして手下が三人! つまり五人相手だ。容赦なくやらないと、こっちがやられる。


「バリア!」

 先ずは、バリアで前の二人と後ろの三人を分断する。


「何をするんだ!」とか騒いでいるから、後ろのは空気を抜いちゃおう。煩いからね。


 前の二人! コイツらは許さないよ。特に股間を膨らませている弟! 去勢だな!


「おい、出せよ!」

 まだ反省していない。昨日はギルドに居なかったのかな? どっちでも良いけど、また絡まれたら困まるから、徹底的にやるよ。


「手前ぇ、覚えておけよ!」なんて吠えているから、拳を強化してから、バリアを外す。

 腰を下ろして、正拳突き!

「グァハ!」と倒れながらも、股間が何故か膨れている。キモい!

 思わずキックを入れちゃった。


「兄貴に何をする!」

 馬鹿な弟も同じ刑だ! 正拳突きしてから、股間をキックしておく。

 二人とも泡を吹いているから、ちょっとの間は大丈夫!


「おおっと、いけない! 死んじゃうかも?」

 手下三人の空気を抜いていたんだ。私は、どうも小心者だから、まだ殺す覚悟がない。えっ、あの変態神官は別だよ!


 バリアを解いたら、生きていた。それは良いけど、怒ってこちらに向かってくる。

 馬鹿の相手は嫌だなぁ! でも、これからもこんな事が多い予感がするから、練習しておこう。

 

 一人目を正拳突きして、二人目を回し蹴り、三人目を始末しようとしたけど、私もまだまだだね。

 二人を倒している間に、剣を抜いて構えている。


「お前、剣を抜いたな! 命はいらないと言うことか!」

 少し脅して、バリアで囲みがてら、剣を持っている腕を切断する。卑怯? こっちだって命が掛かっている。冒険者だから、あの第二王子ボンクラみたいに、ぼんやりと立ってはいないからね。


「痛てぇ! 痛てぇ! この卑怯者!」なんて騒いでいるから、空気を抜いちゃおう! 剣を向けた相手に容赦はしないよ。あらら、空気を抜いたら出血が酷くなった。


「治療!」を軽く掛けて、切断面の血止めをしておく。


 おおっと、正拳突きした一人目が起きあがろうとしている。コイツも去勢の刑だな。

 何故、殴られているのにモッコリなんだ!

 二人目もついでに去勢しておこうかな? でも、ブルブル震えて許しを乞うから、まぁ、やめておく。


 剣を向けた三人目も殺さずに、バリアを解いた。やはり、甘いのかも?

 

「降伏したなら、そこの二人を縄で縛れ!」

 手下二人を縛らせて、そいつも縛ってから、ボスと弟を縛るのだけど、失禁してて、気持ち悪い。


浄化ピュリフィケーション!」を掛けてから、脚を縛る。ばっちいからね。


「どうやって連れて帰ろう? いや、放置で良いのか?」

 なんて悩んでいたら、戦闘や血の匂いで魔物が集まってきた。


「ラッキー!」と喜んでいたら、回し蹴りした二人目が泣いて懇願する。

「魔物の餌にしないでくれ!」

「あっ、その手もあったんだ!」

 ギルドに連れて帰っても面倒なんだよね。それに、男五人を連れて帰るの大変そうだよ。


 兎に角、魔物を討伐して、薬草採取を邪魔された分を稼ごう。

「おお、ビッグボアの団体だ!」

 昨日、奢ってもらったビッグボアのステーキ! 美味しかったな!


「バリア! バリア! バリア!」

 首をバリアで切り取っていく。さて、どうやって持って帰ろうかな? こればっかりだよ。


 見られたら拙いから、二番目も気絶してもらおう! 首に手刀でチョップしておく。


 三頭のビッグボア、どうやっても背負い籠には入らない。でも、勿体無いよね。


「よし、二頭はアイテムボックス! 一頭をどうにか、背負い籠に入れよう」

 解体なんかした事がない。でも、アイテムボックスを活用したら、できそう。


 一頭のビッグボアを思い浮かべて「皮だけ出ろ!」「魔石だけ出ろ!」「お肉だけ出ろ!」「牙だけ出ろ!」と個別に出してみる。


「残りの部位、出ろ!」骨とか内臓とか、これは埋めておく。

 

 背負い籠に山盛りの肉と皮! それに『ファイヤーウルフ』だったか、馬鹿犬だったかの武器も取り上げて、籠に差しておく。

 これも人目がある場所までは、アイテムボックスだね。


「ビッグボアは?」二番目、結構しぶとい! 「スリープ」を掛けて眠らせる。


 五人の脚を縛ったロープを持って引きずってみる。

「ふぅ、できないことは無いけど、森の中は面倒だね。それにスリープ、頭をぶつけたら起きそう」

 もっと長い縄があれば、縦に並べられるのかも? 城の台所の外に置いてあった縄だから、キャベツや芋などの木箱を括っていたのか、そんなに長くない。

 

「馬屋で失敬すれば良かった」と愚痴るけど、馬屋は城から一旦出ないといけなかったからね。小心者の私では無理だった。


「置いていけば、魔物が始末してくれるかも?」

 誘惑に駆られるけど、命乞いした二番目、まだ若そう。

 それに、試したいことがあるんだよね。


「転移!」縄を短く持って転移する。

 ふぅ、成功したけど三メートル程度だ。ここまで、森の奥へとかなり歩いている。一キロ? いや二キロ以上あるね。


 でも、練習しなきゃ駄目だよね。三メートル、三メートル、あれ? 四メートル? 少しずつ転移を繰り返して、十メートル飛べるようになった。


「これは、毎日、練習だね!」

 少し疲れたから、木の切り株に座って、アイテムボックスからルピナス号で使っていた水袋を出してグビグビ飲む。それと、城のパン、オレンジも食べよう!


 実はこの五人から財布も貰っている。それを返せと言われるかは分からない。

 やはり、このまま置いていきたい! でも、前世の私の記憶が邪魔をするんだよね。


「よし、ここからは、二番目を起こして、協力してもらおう!」

 横面を張って、二番目を起こす。アイテムボックスから、山盛りの背負い籠も出しておいた。


「ハッ、あれは夢じゃなかったのか?」

 人が頑張って転移して運んでいたのに、夢を見ていたんだね。


「お前、三番目を引っ張って行け! 変な真似をしたら、わかっているだろうな!」

 ブルブル震えて、三番目の脚を括っている縄を引っ張る。


 私は、ボス、弟、一番目、三人だ。少し長い短いをつけて、ほぼ一列にして、引っ張る。

 頭が地面を擦っているけど、私をやろうとしたんだから、生きているだけで有難いと思ってもらおう。


 

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